防衛の始まり
ユリンと共に回復薬を大量に購入した翌日。
ギルドの中には多くの冒険者達が、装備のチェックをしていた。
あと少しで襲撃が来る。
そこで俺は口を開いた。
「みんな聞いてくれ」
俺がそう言うと、周りの冒険者達がこちらを見た。
「俺は昨日の内に大量の回復薬を買い込んでいた。全員に渡す予定だから、みんな取りに来てくれ」
そう言った。
だが、誰も反応せず自分の作業に戻り始めた。
やはりみんな取りには来ないか………
そう思っていると「おぉ!気がきくじゃねぇかにいちゃん!ちょうど欲しかったんだよ!」と、髭を生やしたゴツい男性の冒険者がこちらにやってきて回復薬を取って行った。
その光景を見ていた冒険者達は、「俺も欲しい!」や「あ、私も!」などと声を上げて一斉にこちらにやってきた。
「あ、待ってください!順番に受け取ってくださいよ!それから、一人一本ですからね!」
ユリンはそう言って、周りの冒険者達に注意を呼びかけていた。
まるで人気商品の販売店みたいだな……
そんな事があり、5分もすれば、昨日の内に買い集めていた回復薬は全ての冒険者の手に渡った。
………これから始まるのは防衛戦だ。
─────シナリオ通りの、防衛戦だ。
俺たちが守る所………簡単に言うと防衛ラインは、あの廃墟の教会がある所だ。
そこに、防衛のために来た冒険者達40人が集まった。
ギルドを出る前に受付嬢が、現在のゴブリン達の進行を報告してくれた。
今ゴブリン達は、この道の遥か彼方にいる
「いいか!近接戦が得意な冒険者は近づいてきたゴブリン達を抑えろ!魔法を使えるものは遠くから来ているゴブリンを出来る限り減らせ!」
と、髭を生やした男が言った。
「始まりますね……」
隣にいたユリンが話しかけてきた。
「始まるな……」
「………わかってますよね?」
「わかってるよ、無理せずにすぐ逃げろだろ?」
「覚えてくれてうれしいです………約束ですよ…」
ユリンがこちらを見上げて言った。
「約束するよ…」
「敵が来たぞォォォォォォォ!!」
誰かが大声を上げた。
全ての冒険者が目の前の道を見た。
見た先には無数のゴブリン達がこちらに向けて歩いて来ていた。
「魔法を使える冒険者、攻撃開始!!」
誰かがそう言うと、一斉に詠唱が始まった。
中には無詠唱なものもあり、すぐさま攻撃をした人物もいた。
火の玉や光の矢、風の刃に水の槍などと、無数の魔法が飛び出した。
途端、目の前のゴブリン達はこちらに走って突っ込んできた。
「近接戦だ!武器を持っているものはゴブリン達を押さえてくれ!」
それを聞いた剣などを持って冒険者達は、前方から来ているゴブリン達の進行を抑えた。
どういう状態かというと、近づいてきたゴブリンを武器で弾いて遠のけたり、倒したりとそんな感じである。
……………不安だな。
この状態で行くのならいつこの陣形を壊されてもおかしくないな。
………行くか…
俺はそう考えると、抑えていた冒険者達を追い越して、前に出た。
「おい新入り、何してるんだ!そんなに前に出たら死んじまうぞ!」
「死ぬ………ですか…安心してください」
俺がそう言うと、目の前に二匹のゴブリンが飛び掛かってきた。
俺はすぐさま太ももに付けてあるダガーを取り出すと、飛び掛かってきたゴブリン達の喉元に一本ずつ突き刺した。
「いけますので」
そう言い終えると、ダガーを喉元から引き抜いた。
それと同時に赤い液体が溢れ出していた。
もちろんダガーの刃も赤く染まっている。
ダガーを持ち替えると、遠くにいるゴブリンに向けてダガーを二本投擲する。
投げたダガーはそのまま飛んでいき、見事に遠くにいるゴブリンの目に突き刺さった。
俺は駆け出してダガーが刺さったゴブリンに近づくと、ダガーを抜き、喉に突き刺した後横に切る。
途端、後ろから二匹のゴブリンが襲ってきたので、ダガーを持ち替えて、二体の喉元にダガーを一本ずつ突き刺した。
俺は喉にダガーが刺さったゴブリンの頭を掴むと、それを前に投げつける。
驚いたゴブリン達は投げつけられたものから離れていく。
直後、俺は腰から双剣を取り出し右斜め前にいたゴブリンに近づいて、首を切り落とす。
すると左右から襲ってきたので、一本ずつ受け止める。
その後、右にいるゴブリンを蹴り飛ばし、左にいる奴の腹に剣を突き刺し、引き抜く。
蹴り飛ばした奴は無視して、ダガーが刺さったまま死んだゴブリン達のところに向かいダガーを回収する。
これなら一人でも出来そうだな
そう思ってしまった。
───その考えは自分のシナリオが完璧だと思っているからである。
でも、神様はそんなに優しくないし、現実は甘くない。
──────狂う時は狂うのだ。




