ことの始まり
夜、ほとんどの建物の光が消えている中、明るく光るコンビニの裏口から、一人の男が出てきた。
学校規定の制服の格好をした、高校生だ。
彼は歩道を歩きながら、自分の財布の中身を確認した。中には千円札が二枚と、抜き忘れていたレシートが何枚もあった。
少し眺めた後、財布を閉じ、学校指定の鞄の中に入れた。
右ポケットに入っていたスマホを取り出し、時間を確認すると、九時半になっていた。
ポケットにスマホをねじ込むと、彼はそのまま、自分の自宅へと続く歩道を駆け足で進んでいった。
しばらく経つと、彼は自分の自宅の前で立ち止まった。
左のポケットから、自宅の鍵を取り出すと、玄関の鍵を開け、中に入る。
玄関の向こう側には、人二人が通れそうな廊下と、二階に続く階段があり、廊下の奥には横開きのドアになっていた。廊下を進み、ドアを開いた。
目の前には広いリビングがあった。。左端の壁には三十二インチのプラズマテレビに、それを立てるための高さ五十センチ程の台が置かれていた。
テレビの前には木でできた長方形の机と、その机の前には、人が横並びで三人座れる程の幅があるソファーが置かれていた。
さらにその右には、広いキッチンがあった。
彼は夕飯や風呂には入っていなかったが、明日の朝一に終わらせようと思い、ソファーの上に寝転がった。
彼は段々と眠気に襲われていく。
周りの景色が歪んだのは眠たいからだろう、と思った彼は、そこまま眠りについた。
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眠っている状態から、徐々に眠気が消えていくのがわかる。目を閉じた状態で、意識が戻って来ている。
目を開けた。
だが、真っ暗なのは変わらなかった。
昨日まで見えていたのに、朝起きたら失明した時のように、何も見えなくなっていた。
自分の体が壁にもたれかかってるのはわかっている。
でも、感触とか、皮膚から感じ取れる感覚が、全て消えていた。
使えなくなっていた器官は、それ以外にもあった。
音が聞こえない、匂いがしない、声が出ない、舌がない、生きているという確証すら無い………
座り込んでいる状態から立ち上がろうとしても、平行感覚を掴めず、壁か何かに手をかけ、体を支えてしまう。
生きている心地が、全くしない。
もう死んでいるかのような気がした。
するといきなり、頭の中に単語が浮かび上がった。テスト中に不意に問題の答えを思い出した時のような、そんな感じだ。
出てきたキーワードは、持続スキル『見通す目』。
スキル内容は、目を持たない者に目を与え、見たモノの詳細内容などを確認することができる。そして暗視の効果付きだ。
何も見えない暗闇の中で、こんなスキルがあるのは有難いと思い、早速使ってみることにした。
スキルを発動すると、真っ暗だった世界に、徐々に明かりが見えてくるのを感じる。
しばらくすると、周囲の光景を見ることができるようになった。
紺色のようでもあり、青っぽい紫色でもあるような色をした岩肌が、上も、下も、右も、左も、全てその色で出来ていた。
その時に、初めて気付いたことがある。
俺の目線が、いつもよりも少しだけ高いのだ。
俺は体を見るように、首下に向ける。
ローブを羽織っているが、大きなボロ布を上から被っているようにも見える。
だがそんなものには目も向けていない。
今見ているのは自分の両手だ。
白と赤が混ざったような皮膚に、手相が入った手のひら。それが見える────はずだった。
今見ているのは、黄ばんだ白色をした、骨で出来た両手だ。
その瞬間だけ、なぜか息が止まったように感じた。
そして何度も、自分の手を見返した。
夢じゃ無いのか、悪い夢でも見ているのか?と、何度も何度も自分に思い込ませようとした。
だが、目の前にある現実があまりにも深刻過ぎて、無意味だった。
自分の体は、あの時のような人の体では無い。死者の骨で出来た、ただの動く屍だ。
俺はその場に、壁にもたれこむような体勢で、地面に座った。
どうしたらいいのか、分からなくなってしまった。
そのまま五分ほど、時間が経った。
その時に、ふと思い出してしまった。
俺が小学生の頃の、あの日にしたことを。
それを思い返している時に、ふと自分に声をかけられたような気がした。
『お前はあの時に知ったはずだろ』
『過去を引きずり、一体何になる?』
『目の前の現実から、目を背けてどうなる?』
『何が変わる?変わる訳がない』
『ならば─────どうする?』
そんなのは知ってる………目を背かずに、今の現実を受け入れろだろ?
あの時のみたいに………
確かその時に、約束したからな。
もう過去ばかり振り返らないって。
再びそう決意した後、俺は座り込んでいる状態から、膝に手を乗せ、そのまま体を立ち上がらせた。
ここがどんな場所で、どんな世界かは知らない。
でも、俺はこの世界で、スケルトンとして生きてやるさ。
お久しぶりです。
五里川です。
あの作品の続きは、いまのところ考えています。
………すみませんでした。
気がついたらサボりグセがついてしまい、投稿できていませんでした。
まぁ…頑張ります。
以上、五里川でした。




