導かれるスケルトン
スケルトンになり、ここが洞窟の中であることを知って、時間が経った。洞窟の中にいるせいで、今は何時なのかわからない。
だが、初めのうちは慣れていなかったこの体が、徐々に動かしやすくなっているように感じる。
操作がわからないゲームに、段々と慣れていくかのような感じだ。
体の動かし方はわかってきた。
だが、今後のことをどうするかを、考えることが出来ない。
無理もない。
現状、ここがどのような世界で、どのような生命体が活動しているのかもわからない状態だからだ。わかっているのなら、後々のことを考えやすいんだけどな………
………いや、今やるべき目標は目の前にあるか。
俺は顔を上げ、紺色のようでもあり、青っぽい紫色でもあるような色をした岩肌を見た。
そうだ………まずはこの場所に出口があるのかを調べなければいけない。
そう思った時に、また俺の頭の中に単語が浮かび上がってきた。
これで2回目だが、何か忘れていたことを思い出したのと似た感覚だな。この体には、何かあるのか?
いや、答えが出ないことを考えても意味がないか。
出てきたものは、スキル『レコーグ二クション』。簡単に言えば、触れた物の詳細を知ることができるスキルらしい。
今の状態で、こんなスキルを手に入れれたのは有難い。
俺は早速、壁の石に手を触れて、使ってみることにした。
結果はすぐに出た。
名前などはわからないが、この洞窟のどこかに出口が存在しているのは間違いない。それと、俺が今いる場所は地上から二百メートルほど離れているようだ。
出口があるのは理解した。でも次の問題は、ここをどうやって出るかだ。
上に向けて直下掘りすれば確実に出れる。
だからと言って、それをしたら上にどんな影響が起きるかなんて想像も付かないし、そもそもこの上がどのような地形なのかもわからない。
むやみに掘って海の中だったら、水が一気に流れてきて、あっという間に海中洞窟の出来上がりだ。
もちろん俺は泳ぐのは下手だし、まずそんな事は望んでもいないので直下掘りはしない事にしておく。
となれば、自力で探すことになるな………いくら時間がかかるんだ?
この洞窟の構造がわかる人がいるのなら、教えてもらいたいぐらいだな。
『お教えしましょうか?』
それは助かる。早くここから出たいし───
っておい、ちょっと待て。
今の俺は耳が聞こえないのに、今話しかけてきたのは誰だ?
いや、聞こえてきたというより、頭の中に響いてきたのか?
答え方も、俺の考えを読み取っているような感じだったし…
さっきの声って、俺の考えを常に読み取れてるのか?
『もちろん、読み取れています。あなたがここから出たいということも知っています』
………てことは人ではないことはないのか。じゃあ、この声の主のお前って何者なんだ?
『自己紹介がまだでしたね。私は「全てを知る者」。この世界の、あらゆる事を知っているものです』
この世界のあらゆる事を知っている、『全てを知る者』………か。
どうして俺のところにいきなり出てきたんだ?
何かの理由があるならわかるけど………
『理由は何もありません。わかっているのは、あなたを補助する事のみです』
補助するのみ………って事はサポート役になるってことか………すげー有難いな。
といより、今の俺は一刻も早くここから出たいんだが………出口までのルートって教えることが出来るか?
『可能ですが、周辺の気候、この洞窟の構造を詳しく知った後、教えることが出来ますが……』
それでも良い。いくら時間がかかったとしても、ここから出ることが出来るなら、文句は何一つない。
『………わかりました。では、後ほど』
彼女(?)はそう告げると、頭の中に響いていた声が無くなった。恐らく、この洞窟の構造でも調べているのだろう。
時間がいくらかかるかはわからないけど、出れるのなら、別に辛くもないな………
それからしばらく経った後、『全てを知る者』から、ここから出口までのルートを言ってくれたので、俺はその言葉に導かれていく人間のように指示に従った。
その道のりはあまり簡単な者ではなかった。
時には巨大な空間に出て、時には大雨で洪水の時みたいに速く流れている川を飛び越えて、時には勢いをつけて二十メートル程ありそうな亀裂を飛び越えようとしたが、途中で落ちかけてぶら下がるような体制になってしまったり、時には洞窟の中に出来た巨大な渓谷の壁をよじ登ったりした。
そして、長い坂道を登っているはるか先に、白く光る巨大な穴があった。ついに出口にたどり着いたようだ。
何時間か、何日経ったのかはわからない。
けど、出口が目前にあると言うことが、何よりも嬉しかった。
やっと、日の当たる場所へと出ることが出来るのだ。こんなに嬉しいことはあまりない。
俺はその光を目指し、歩みを早めた。
一歩、また一歩と進むに連れ、光に近づいていく。
そして後一歩の時に、いきなり目線がガクンと落ちた。
何が起きているのか、全くわからない。
周りの岩達がとてつもない速さで上へと登っていく。
落ちているのだと気づいたのは、この時だった。
俺は急いで、壁に爪を立てる。
岩に指がめり込み、壁に爪痕を残していく。
しばらく経ったところで、動きが止まった。
下を覗くと、果てしなく続く巨大な穴の壁に、しがみ付いていた。
『どうやら、この場所で四百メートル程ですね。振り出しに戻るどころか、戻り過ぎているようですが……どうされますか?』
………………決まっている。よじ登るだけさ。
俺はそう決心すると、壁に爪をめり込ませて、壁を登り始めた。
ここの洞窟を出るには、まだまだ時間がかかりそうだ。




