粘り強い魔力
体の中心、心臓あたりから管が色々なところに行き渡っているイメージをする。そして腕へと繋がっている管に魔力を通す
腕をつたり手、指先へと流れて行き魔力がイメージした形となって現れる
「ふぁいあーぼーる!」
僕の人差し指から頭1つ分ほどの火の玉が現れ、次に的に向かって飛んでいく
ここで速度も魔力を込めれば早くできるけど的は動かないので最低限込める。ラエルさんに教わった魔力の効率的な使い方の1つだ
飛んでいった火の玉が的に当たり爆発する。そんなに魔力は込めていないから爆発の大きさは小さいが少しだけ熱風が僕の肌を舐めた
ピコン、と僕の横に40点とホログラムのような物が浮かび上がる
何か、ここだけ技術力おかしいよね
「リュウ様。今、ファイアーボールと言いながら撃ちましたが、今のは正確にはファイアーボールではありませんよ。それともわかってやったのですか?」
え?ファイアーボールじゃない?僕のイメージだとこんな感じだったんだけど何が違うんだ?
「えっと、いまのはちがうの?」
「はい。魔法本に乗っているサンプル魔法としてはこれが本当のファイアーボールです」
ラエルさんがファイアーボールを撃った
的に当たると爆発はせず、炎がブワッと一瞬広がるだけで終わってしまった
本当のファイアーボールってこんなにショボかったんだ。でもリアに見せてもらった絵本の勇者だとファイアーボールが爆発したって表現だったんだけどな
「ですが今のは少し面白いかもしれませんね。サンプルの魔法と同じ名前同じ見た目で全く違う効果を持たせるというのは。頭の柔らかい子供にしか思いつかないかも知れませんね」
思い付くっていうかただ間違えただけなんだけどな。まあ褒められてちょっと嬉しいけど
その後も2時間ほどいろいろな魔法を試してみた。ファイアーボールみたいにイメージと違ったというのはあんまりなかったけど
今日は攻撃魔法だけを使おうと思ってたから他の系統の魔法は使っていないけど大分充実した時間だった
そろそろ魔力が少ないぞと言う所でラエルさんに、授業に移ってもいいですか、と聞かれたから潔く終了にした。今日だけとか言うならまだ物足りないけど、これからはここに来たらいつでも出来るし楽しみは少しずつ消化していくタイプなんだ
「では授業をしたいと思います。今日は丁度リュウ様が攻撃魔法を使っていたので攻撃魔法の授業をしましょう。今からするのは『魔法の持続とコントロール』です。まずリュウ様が一番魔力の消費が少ないと思う魔法を発射しないで使ってください」
一番魔力の消費が少ない魔法かー。やっぱりゲームのイメージから火系統の魔法が思いつくな。一番最初にも使ってたしこれにするか
指先からピンポン玉くらいの小ささの火の玉を出した
「それですね。ではそれを5分間維持してください」
維持か。そんなこと今までしたことがなかったけどこれも魔力を伸ばすのに使えるのかな?それなら今度からずっと使っておこうかな。最近はやってないけど身体強化の魔法とかも今なら一日中使えるだろうし
何て考えてるうちに5分がたった
「では次にそれを増やしていきます。まず2つにしましょう」
火の玉を2つに増やしてまた5分間。今の所楽勝だけど、ラエルさんが意味ないことするはずないし大丈夫だよね
そして5分間がたち、また1つ増やした
だけどまだ何も感じない。少しずつ魔力は消費されて行ってるけど身体強化より減りが遅いし、これをやってる意味はあるのか?
疑問に思い始めながら4つ目、だが変わらず。そろそろこれの意味を聞こうとして5つ目を出したときにあきらかに違和感を感じた
何というか、指がもう一本生えたみたいな感覚で意識しにくい。だけど5分間はたった
そして6つ目、違和感どころじゃなく明確な負担を感じ始めた。だけどまだできる
7つ目、体から汗がどんどん出て来て息が走ってる時みたいに切れ始める
そして8つ目を作ろうとした時に1つ目が消えてしまい、それに連鎖して全て消えてしまった
「お疲れ様ですリュウ様。何故これをやらせたのか、分かりましたか?」
汗を拭いてもらいながら少しだけ頭を動かす。僕は今四つん這いで何とか倒れないような状態なので許してほしい
合っているかはわからないけどこれは魔力の筋トレとでも言うものだ。正確には脳かも知れないけど、持続力、集中力、コントロール、そして多分だけど魔力も多くなるようなトレーニングだ
「リュウ様の魔法を見ていて思いましたが、今圧倒的に足りないのは持続力と長時間の集中力です。魔力はこの歳にしては多いようですがこのまま伸ばすと何処かで必ず止まります。
これをすることによってリュウ様の魔力は粘り強い魔力になって行きます。今は実感できないかもしれませんが、もう少し続けるとわかるようになってきますよ」
何かプロレスみたいな話だな。でも今までこんなに疲労したことはなかったからそれは確かなんだろう
魔力枯渇で頭痛とかはした事があったけどこんな筋トレを限界までしたような感じにはなったことがない。だからあながちこの筋トレって表現も間違ってないと思うんだよね
「リュウ様、そろそろお昼の時間ですが食べれますか?」
そう聞かれて思い出したかのように僕のお腹がぐーっと鳴った




