決めつけられたシナリオ
トレイスと会い、5日経った。
襲撃まであと2日………今ここでギルドに報告したとしても、変人扱いされて追い返されるだけだ。
だが奴らは気付く気配すらない。
このままだと、襲撃に気付かず壊滅……なんて言う一番やばいことになってもおかしくない。
………うまく気付かせる方法を考えがなければいけないな。
だが、どうすれば良いんだ?
などと考えながら、ユリンと共にギルドに向かっていた。
途端、『お知らせがあります、この街にいる冒険者は直ちにギルドまでお越しください』と言う声が、待ち中に広がった。
「え?なんでこの放送が流れてるんですか?……クロヤさん、急ぎましょう!大至急です!」
ユリンはそう言うと走ってギルドへっと向かった。
(今の………普通じゃないな、なんだったんだ?)
『音の魔法、『イーコス』です。発動者の周辺の音のを変更したり、自身の声量を変更することも出来ます』
(利用価値はあるのか?)
『かなりあります。例を上げろとなれば時間はかかりますが』
(いや、結構だ)
俺は『全てを知る者』にそう答えると、ユリンの後を追い、ギルドへ急いだ。
「忙しい中集まっていただき、ありがとうございます」
ギルドの受付嬢(?)のような人はそう言ってお辞儀した。
「して、今回の件ですが、冒険者の一人がクエスト中に、『ゴブリンの大群を見た』と言う報告を受けました。その後のルート調べたところ、約2日後にこの街に到着するようです」
それを聞いた途端、ギルドの中がどよめき出した。
まぁ無理もない。
普通に過ごしてたら街に襲撃とか、いきなり過ぎるからな。
「それで皆様には、そのゴブリンを撃退、もしくは殲滅をしてもらいたいのです」
少し間を置いた後、受付嬢は「報告は以上です。何か質問はありますか?」と言った。
それを聞いた後、一人の冒険者が質問してきた。
「すいません、数はどれほどなんですか?」
「そうだ、ゴブリンはいくら居るんだ?」
それは気になるな。
数に応じて、誰がどれほどの数を倒す……それが決めることが出来る。
ここに居る人数はザッと40人程
さて、何人だ?
「総定数は……500です」
再びあたりがどよめき出した。
500……か……
「ユリン、500ということは一人何体程倒したらいいんだ?」
「そうですねぇ………一人あたり12から13ですね」
12から13。
だがそれは雑魚だけを相手にするのか、もしくは強いものも入れるのか……
まず勝てるのか………
「いけるのか?」
「はい、強さにもよりますがね……」
やはり強さは必要なんだ。
「それでは皆様、この二日間の間、襲撃に備えて準備してください」
受付嬢はそう言うと、周りにいた冒険者達は皆ばらけた。
この襲撃について話す者、準備のために出ていく者など、色々といた。
「どうする、ユリン?」
「そうですね……私はこの日はやけ酒してましたから……」
何故そんな時にやけ酒をするんだよ………
「そうか………で、今回は?」
そう質問すると、彼女は笑顔でこう答えた。
「………やけ酒ですね」
「………マジで?」
俺は真顔になって聞き返した。
「冗談ですよ、冗談。こんな状態でそんなことはできませんからね…」
「まぁ、そうだよな…」
「それでクロヤさん、どうします?」
「どうしますって言われてもなぁ………わからないんだよ…」
「わからない………ですか?」
「あぁ、こんなの初めてだからな」
「………そうですか…」
そんな会話をした後、俺たちは黙ってしまった。
その後、俺達はギルドを出て行った。
街中を歩いている中、街はいつも通りの状態になっていた。
2日後には襲撃があるのに、何故こんなにも慌てていないのか……
そんなことを考えていると、ユリンがいきなり話しかけてきた。
「あ、あの…クロヤさんにお願いがあるんですけど………良いですか?」
「あぁ、別に良いけど………」
お願いか……大体の察しはついてるんだがな…
「あの、ほんとうにちょっとしたお願いなんですけど……今回の防衛が失敗仕掛けているときは、最後まで残ろうとせずに逃げてください」
意外だな、死ぬなとかじゃないのか。
でも、なんでそんなことを……
「逃げる?どういうことだ?」
「ですから、ピンチになった時にここを絶対守るとか、そんなことを考えずに逃げてください。私の知り合いの仲間も、それで死んじゃったので…………」
そして少し間を開けたあと、ユリンは言った。
「だから、あなたには死んでほしくないんです。私のことを助けてくれたあなたを……死なせたくないんです………」
死なせたくない……助けてくれたから……か……
聞き終えた俺は、ハァと溜息をついた後、こう言った。
「なんだ……お願いってそんなことか………」
「そ、そんなことじゃないですよ!ちゃんと話しを聞いたんですか?」
「聞いたからこそそう答えたんだよ。死んで欲しくない?元から死ぬ気なんかねぇよ」
それに、と言うと俺は続けて言った。
「俺は絶対に死なない、絶対にだ。フラグとかそんなんじゃない、絶対に生きてやるよ」
生きてやる………結果もわからないのに、それを言うのは意外にも簡単だ。
確信できる理由もありもしない。
でも、俺にはそう確信できる理由がある。
それも一つしかない。
───コトの全てが、俺のシナリオ通りに進んでいるからだ。




