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舞台の裏の出来事

例の夜の件から3日過ぎた日の夜。

俺とユリンは初めて会ったあの日のように、カウンターで酒を飲み、ユリンは酔い潰れて寝ていた。

酒を飲んでいる最中に

『ほんとに……あの日の夜は凄かったですね…』

などとユリンが言うので、変な勘違いをされないよう対処するのに精神を使っていたからか全く酔えなかった。

もしくは、久しぶりに飲む酒だったからかもしれない。

あの日の後は、色々と大変だったから酒を飲む暇なんてなかった。


「ユリティルス様は寝てしまったようですね」


とカウンターの中にいるリンズが小声で話しかけてきた。

なぜここで彼が働けるのかには理由がある。

俺がユリンの記憶から、彼の記憶を消したのだ。

世界の歴史は、何一つ変わらない。

だが彼女の中の歴史では、クレイン家にリンズが来なかったことになっているのである。


『お前の頭の中の情報、すなわち記憶からどの部分を消す、もしくは改竄するものを選んで、彼女の記憶を変える。これはつまり、彼女はお前を忘れたと言うわけではなく、お前が居なかったと言うことになる』

俺は少し間を空けてから、

『お前が大切にしたかったものが、お前を忘れる。それは相当心に負担がかかる……今ここで過去を振り返り嘆いてるお前に、いけるか?』

俺はそう言った。

彼の覚悟を聞くために。

俺だって、彼みたいな選択を狭まれたら、居なかった存在にされるか、恨まれる存在になる………どれも選べないと思う。

だけど、自分が居なくなった事になって、その人の負担が無くなってしまうのなら、俺はその人の記憶を消してもらう。

そう考えている時に、彼は言った。

『それでユリティルス様の負担が減るのなら…喜んで引き受けよう』

────リンズは俺と似ていたのかもしれない。

そして俺は彼の記憶を見た後、ユリンの記憶の中から、彼の存在を消した。


目の前にいるリンズが話して来た事で、それをふと思い出した。


「いつもこういう事になるんだ……彼女と飲むとな……」


「まさか、ユリティルス様が三年間でこうなるとは………」


「……意外だったか?」


「いえ、彼女のお父様はお酒を飲むと寝てしまうことがあったので……想像は少しできていましたよ」


「想像できていたのか…」


「えぇ、できましたよ…」


そんな会話をしながら、俺は右手に持っていたコップの水を飲んだ。

一つ目の山は突破出来た。

だがまだ俺にはやらなければいけないことがある。

まだあのゴブリンどもとは連絡が取れていない。

近々会いに行った方が良いみたいだな。


その後、ユリンを部屋に連れてベッドの中で寝かせた後、スケルトンになりゴブリンが居るところへ移動する事にした。


「………『テレポーテーション』」


もちろん移動先は、あの洞窟だ。

ここに来るのが何ヶ月も前に来たような気がする。

いや、実際には数日ぶりか。


「『全てを知る者』、ペルグランデ・トレイスは今どこに居る」


『現在検索中です………発見しました。彼の上空を一時的にテレポート位置にすることができますが、しますか?』


「やってくれ」


『設定致しました。テレポート位置にしました』


「よし…『テレポーテーション』」


一瞬にして景色が変わると、そこは空だった。

目の前には青く輝いている三日月が見える

そして下を見ると雲があって………なんで雲があるんだ?

その途端、俺はそのまま真っ逆さまに落ちた。

おい!これ全然違うじゃん!

ユリン助け出す時よりも全然違うじゃん!


「全てを知る者!何故こんな事になっている!?」


『トレイスに発見されない高度はこれくらいでしたので』


明らかに高いわ!怖すぎだろ!

あー…スカイダイビングってこんな感じなのかなぁ………

いや、こんなことをしてる場合じゃ無い。

俺は肉眼でトレイスを見つけると、そこに向かって落ちて行った。


落ちてから2分。

何も無いのかなぁと思っていたらいきなり強い衝撃が来た。

パッと気づくと地面にぶつかっていた。


「おい、大きい音が聞こえたぞ?見て来い!」


この声は久しぶりに聞いたな。

確か………トレイスだったっけ?

俺は体についた土をはたき落とすと、声のした方へ歩いて向かった。

少し時間がかかるのでは…と思って来たが、10秒ほどしたらゴブリンを見つけることができた。

前は弱そうな見た目だったが、筋肉は少しついていた。

身長が小さいのは変わりないがな。


「と、トレイス様!マグナ様です!マグナ・モルス・ルーナーティクス様です!」


言葉が達者だな。

前は片言だったんだがな………


「ゴブリンよ。俺をトレイスの元に案内してくれ。話がしたい。」


「わ、わかりました。では、ついて来てください」


そう言うとゴブリンは前を歩いたので、俺はその後を追うようにして歩いた。



「元気そうだな、トレイス」


「誰かと思えばマグナ様じゃないですか。お久しぶりですね」


今俺は、簡易的に作られた木の椅子に座り、ジャイアント・ゴブリンのトレイスと向かい合って話している。


「お久しぶり……の時間は経ってないだろう?」


「まぁ、細かいことは気にしなくていいと思いますがね」


「……そうだな」


確かにこいつの言う通りだな。

何日経ったなんか関係ない。

今は『例の件』について話すだけだ。


「それでトレイス。俺がお前に会いに着た理由、わかっているんだろうな?」


トレイスはしばらく黙り込むと、


「知ってますよ。近くの町を襲うことでしょう?」


「そうだ。決行日を教えてなかったな。だがまず、お前は今の軍団であの町を落とすことはできるか?」


「可能と言えば可能です。ですが完全に落とすには、ざっくり見積もって一週間でしょう」


「一週間か………間に合うんだな?」


「えぇ、確実に」


襲撃は一週間後か……

日程は把握した。

次は奴らの武装だな。


「なるほど………それと、武装はどうなっているんだ?」


奴らの装備を知っておかなければ、今後の対応も変化してくる。

だからそれはとても大切なことだ。


「武装ですか?全ての武器を刃物系に変えました」


「ほう、何故だ?」


「理由がいくつかありますが、1番の理由はリーチだな。ゴブリンの武装は距離が短い武装が多いが、少し長くするようにしたんっすよ。武装はショートブレードのほかに、ロングブレードや小型アックス……と、切断力が高い武器を中心にしました」


武装を変更したか…だが、だいぶとマシになるだろうな。

棍は一番弱い武装に見えるが、実はそうではない。

打撃系統の武器の中では一番軽く、素早い打撃攻撃を叩き込むことが出来る。

上手くいけば骨も壊すことが出来る。

素早く打撃を与える………それが棍の売りだ。

それが無いと言うことは、対処が簡単になる。

どうやらトレイスは、棍の強さをよくわかってないみたいだな。


「なるほど………良い選択だな」


全くよく無いけどな。

だがこれで対処はしやすくなったな。


「では、俺は去るとしよう。襲撃の結果は、いつでも話して来い」


「はっ、了解致しました」


もちろんそれは、お前が生きていれば………の話だがな。


「『フライング』」


俺はそう言うと、夜の空へと昇っていった。

さて、準備は揃った。

あとは奴らを使って、俺はのし上がる。

………卑劣で卑怯なやり方かもしれないけど、今の俺はこれをして上がるしか無い。

……その分の代償は、俺が上位の冒険者の時に、利息をつけて返してやる。

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