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格の違い

自分の目の前に赤い目が現れた途端、それはすぐさま消えた。

本当に消えたわけではなく、俺がいる場所から下の方に移動していっただけだった。

その時に、背中が見えた。

何も刺さっていない、黒い背中が。

そして、いろんなことを考えた。

けれど、結論はすぐに出てきた。

暁人は振り落とされたのだ、と。


「うぉおおおおおおおおおおっ!!!!」


気が付けば俺は、雄叫びを上げていた。

左手に『フォティアソード』を握りしめて、黒龍に向かった。

黒龍はその俺の行動に気が付いたのか、飛行速度を上げた。

俺は追い付こうと必死になった。

負けずと、自身の速度を上げた。

並走は出来なくてもいい。

この剣が少しでも届く範囲に行けたらいい。

そう思った。

けれど、追い付くことすら出来なかった。

剣が届かないのならば、魔法で攻撃すれば良いと考え、炎の剣を消し、左手に紫色の魔法陣を出現させ、『シャドージャベリン』で攻撃しようとした。

だが、黒龍が叫び声を上げた途端、紫色の魔法陣は粉々に割れた。

どうやら奴の叫び声には、魔法陣を消滅させる効果があるらしい。

……………格が違うように感じた。

黒龍は首を後ろに向け、俺がいるところを見ると、再び速度を上げて離れていった。俺が追いつけないような速度でだ。

まるで、『お前には私に勝てない』と言われたような気がした。

俺は立ち止まってしまった………空中で静止したと言った方がいいだろう。

さっきの戦闘で気付かされてしまった。

いや、戦闘とも言えないもので、気がついた。

自分はまだまだ未熟で、弱いのだと。

元いた世界の、過去の友の敵討ちすら出来ないほど。

指一本触れることすら出来ないほど。

何もできない。

今の俺に出来ることは、黒龍が行ってしまった方向を、ただ睨みつけるだけだった。


「………くそッ…」


ようやく自分が口にした言葉は、そんな単語だった。

************************

木島くんが、あの黒龍に手も足も出なかったのを、私はただ眺めていた。

おそらく、彼はこの舟に降りてくる。

でも、私が出来ることは多分、何も無いと思う。

慰めても、それが逆に良く無い方向に転がる時もある。

私は、何も声を掛けられない。

掛けれるような事は何一つしてない。

ただ自分と、あの子達を守る事だけで精一杯だった。

ほんとに………自分が情けなく思ってしまう。

彼の力になりたい。

でも、私は何をしたら良いのだろう………

何のために彼の力になりたいのかすら、わからなかった。

************************

あれが黒龍か……と、ペルディーダは思った。

彼は今、玉座の間に置かれている玉座に座り、右手に投影魔法『ビジョン』を浮かび上がらせ、それを眺めていた。

彼からすればドラゴンは身近な物の一つでもあった。

魔王になる前に、二、三匹ほど殺している。

だが、黒龍を見るのは初めてだった。

この世界の歴史書に、実在しないものと言われて来た黒龍。

圧倒的な力だった。

彼が闘ったとしても、辛勝になってしまうだろう。

そして彼は、少しだけ不可解に思っていた。

(気のせいなら良いが………あの黒龍、何者かに命令されているような気がした…)

************************

暗闇の洞窟の中で、男は黒龍とその周りの状況を見ていた。

彼にはペルディーダのように『ビジョン』がある訳ではない。

だだあの黒龍と、左目を共有しているだけだった。


「いきなり言われた時は驚いたが、案外上手く行くものなんだな…」


男は感心そうに言った。

そして石がむき出しになっている壁に手を付けると、ゆっくりと立ち上がった。

男の首元には銀色に光るネックレスが掛けられていた。

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