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砂漠を出る

翼竜を殺し、反り返った壁をよじ登り、再び砂漠に出た。

時間はあまり掛かっていないらしく、日はまだ昇っている最中だった。

戦闘がこれ程までに辛いとは考えていなかった。

避けれない場所になるまで、戦闘は避けたほうがいいかもな。

さて、戦闘は終わらせた。『全てを知る者』が言っていた再確認も、今は終わっている頃だ。話しかければ、すぐにでも教えてくれるだろう。


『今すぐにでも教えて差し上げますが?』


どうやらずっと聞いてたみたいだな………それで、いつぐらいで草木が生えた場所に着くんだ?


『一番近くの場所で、三ヶ月ほどですね』


……………は?え?三ヶ月?石もサボテンも無い砂漠を三ヶ月も眺めながら草原に行かないといけないの?

精神的に死ぬんだけど………


『あなたが頑張れば、なんの苦痛も無いと思いますがね………』


どういう事だ?意味を教えてくれ。


『簡単に言いますと、あなたの体を私が少しだけ操作する………みたいなものです。その間は、あなたの意識はその体の中に無い事になります』


意識がない状態で動くのかよ、怖えよ。

で、体と分離した意識の方の俺はどうなるんだ?


『私がいる空間に入る事になります』


お前がいる空間?想像が無理なんだけど………けど、こんなのを三ヶ月見るのよりはだいぶマシか。

いいぞ。送ってくれ。


『わかりました』


まぁ、ちゃぶ台とあまり濃くない緑茶があったらそれでいいか。

などと考えていると、意識が段々と遠くなってきた。

ここでぶっ倒れない事を祈りながら、俺の意識が無くなった。


目が覚めた。

辺りを見回すと、無数の砂が広がっていない空間に出た。

右も、左も、前も、後ろも、上も、どこを見渡しても終わりが見えない地平線が広がっていた。そして、何も無かった。

いや、何も無かった。けど、人とも言えない、投影映像とも言えないものが中心に置かれている。もしくは、居るという表現が合うと思う。

それは人の形をしていた。

右が緑色で、左が黄色をしたオッドアイ。

金色の所々に黒色が混ざった、背中の真ん中の場所まで、川のように流れる綺麗な髪。

バイオリンとかハープとかを引いてそうな、細くて綺麗な腕と指。

白色で真ん中には上着とかについてるチャックのようなデザインがある服を着ていた。

でもそれは普通の服じゃない。

違いを言うのであれば、かなり大きめの胸の途中の場所の上に布が無く、背面は肩甲骨からお尻の途中の場所まで布がないタイプの服。要するにちょっとエロい服装をしていた。

さらに、下着も何も履いても付けてもいないというとんでも衣装だ。すげーエロいんだけど。

彼女にはちゃんと影もある。けど、『人とも言えない』と言ったのには理由があった。

もちろん彼女(?)には足がある。

けれどその足は、グシャグシャになっていた。

足の骨格がおかしな方向に曲がっているとか、そんなのじゃない。例を言うならば、テレビの画面にノイズ………要するにテレビの砂嵐が走っていて、足が隠れているみたいな状態だ。

足は常にノイズが走っている状態だが、たまに彼女の体自体にもノイズが走ることがある。

だから『投影映像にも見える』と思った。


『この姿で会うのは、初めてですね』


聞き慣れた声で、目の前の女性は話しかけてきた。

俺は今声が出せない状態になってるけど、果たして出るのか………


「あー…………そうみたいだな」


声が出た⁉︎しかも耳が聞こえる⁉︎なんでなんだ⁉︎


『どうやら、上手く行っているようですね』


驚く俺の様子を見ていたのか、全てを知る者が口を開いた。


「上手く行っている?お前が何か仕掛けてるのか?」


彼女がそう言うってことは、この現象を理解できているはず。というより、この現象を起こしている張本人だろう。

俺は気になってしまい、質問した。


『なんと言えば良いのでしょう…………人が触れては行けない領域の力を使って……と言った感じでしょう』


人が触れては行けない領域………と言うことは神様の力に近いものかな?

まぁ、深追いはしない方が身のためかな?

神様の鉄槌で死にたくないしな。


その後、俺は全てを知る者と少し会話をした。

どうやら彼女はここの世界の全てを知っていても、俺がいる世界………簡単に言えば、異世界の事は何もわかっていないらしい。

それもそうだ。

俺も自分が居た世界の事は知っている。全部じゃないけど。

けれど、今いる世界の事については何も知らない。

この世界に生まれた赤ん坊みたいな状態だ。

彼女も同じだ。

ここの事は知っていたとしても、向こうの事は何も知らない。

お互いが知らないことをカバーすれば、なんとかなるんだが…………

俺はあいにくあの世界の事の全てを知ってる訳ではない。

とまぁ、向こうの世界の話をしたり、ここの世界の話を聞いたりなどをした。

すると全てを知る者が、ふと口を開いた。


『そろそろ着く頃ですね………』


「そろそろ?三ヶ月もかかるんじゃ無かったのか?二時間も経っていないように感じるけど」


『この場所は、外の時間との流れを分かれされることが出来ます。簡単に言うのであれば、外の時間が一時間経ったとしても、こちらでは一秒も経っていない………みたいな感じでしょう』


要するにボールを七個集める的な奴に出てくる、空に浮かぶ城の中にあるデカい砂時計がある部屋みたいなのか………

確か外の時間が一分経ったら、中の時間だと一時間なんだよな………それに似てるな。


「へぇー。で、着くのか?」


『近くには着きましたが………問題があるみたいですね』


「問題?」


『はい。まぁ、自分の目で確かめに行ったほうがよろしいでしょう』


彼女がそう言った途端、プツンと意識が飛んだ。

この謎の場所に来た時みたいにだ。



白い光の中から、だんだんと周りの景色が見えるようになっていく。

二秒も経てば、砂岩もサボテンもない砂漠の景色の中だ。

相変わらず殺風景だが、一つだけ違う事がある。

目の前に五十メートル以上もありそうな、白い壁がそびえ立っていたのだ。

あの………コレは?


『砂漠化の防止と言う建前で作られた壁です。本来の目的は、砂漠に住む民族に対抗するためだとのことです』


うん。それで、この壁に入り口は?


『ありません』


………えっと?『ありません』


…………本当はあるん『ありません』


………マジ?


『本当です』


………人生はたまにデカい壁に当たる時があると聞いてきたが………

どうやら俺は、物理的にデカい壁に当たってしまったらしい。

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