洞窟の後の砂漠
洞窟の出口付近で落ち、壁に指をめり込ませて間一髪助かった後、俺はその壁をよじ登っている最中であった。
両手と両足を使い、壁を登っていた。かなりの時間が経ったが、なんとか出口前にたどり着くことが出来た。
ロッククライミングは、これで最後にして欲しいな。
そう思いながら、俺は洞窟の外へ出た。
だが、困難はこれだけで終わりでは無かった。
洞窟の外へ出ると、空は黒色に塗りつぶされていて、無数の星々が輝きを放っていた。
本来ならば、暗くてあたりがあまり見えないのに、星の明かりによって、地面が薄く照らされていた。
空は綺麗だった。でも問題は地面だ。
草木がおおい茂った野原ではない。
永遠と砂が続く砂漠だ。
目の前に広い海が広がっているわけではない。
巨大な蟻塚も、サボテンも、砂岩があるわけでもない。
ただの砂だ。
どこもかしこも、砂、砂、砂、砂、砂、砂ばかりだ。
やばい………頭がおかしくなってくる。
いや、そのうち慣れるだろ。
俺はそう考えると、洞窟から砂しか無い砂漠に入った。
さて、地上に出ることはできたが、どの場所に行けば良いのか全くわからない。
出来れば草原やちょっとした林なら良いのだが………『全てを知る者』に、一番近くの林のルート案内でもしてもらうか。
『現在、周辺の地形を確認しています。時間はかかりそうですが、確実に早いルートをお教えしますのでご心配なく』
全部聞こえてたのか……そっちの方が手っ取り早いけどな。
俺はそう思いながら、洞窟の入り口の壁にもたれかかり、空を見上げた。
この空を見ていると、小さい頃に行ったプラネタリウムを思い出してしまった。
確かあの時は、家族全員で行ったんだよな………
俺がまだ五歳で、妹が三歳の時に。
その時は─────────父さんも生きてたっけ………
プラネタリウムを見終わった後に、もう一度家族全員で連れてってもらうって約束して貰ってたんだよな………
確かアレが、家族全員で見た、最初と最後のプラネタリウムだったよな……
……………また変なこと思い出しちまった…
俺ってまだまだ、子供なんだな………
そんなことを思った途端、いきなり意識が、プツリと切れた。
眠たい時に寝転んで、目を閉じた時みたいに。
意識が段々と戻ってきた。
この訳のわからない世界に来た時みたいに。
毎朝のようにくる、寝起きの時みたいに。
意識がハッキリとすると、あたりを見回した。
先程までの薄っすらとした明かりではなく、夏場の太陽の下にいる時みたいな明るさだった。
確か……砂漠にいたんだよな?
俺は壁にもたれかかった体制から立ち上がった。
砂漠の日の光はとてつもない。
水分補給をしなければ、脱水症になってしまい、最終的には死に至ってしまう。
遭難も多々ある。
砂漠の砂は風で運ばれやすいから、寝ているうちに地形が変わっているということもあるらしい。
まぁ、俺には全部関係ない事なんだけどな。
で、あとどれ程掛かるんだ?
『後少しで終了します』
あと少しか……何しよう。
この砂漠って、小学校の頃の砂場よりも広いからな……一人砂遊びでもするか。
棒倒しとか、砂の城とかさ。
あ、棒倒しは無理か。ここには棒すらないんだし…………砂の城でも作るか。
そう考え、俺は十メートルほど前に進み、砂の城を作ることにした。
バケツも何もないが、それっぽいのが出来たら良いだろうと考え、作り始め────ようとした。
すると突然、目の前の砂が、ブワッと舞い上がった。
プールに人が飛び込んで、舞い上がった水しぶきのように、砂が舞い上がった。
目の前を砂埃が遮ってしまう。
そして、砂埃が無くなる前に、俺の足が取られた。
前を見ると、お相撲さんが三人ほど入れそうなほどの巨大な穴が空いていて、そこに向けて砂が流れていた。
地面に爪を立てようとしても、流れている砂が原因で、動きを止める事ができなかった。
なすすべも無く、俺は穴の中へと流れ込むように放り込まれた。
流れ落ちる砂と共に落下した後、硬い地面に激突した。傷は何一つなかったが、また穴に落ちてしまった。俺って穴に好かれてるのか?
上から流れ込む砂を浴びながら、辺りを見渡してみると、青っぽい紫色でもあるような色をした岩肌が辺り一面に広がっていた。
大きさをザックリ表すなら、東京ドーム一つ程の大きさだろう。
それにしても、広い空間だな。
自然に出来たって感じより、誰かが作ったみたいだな。
そう思った途端、何かの気配を感じた。
人といったようなものではない。もっと別ななにかだ。足音が聞こえるわけではない。けれども、なにかが近づいてくるのはわかる。
一歩、二歩と近づくに連れ、俺の体が自然と一歩ずつ後ろに下がる。
砂が流れ落ちている場所から下がり、目の前を砂でできたカーテンに遮られる。
四歩ほど下がった後で、砂のカーテンが割れ始めた。
初めは指2本ほどの割れ目だったが、徐々に下がるに連れて、その割れ目が大きくなっていく。
しばらく経つと、その物体は顔を表した。
一メートルもありそうな、尖った岩のような一本の角。
見たものを震え上がらせるような、うす紫色の目。
草や葉を千切れそうな、草食動物にも似た口。違いを言うならば、クチバシのようなものは付いていない。
肉食動物の牙も、鋭く研がれた刃も通さないような、岩みたいにゴツゴツとした茅色の外殻。
外殻が貼り付けられたようなコウモリみたいな翼。
何もかも叩き潰すかの如く生えている大剣のように太い尻尾。
全長が五メートルほどありそうな、巨大な翼竜だ。
その生物は、俺の姿を見ると、敵対者と感じたのか睨みつけて来た。
スキルがあるのかどうかも知らない体で、こんなでかい奴とは戦いたくないんだが………
この状態じゃ、避けられないよな?




