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006話 混迷

 マコトとつむぎはみんなを一か所に集め始めた。だが思った以上に時間がかかっているようだ。呆然と立ち尽くす者、泣き崩れている者、みんな大きなショックを受けている。


 早くみんなと合流したかったが、女神がこれからやろうとしている事を見てしまったら、この場を離れる事ができなくなった。

 再び人間を異世界に誘おうとしていたのだ。


 場所はやはり東京スカイタワー。今度はエレベータではなく展望デッキ。

 女神は俺のスマホの中に入ったまま、画面に展望デッキを映し誰を誘うか品定めをしている。


 大勢の観光客と修学旅行生がいるが、観光客には目もくれない。やはり狙いをつけているのは学生のようだ。


「あなた達みたいな学生はいいカモでーす。異世界に憧れがあるからホイホイ引っかかってくれまーす」


 今更だが、この女神マジで口悪いな……。


「この辺はみんな異世界行きを拒否した人達でーす」


 女神が「拒否した人達」と言ったその中には、俺と同じエレベータに乗っていて異世界への誘いに乗らなかったクラスメイトの姿もあった。どうやら、あの後エレベータは無事に展望デッキに到着したらしい。


 向こうでは今グループ行動の時間が終わろうとしているようだ。そんな中、その「拒否した人達」は展望デッキで景色を楽しんでいる訳ではない。

 女神の姿や、女神に誘われるまま異世界へ行った者を見てしまったのだ。

 クラスメイトの姿を探したりあるいはどうしていいか分からず、ただただうろたえるだけだったり、混乱している様が見て取れた。


 しかし、そこには他にも沢山の学生がいる。それがみんな「拒否した人達」というなら、女神は俺達の前にもこうやって学生を誘っていたのかもしれない。


「ここにはもう、この人しかいないみたいですねー」


 そして女神が目を付けた、たった一人の人物。それは――。

 つむぎと同じガキの頃からの付き合いで、一番の親友。


「アスカ!」

 集合時間が迫っているのに姿が見えない俺達を探しに来たんだろう。


 女神はアスカ一人に狙いを定めた。


「では、この人に直接……『あなたは異世界に興味がおありですか?』」


 アスカの持つスマホに自分の姿を映して呼びかける女神。女神は俺のスマホに入ったままアスカに呼びかけた。

 その時、異世界にいる俺とアスカのスマホが繋がった。


「おい、アスカ! 俺だ、カムイだ!」

 すかさずアスカに声をかける。


「割り込まないでくださーい」

 女神が軽い抗議の声を上げるが、かまわず話す。


「カムイか? 今、キミに電話してたところだ。やっぱり展望デッキじゃ繋がりにくいのか?」

 スカイタワーは展望デッキでも普通に携帯が繋がるようになってる。が、相手が異世界じゃな。いやそんな事はともかく。俺の今の状況をアスカに伝えなければ。

 だが俺より先にアスカが口を開く。


「カムイ、さっきウチの生徒が変な話をしてたぞ。

『エレベータの中で女神を見た』とか……」


「ああ、それな……それがさ」


「そして『その女神に異世界に誘われた』とか。

 まったく――みんなラノベの読みすぎだ」


「……いや……うん……」


「で、キミは今どこにいるんだ? 隣にいた女性は誰だ?」


「……とりあえず、なるべく人の少ない所に行ってくれ……」



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