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謎の飛来者

「なぁ、これかなりやべーんじゃねぇか?」


寝癖のようにも、ただの天然パーマのようにも見えるグシャグシャとしたカーキ色の髪の男が、ドラマなどに出てくる社長室にありそうな小さな机と小さなソファが置かれた部屋の中で、目の前の水晶を眺めながら口を開いた。


「うーん……やばいわね」


クリムゾンレッドの長い髪の女が、男の質問に答えるように言った。だが、彼女の顔は水晶の方を向いている。

水晶の中では、マグナが『フォティアソード』を振り回し、彼らが送り込んだ部隊の中で暴れ、オクルスが光の弓矢でガーゴイル達を葬っていた。

一言で表すなら、『明らかに勝ち目が無い』ということぐらいだろう。

この二人がマグナ達が居る場所へ行くことが出来れば、戦況は激変するだろう。

だが、彼らが居る場所はマグナ達がいる場所からとても離れている。

今から急いだとしても、着いた頃には決着が付いているだろう。

さらに先程、このカーキ髪の男は失敗すれば責任を取ると言っていた。

現状、この男は非常に不味いことになっている。今もこの男はどのように言い訳すれば済むのかを考えている。


「……どうしたら良いんだ?」


「どうするも何も、貴方が決めれば?私関係ないし」


それを聞いた途端、カーキ髪の堪忍袋の尾が切れた。


「関係無いだぁ?良いって言ったのはテメェだろうが!責任取れよ責任!」


「ハァ、何言ってんの⁉︎私には関係無いんですが?そもそも動かしたのは貴方なんだから私には関係無いんですが⁉︎早く責任取りなさいよ!」


「…………さっきから責任などと言っているが、何かあったのかな?」


カーキ髪の男でも、クリムゾンレッドの長髪の女が言った言葉では無かった。

彼らが後ろを向くと、そこにはある人物がいた。

修道服のようで、ただの服のような見た目の黒い物を着ており、その上から黒の布の襟に白のラインが引かれた、フードがないローブを羽織るようにしてまとっている、白人のような白い肌に、流れるようにウェーブがかかった金髪、澄み渡る空の様な青い目。

金髪の男、ペルディーダ・エザーニは部屋の入り口の場所で、口に笑みを浮かべながら彼らに質問をした。


「少しばかり部屋が騒がしかったから気になってね…………それで、一体何があったんだい?」


「え⁉︎いやいやいや、なんでもないけど?」


カーキ髪の男は慌てながら答えた。

側から見れば何かあったに違いないだろう。

だがペルディーダは、微笑みながら言った。


「何か……あったのだろう?」


しかしその笑みは、怒りを覚えながら浮かべた笑みではなく、優しい微笑み。

慈悲深いもののような、そんな笑み。

その笑みを見た男は、自然と口を開いた。


「実は……アンタの軍を勝手に使っちまったっていうか……すいません!」


男はそう言いながら頭を下げた。

しかしペルディーダは、顔に浮かべていた笑みを崩すことは無かった。


「なんだ、そんなことか。別に構わなかったのだがね」


そ、そうすか……と男は返事をした。

ペルディーダは振り返ると部屋を出て行った。

彼は廊下を歩きながら口元に少し笑みを浮かべていた。

この男は見ていたのだった。部屋に入った時に、机の上に置かれていた水晶の中を。そして、その中で暴れていたマグナの姿を。


(これは…………少しばかり面白いことになりそうだね)


彼は気付いていないが、その口元には自然と笑みが浮かび上がっていた。

子供のような、色々なものに興味があるかのような、そんな無邪気な笑みだった。

************************

時間がかなり経った。

時間が経っていくにつれて、私自身の体に切り傷が増えていく。

頬も、二の腕も、腹部も、足も、傷付いていない部位が無いと思えてしまうほど、服は擦り切れ、血を流していた。

でも、数は少しずつ減って来てる。

このままなら確実に勝てる。

そう思った途端、舟を覆い被さる程の巨大な影が、一瞬にして現れた。

あまりにも不振すぎたので、私は空を見上げた。

そこには────

************************

何分経ったのか分からない。でも周りには、数はかなり減っていた。

あと少しで、コイツらは全滅するだろう。

最後まで気を抜かなければ、上手く行くだろう。

でも、何故だろう。また上手く行かないような気がしてきたな…………まぁ、気のせいだったら良いが……

その時、まるで俺の考えを読んだかのように、巨大な黒い物体が俺の目の前を通り、空高く昇っていった。

俺の周りにいる敵の魔物達が、いきなり騒ぎ始めた。

まるで何かを恐れているみたいに……

一体何なんだ?

俺が疑問に思った答えは、すぐに分かった。

いきなり爆発音がした。

さっきまで振り回していた『フォティアソード』の爆発音よりも、大きかった。

反射的に耳を塞いだ。

いきなり耳に、大声で叫ばれたような気分だった。

頭の中に、なにかが響き渡る。

俺は自分の耳を塞ぎながら、辺りを見回した。

そこには何もなかった。

肉片も、血も、臓物も、骨も、何もかもが。

………全部高温で焼かれたのか?俺の『フォティアソード』に似てるみたいだけど……

いや、違うか。俺のだったら肉片はあるはずだ。

それすら無くなるってことは、葬式の火葬の温度以上か?

俺はそんな温度出せる気は無いし……一体誰が────

目が合った。

誰の目に合ったのかと言うと、黒い物体の目だ。

それは赤い目をしていた。

だけど大きさが桁違いだった。多分、二メートルはあると思う。そしてその赤は、綺麗な色では無かった。血が乾いた後のような、赤黒い、そんな色だった。

それは黒かった。

黒くザラザラとしていて、硬そうに見えた。刃や矢すら跳ね返すような、そんな鱗だった。

それの口は鋭く尖っていた。

骨すら意図も簡単に噛み砕き、尖った犬歯で肉を引き裂き、人間をも簡単に丸呑み出来そうなほど、巨大だった。

それの翼はとても大きかった。

コウモリのような翼に鱗を貼り付けたように見えた。大空を飛ぶには十分過ぎる翼だった。

それは四本足だった。

三本の指に鋭い爪が生え、木や石などを、紙みたいに引き裂けれると思えるほど、鋭かった。

それは龍だった。

言葉で言うなら、黒だった。影よりも黒く、闇よりも黒い。

そんな色をした、漆黒の龍だった。

そして俺は、この龍を見たことはない。だけど、聞いたことはあった。

彼女に、オクルスに出会った時に言われた。

黒い髪で平面的な顔の男が、安藤暁人が、この龍に飛び乗り、銀色の大剣を突き刺したと言うことを。

けど、その龍の背中には、大剣は刺さっていなかった。

どうも五里川でございます。

まずは一言、遅れましたごめんなさい。

どうやら私にはまだサボるという悪い心が残っていたようです……

頑張って治していきたいので、暖かい目で見てくだされば幸いです。

以上、五里川でした。

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