苦労の連続
オクルスとちょっとした会話をした夜から、朝になった。
彼女は途中で、「そろそろ寝かせて頂きますね」と言い、部屋に戻っていった。
彼女は一様生きている存在だし、眠くなるのは当然だろう。
朝方になってくると、舟の帆を張ってある柱の上に止まっている鳥達が、いきなり俺の方にめがけて飛んできた。
五分もしないうちに、鳥の止まり木みたいなことになっていた。
この状態で鳥が羽ばたいたらどうなるんだろう、と考えると少し怖くなったが……まぁ、大丈夫だろう…多分…
「おはようございます。あら、どうして止まり木になっていらっしゃるのですか?」
と、いきなり後ろから声をかけられた。
この声からして、多分オクルスだろう…
「好きでなったわけじゃ無いんだがな………」
「そんなことは知ってありますわ、ただからかってみただけですわ」
「お前にからかわれるような事をした覚えはないが?」
「そうですね………何年か前にそんなことがあった……と言えば分かりやすいですか?」
何年前、何かあったか?
うーん………わからんな。
「すまんが覚えていないんだ。俺は鈍感でね」
「それは自慢できないものかと思うのですが?」
「フッ…そうかもな」
俺は鼻で笑うと、そう返答した。
自慢できないことだとしても、それを胸を張って言えるのは、結構すごい事だと俺は思うけどな。
まぁ、どうでも良いか。
そう思って振り返ると─────頭から明るい灰色の猫耳を生やし、腰から猫の尻尾を生やした少女が全裸で立っていた。
少女の髪は赤茶色のショートで、目の色は赤色だった。
ちなみに振り返った時に俺に止まっていた鳥達は飛び去り、舟の帆のところに止まりに行った。
「ちょっとご主人様の声に寄せてそれっぽく言っただけで引っかかっちゃうなんて、マグナさんはちょろいですねー」
……………は?
え?なんでこんな所に女の子がいるの?
どうして俺の名前知ってんの?
てかなんで亜人の女の子が全裸でつ立ってんの?
…耳とか触ったら絶対気持ちいいよな……
いや、と言うよりこの子一体何者だよ!!
「んー…なんで私の姿を凝視してるんですかぁ?あ、もしかして私の姿に発情してるんですか?マグナさんって変態ですねー」
「ハァ!?ちょ、勝手に決めつけるな!と言うより、スケルトンが発情するわけないだろ!」
ヤッベー口調おかしいことになってる。
素の口調とか入っちゃってるよ?
何をどうしたらこんな口調になっちゃうの?
誰か教えてくれよ…?
「クリス?一体何をしてるの?」
と、今度こそ聞きなれた声がした。
そこを見ると、オクルスがこちらに向けて歩いてきた。
「あ、ご主人様!ちょっとだけマグナさんをからかってただけですよ」
クリスと呼ばれた亜人の全裸女の子は尻尾を振りながらオクルスの方へ向かった。
………モロに色々と見えてしまったのでなんとも言えなかった。
「からかうなんて……なんでこの子はそんな言葉を知ってるのかしら…」
「知らないです、気がついたら覚えてました!」
クリスは首を傾げて片目を閉じて舌を出し、テヘッという効果音が聞こえてきそうな仕草をした。
………その仕草が可愛いからなんとも言えなかった。
いや、全裸の女の子にじゃないよ?猫耳を生やしてる女の子にだからね?
でも、目の前の子はその両方があるからなんとも言えないけど………
「からかうのは、ちゃんとした理由がなければしてはいけません」
なんで理由がいるんだよ…
普通いらないだろ……あれ?
あ、理由はあるか。
興味があるからとか、ただいじりたいだけだからとかか………
え?理由があるならクリスは一体なんでしたの?
「理由はちゃんとありますよ。ご主人様よりマグナさんが大好きだから」
彼女は笑顔でそう答えたが、回答がとんでもなかった。
多分人間の状態で飲み物飲んでたら絶対吹き出してた……
なんであって間もないのに好きになってるんだよ、何をしたらそうなるの?
「なっ………ど、どうしてそれを知っているの!?」
オクルスは慌ててクリスの発言に答えていたが、なんか顔が赤くなってた。
………あいつなんか言ったのかな?
「え?簡単ですよ。ご主人様が自室でマグナさんの事を呼びながらオ「あーーー!!!あーーーーー!!!!!」
クリスは何かを言い出してたが、オクルスが大声をだしてそれをかき消していた。
そんなにヤバいことなのか?
………聞かない方がいいな、聞いたら多分死ぬと思う。
「と、とにかく………そのことはここで口外しないでください!私が恥ずかしいだけなので………」
オクルスは息を運動した後みたいに荒く吐きながらそう言った。
流石にそこまで言われたらもう言わないだろう………多分…
「はい!ご主人様がオ「だからそれだと言ってるの!!なんでわからないの!?」
………どうやら意味は無かったらしい。
朝早くからすごいものを見せてもらったが、それ以降は何も無く、昼になっていた。
龍が飛んでいたのは昨日のことらしいが、全く姿が見えない。
どんな姿をしているのかわからないし、色もわからないからな……
どれだけ辺りを見回しても意味はないだろう。
それに何故だか腹が減ってきたな……
腹は減らないけど、そんな感じがする……と言うより、腹の中が寂しいと言った方がいいだろう。
とまぁ、そんな感じのが続いている。
…………久しぶりに飯でも食うか。
俺はそう考えると、己の体を人のものに変えて、舟の船内へと入っていった。
甲板から船内に入ると、広い空間の中に家具らしきものが点々と置かれていて、その奥に下へと続く階段があった。
階段は90度に二回曲がっているやつだ。
なんで部屋は広いのに点々と家具置かれてんの?
………まぁ良い。
とりあえず俺は下に降りる事にした。
下に降りると人が四人分ほどでは通れる長い廊下があり、左右に一定間隔でドアが配置されていて、その廊下の奥にも扉があった。
奥のドアの左には、下に降りる階段が置かれていた。
聞いた話によると、あの廊下の奥の扉が食事場らしい。
ドアを開けて中に入ると、木造の長机とその机に向かって椅子が何席が並べられてあり、左右の壁には等間隔に窓がつけられていて、上には吊るし型の電球が所々にぶら下げられていた。
その奥にはカウンターのようなものが付いて、右の奥に台所への入口があった。
食事場と台所が繋がっている部屋である。
その奥の入り口近くには、一枚の張り紙が貼り付けられていた。
その紙には日本語で、『材料はあるから、食事は自分で作る事♡』と書かれていた。
………………ハァ!?
自分で作れって!?
ふざけんなよ!!
なんの材料があるのかわかんねーんだよ!?
出来ると言ったらご飯の自炊だけだしさぁ!!
俺はどうしたら良いんだよォォォ!!!!!




