黒髪の男
木島 黒柳ことマグナが防衛をしていた時、南門の入り口が破壊された。
こちらからの襲撃はない…と考えていたので、冒険者は誰一人居なかった。
そこからは小型のゴブリン達が入ってきた。
もちろん、周辺に住んでいる人々は恐ろしくなり逃げ出した。
だが、一人だけ違った。
酒屋の扉を開け、白髪を生やした男は、逃げている人々とは逆方向に進んでいった。
「おい、何してるんだ爺さん!早く逃げろ!」
逃げていた男性は立ち止まり、逆走している男に呼びかけた。
だが男はその発言を無視して進み続けた。
「安心しろ、逃げなくても済むさ…」
男はそう言った。
それに………と間を開けるとこう言った。
「まだ爺さんと言われる歳ではないさ」
男はそう言うと、『タイムコントロール』を使い、自分の体を本来の姿に戻した。
その姿は、白に染まった髪ではなく艶のある黒い髪型、そして日本人に特徴的な平面的な顔立ちであった。
男は首にかけてある銀のネックレスを取ると
「銀機『ヴェルマルク、一式・ミリクスバスター』」
と言った。
途端、手の中にある銀は変形し、悪魔の翼のような大剣へと変化した。
男はニヤけると、ゴブリン達の集団の中に駆け出した。
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俺は南の門へと向かって全速力で走っていた。
あの場所から南門までは全速力で約20分。
あと1分で着く。
と、そこで南門が見えてきた。
だが、何かおかしかった。
そこにはゴブリンが一体も居なかったのだ。
代わりにあったのは、ゴブリンによって出来たであろう血の池と、銀で出来ていた大剣を背負っている………日本人がいた。
俺はその日本人に近づいた。
日本人は、近づいてきた俺に気付いた。
………何故だ?
何処かで見た事がある顔だった……
いや、見間違いか?
………まぁ良い、まずは何者か聞いた方が良いみたいだな
「………貴方は何者なんなんだ?」
男はその質問を聞くと、男はニヤリと笑った。
「お前なら知っているはずだぞ……木島黒柳…」
コイツ……どうして名前を…
「……何故俺の名前を知っているんだ?というより、どこで知った?教えたのはユリンだけのはずだか……」
「さぁ、なんでだろうな?お前なら知っているかもな……」
目の前の男は右手に持っていた銀の大剣をいきなり消し、ネックレスの形に変えた。
男は首にネックレスを掛けながら、こう言った。
「まだわからないのか……ならヒントだな。お前は、俺を知っている………そして俺たちは親友になった。だが俺はお前とは会えなくなってしまったんだ。もう二年前のことだがな…」
俺がコイツを知っているだと?
二年前?何を言っている……
俺は二年前の事は覚えていないのだが……
「……最後に一つだけ言っておこう。お前は、覚えているのか?二年前、お前の中学校で行方不明になった生徒がいるという事件を……」
中学校………生徒が行方不明………まさかアイツか!?
いや、おかしい……だってアイツは…警察が捜査を打ち切るまで探されたはずだろ……
俺は不意に襟首をつかんでいた。
「なんで………ここに居るんだ……暁人!!」
「よくわかったな…黒柳…」
目の前の男───暁人はニヤリと笑い、俺から離れた。
「名前を当ててくれたお礼に言ってやるよ。俺は安遠 暁人……二年ぶりだな、木島 黒柳」
暁人は俺を見て言った。
「だがここで再会を喜んでも意味はないだろう?早く北に行ったらどうだ?」
コイツ…暁人は生意気だが、ちゃんとしたことは言ってくれるみたいだな………
俺はそう思うと、行った道を逆走して防衛線へと戻っていった。
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走って行く黒柳を、暁人は見守っていた。
見守っていたその表情は、少しだけ悲しいように見えた。
黒柳が見えなくなると、彼は反対を向き、門へと歩んで行った。
「お、おい?どこに行くんだ?」
「どこに行くかだと?行き先なんか決まってないさ」
「なんでだ?親友に会えたのにか?」
「親友……か…俺からすれば、アイツはそんなものじゃないさ…」
暁人はそう言って、南門へと進んで行った。
彼からすれば黒柳は親友でも、仲間でも無かった。
ただの、知り合いであった。
それは暁人からすればの話であり、黒柳からすれば、表には出していないが、会えなくなった親友にあえて、少し嬉しかったのである。
だが、それは暁人には届かなかったのである。




