魔法使いの最後
「私の全てを、奪い去ってはくれないか?」
目の前にいる魔法使いが言った言葉を聞いた途端、俺の思考は一瞬だけ停止した。
コイツはなにを考えているんだ?
全てを奪い去れ?
それは自分の命も全て奪えってことか?
つまりコイツは死んでもいいって思っているのか?
怒りを感じた俺は魔法使いの胸ぐらを掴むと、こちらに引き寄せ睨みつけた。
「お前、なに訳のわからないことを言っている。ふざけているのか?」
「ふざけていない。あるがままのことを言っているだけだ」
魔法使いはこちらを見上げながら怯えずに淡々と答えた。
ふざけて言っていると思った、けど真剣な眼差しだった。
俺は魔法使いの胸ぐらを掴んでいる手を離した。
「お前の目を見てみたが………本気のようだな。何故だ?」
そもそも何故この魔法使いは死にたがっているんだ?
俺がみたところ、コイツの年齢はざっと80ほどに見えている。
自分の寿命に感づいているのか?
「死にたい理由か………寿命が近い…という理由もあるが、そろそろ限界がきているんだよ…」
限界?蘇生魔法を使うのにも何か必要のか?
もしかしたら、一回ごとに寿命を何年か消費するのか?
………いや、それはあり得ないな。もし仮にそのようになっていたなら、蘇生魔法は存在しない。
第1、この蘇生魔法を初めて覚えた人物は何百人も蘇生させたと記されている。
仮に一人につき一年の寿命を消費するなら、その人物は80人か120人のところで死んでいる。
なら、もっと『別の何かが必要になる』ということになる。
「限界?それは一体なんだ?お前の寿命か?」
それらを踏まえた上で、俺は質問した。
「寿命では無い、理由は二つある。一つ目は己の体力の限界。二つ目は蘇生魔法に必要な素材が不足しているということだ」
寿命ではなく体力か……まぁ、歳をとるにつれて体力は減っていくからな。
それで素材。不足しているなら取りに行けばいい話だが、取りに行かないということはそれなりに凄い素材ということだな。
「なるほど………素材不足と体力が問題か…解消することは出来るのか?」
「いや、不可能だ。体力は回復できても、素材はこの町の近くには無い」
それと…と魔法使いは間を空けてから再び言った。
「私はもう十分に人生を楽しんだんだ。私の最愛の人は随分前に亡くなった……私の心の支えとなるものは、もう何も無いのだよ」
最愛の人を亡くした…か…………
そりゃあ誰でもそうなると思うな…
そういえば異世界に来る前は、心のことで相談に乗ったりしてたな……
でも、流石にこれはお手上げだな…
どうすることもできない。
死なせたほうがいいのかもしれない
だけど………もう一度だけ聞いておこう…
「お前が死にたいという理由はわかった。確かに俺はお前を殺して、お前の経験などを全て手に入れることができる。だが、本当に死んでもいいのか?」
俺は、これがこの人にする最後の質問だと思いながら、目の前の魔法使いに質問した。
「………あぁ、もう十分だ」
魔法使いは目を閉じてしばらく黙った後、こう答えた。
「そうか……なら、この椅子に座ってくれ」
俺は教壇の近くにある椅子を指差した。
魔法使いは何も言わずにその椅子に向かった。
俺もそのあとを追って歩いた。
魔法使いが椅子に座った後、俺はその人の頭に手をつけた。
「未練は無いんだよな?」
俺は質問した。最後の確認をするかのように。
「未練………か…」
魔法使いはそう言った後、しばらく黙った。
その後、彼はこう言った。
「私の妻に、この姿を見せられなかったことだな………」
その言葉を聞いた後、俺は『奪い去るもの』を使い、魔法使い………いや、メイガスの全てを奪い去った。
その全てには、彼が持っているスキルや記憶、ステータスなどの全てのものを奪った。
奪っている最中、彼の目から一筋の涙を流しながら「****、やっと会えるな…」と、言っていた。
だが、名前は聞き流していたため、なんと言っているかは分からなかった。
全ての作業を終え、メイガスの死体を教会の裏の庭に埋め、墓を作った。
よくある十字架が付いている墓だ。
それが終わる頃には、辺りは満月の月明かりによって照らされていた。
「………メイガス…お前はこうなることを知っていたのか?…」
彼の墓を眺めながら、俺はそう呟いた。
もちろん返事は無かった。
俺は自分の姿を男の人間に変えた後、その場から立ち去った。
五里川です
早くあげようって言う思いで書いてました。
誤字とかあったら報告してくださいお願いします。
さて今回で私の中の一つの山場が終わりました。
ですが山場はまだまだあります。
え?これは山場じゃ無いだって?
………文字で表すのは少々苦手なんですごめんなさい。




