名もなき魔法使い
『オールキャンセラー』を発動させ、目の前で倒れ込んでいるスケルトンに歩み寄って行った。
倒れ込んでいる………というより四つん這いになっていると言ったほうがわかりやすいかもしれない。
一歩、また一歩と近づいてもスケルトンは顔を上げなかった。
まるで何も聞こえないかのように。
「私の言葉は聞こえているのか?それとも、無視しているのか?」
スケルトンのすぐ近くまで寄った私は質問した。
だが返事はしなかった。
さて、実際はどうなっているんだろうな。
私は『観察眼』というスキルを発動させた。見たものの状態を見る……簡単に言うと目で見た人物、物体の今の情報を見ることができるスキルだ。
しばらくスケルトンの全身を見回した後、わかったことがある。
このスケルトンには五感が備わっていなかった。
いや、形跡はあった。
舌と発声器官、それから聴覚だ。目の方はこのスケルトンが持っている『見通す目』で補っていたみたいだ。
さて、少々面倒なことになるが、作ってやろう…
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何も見えない、何も聞こえない状態からしばらく経った…
一体いつになったらこの状態が終わるんだと思っていたら、いきなり視力が回復した。
「目は見えているか?」
耳も聞こえていた
声のした方へ顔を上げると、そこにはあの蘇生を使える魔法使いが椅子に座っていた。
「その調子なら耳も聞こえるみたいだな。なら充分だ」
魔法使いは椅子に座りながら顔をこちらに向けて言った。俺は近くの椅子の背もたれに手を置き、そのまま立ち上がった。
「一体どう言うことだ?なぜ俺は音が聞こえなくなったんだ?」
俺は魔法使いに質問した。
あんなのを食らったのは初めてだ。一体何をしたんだ?
「…いいだろう、教えてやろう」
魔法使いは椅子から立ち上がり、こちらを向いた。
「さっき私が使ったのは『オールキャンセラー』と言うスキルだ。あの半球体の中にいるものはスキル、魔法、それらの効果を全て無力化するものだ」
なんて恐ろしいスキルなんだ。つまりこいつを使えば、魔法で動くものをいとも簡単に制圧できるって事だな。
「なるほど…だから俺は耳や目が使えなくなったのか」
「そう言うことだ。ちなみにお前が聞けたり喋れたりできるのは、私が『形状変換』で作り上げたものだ。かなり苦労したぞ」
それと、コイツが俺を助けてくれたのは本当に良かった。
コイツが悪人ならば、いとも簡単に殺されていたのだろう。
「さて、本題に入ろう。君がここに来た目的はなんだ?」
「俺の目的か?そうだな、蘇生魔法を教えて貰おうと思ってな」
「…やはりな、そうだと思っていたよ」
明らかに知っているような言い方だな。何故だ?
「ここに来るものの大半はみんなそうだ。蘇生魔法を知るためにわざわざここまでやってくる。実質、この魔法は簡単に手に入れることが出来る。だが、その者たちには決定的に足りないものがあった」
「決定的に足りないもの?それはどう言うことだ?その魔法は簡単に手に入るのだろ?なにが足りないんだ?」
そうだ。
簡単に手に入る魔法なのに、なんでみんな覚えようとしないんだ?
「決定的に足りないもの、それは『覚悟』だよ」
覚悟か。
つまり蘇生魔法を覚えるには何かの覚悟がいるんだな。けど、なんでだ?
「覚悟?何故覚悟が必要なんだ?教えてくれ」
魔法使いは一息ついたあとこう言った
「覚悟を決めないといけないもの、それは『己の寿命を捧げる』ことだよ」
……なるほどな。そりゃ覚悟が必要になる。
生半可な覚悟では自分の寿命を削ることに恐怖して誰も蘇生をしない。けど、ちゃんとした覚悟があれば、その魔法を使えるってことか。
「自分の寿命を削り、他者を蘇らせる。これが蘇生魔法だ。武器も同じだ。強い武器を手に入れるためには金貨などを消費しなければならない。この世に利益だけが貰えるなんて理想は絶対存在しないのだよ」
「だが………お前は違うようだな。命の流れを感じない」
「よくわかっているな。俺は死者だ。命なんて削る意味はない」
「全くその通りだ………それとお前は、私の知らないハベーレスキルを持っているみたいだな」
コイツの知らないハベーレスキルは多分、『奪い去る者』だろう。
「お前の持っているそのスキルは、どうやらステータスやスキルも奪えるみたいだな……」
「そうだが、何故そんなことを聞くんだ?」
男は少しだけ黙り込むと、口を開いた。
「お前に頼みがある、私の全てを、奪い去ってはくれないか?」
五里川です
前にご挨拶をしてから一ヶ月が経過しました…
早く出すとか言ってたのに遅れてしまいましたごめんなさい
ほんとに許してください
次こそは早くあげようと思います
これ本当です




