LEVEL2
プロットってのを考えてないのでジョジョに文体が稚拙になり、シナリオが崩壊します。
昼間に捕まってから取調室に衛兵の中の真ん中くらいに偉い人と一緒に入った。衛兵も当然普通の人間では無く、口から天へと伸びる曲線の角を生やしている見た目が奇妙な感じである。簡単に言うとこの角に強面な顔が組み合わさって非常に怖い。
日本のドラマに出てくる取調室と内装は似ており、安物のテーブルに安物の椅子が一つ、そしてクッションの詰まった手を置くスペースのある豪華な椅子が一つ。俺は足を縛られているので屈強な男二人に安物の椅子へと誘導させられ座る。
取り調べを行う強面の男は豪華な椅子に深く座って肩の力を抜いて大きく息を吐いた。何ともまぁ心地よさそうである。
「よし、これから取り調べを行うゴルドだ。お前の名前は?」
「あ、えっと……その前に血を拭きたいんですけど……」
顔を洗わされず直接連れてこられたため、俺の額は血まみれでそこから垂れた血液によって衣服も所々が真っ赤になっている。普通は風呂なりシャワーなりさせてくれればいいものを。
足を組んで長考している所からそう言われる事を全く想定していなかったと見える。多分知恵を使わず力でのし上がってきた脳筋タイプだろう。
「んー……」
「血生臭い人間と話なんてしたくないでしょ? 普通」
「いや、別に良い。今はそんな事を考えてはおらん」
このゴルドという猪みたいな外見をした男は人の話を聞かないのだろうか。それにしても一体何を考えているのか皆目見当が付かない。まさかロリコン、とは認めてないが異常者は取り調べを受ける権利すら無いのだろうか。
牢屋なんて入った事が無い俺にとって人間の底辺が住まう所の想像はおぞましいものとなっていた。食事までの仕事中に殴る蹴るなどの暴行を受けるかもしれない。食事は豆類以外の料理を取られ、トイレに行く時は用を足しているのを見て笑われたり、一つ一つ思い付くだけで恐怖感がどんどん膨らんでいった。
「は、話を聞いてくれ! 誤解があるんだ!」
「分かったぞ!」
「ほ、本当ですか!」
「お前の名前はトングだな!」
「……」
いやぁ殴りたい。鼓膜が破れているんじゃないかと思わせるくらい人の話を聞かない。それとも一番最初にした質問に答えなかった俺が悪いのだろうか。でも取り調べをする人なら一つの質問に固執したりしないだろう。だから殴ってもいいかな。
山男のような行儀の欠片も感じられない笑い声を部屋中に響かせるゴルドに拳を必死に握り締めながら抑え、訂正を加えた。
「違う。イズル、俺の名前はイズルだ」
「そ、そうかそうか。イズルか。良い名前だ」
普通に褒められた事に満更でも無い表情を浮かべてしまった俺はすぐに本来の目的を思い出して首を左右に全力で振った。頭部の血液が無いのに無理をした事で余計に目の前が混乱してきたが視界が狭くなった訳ではない。
机を叩き、真剣な面持ちで俺は弁解を試みた。
「ゴルド! 話を聞いてくれ!」
「おうとも!」
「俺は幼女のパンツを覗こうとなんてしてない! あれは俺の地域に伝わる謝り方なんだ! だから周りからはパンツを見るような光景に見えただけなんだ!」
「ほぅ……?」
遮られない。何だろう、この清々しく言葉を言える素晴らしさは。人に伝える重要さ、そして楽しさ、この二つをより深く知れた気がする。
自信のある弁解にゴレアは一つ質問をしてきた。
「あの少女を見た時、お前は即座に可愛いと言ったようだな? お前の地域独特の謝罪方法をしたとしても少女に対して可愛いと思ったなら立派な動機になるぞ」
一番痛い所を突かれた。だがこの男みたいに一つの事しか考えられない人間では無い。一手二手先を読まなきゃすぐにゲームオーバーだ。この状況を打開するには根本的な場所を否定するしかない。
「……勘違いしているな。ゴルド、お前は壮大な勘違いをしている!」
「な、何だと!」
「俺が好きなのは幼女じゃない、俺が好きなのは……」
ゲーム内なら平然と嘘が吐けた。相手に俺の姿が見えてないから面白いキャラになろうが気持ち悪いキャラになろうが関係無いからだ。でもここは異世界、ゲームとは全く違う。ここで発言して牢屋から出られる可能性のある言葉は二つ。一つは熟女好き、もう一つは自らをホモと告げる。
他にも考えれば幾らか出てくるかもしれないが後者は死んでも言うつもりは無い。前者を言えば少なからず釈放される可能性はある。だが喉元からその言葉が出せない。何が俺の邪魔をするのか、それは分からない。今はゲームだと自分の脳を誤魔化して言おうとしている。今の俺なら女の子に真顔でラブホに誘う事だって容易だ。
なのに口から出ない。
「どうした? 何が好きなんだ? 気になるだろ」
「じゅ……じゅ……ほ……」
危ない、ホモと口を滑らせる所だった。
咄嗟に口を塞いだ。悔しさに歯ぎしりをし、片方の手で机を叩き付けた。だがその拳は一度で止めた。これ以上叩けば未来が無いと確信が持てたからだ。鞘から剣を引き抜く寸前まで来ていたゴルドの手が止まった事を目視すると、俺は口を塞いでいた手を離して覚悟を決めた。
自分を偽る事で傷付く者なんて誰も居ない。ただ熟女好きと言うだけでもう一度あの美少女3人に会えたり幼女に正式な謝罪をする事だって出来る。一石何鳥になるかは明確ではないがメリットしかない事は事実だ。
睨むようにゴルドを見た俺は倒れない程度に前のめりとなり、大きく口を開いた。
「俺は! 俺はぁぁぁぁ!」
「言ってみろ!」
「熟女が! す―――――」
「お兄ちゃんを出してあげて……!」
ドアの向こうから耳に届いた聞き覚えのある声に俺は偽りの言葉を止めた。そして天に向かって己の心の底に縛っていた本音を吐き出した。
「熟女なんて糞喰らえ! ノー熟女、イエスヤングウゥゥゥゥマン!」
ロリコンでは無い。俺もまだ15歳だ。40過ぎたおばさんを恋愛対象に入れる事なんて人がリバースしたものを顔に浴びるより御免だ。それに俺の発言は別に何もおかしくはない、ただ土壇場で3つ目の選択肢を開放しただけだ。
俺の発言を真に受けたゴルドは剣を引き抜き、俺に向けてくる。どうやら今の発言の意味に気付いてないようだ。斬られる前に全てを終わらせてみせる。
「やはり……期待したのが無駄だったか……」
「何を言ってるんだ? 俺の言った事がおかしかったか?」
「当たり前だ!」
「じゃあ質問だ、歳が15の俺は若い女の子を恋愛対象に入れたら駄目なのか?」
「なっ……!?」
正直迷走していた自分も馬鹿なのだが、俺は15歳である。未成年の俺が若い子を好きになる事は至って普通の事である。朝食の後に歯磨きをするくらい普通の事だ。
それを問答無用で斬りつけてきたとなればゴルドもタダでは済まないだろう。しかし俺もこの先の展開を予想出来た。若い子が好きだと公言した俺は年齢上の問題は解決した。だがそれと同時に動機が見事に復活を遂げたのも揺るぎない事実だった。
「……ん? ならお前は幼女のパンツを見ようとしたのだな? 動機を認めたのだからな」
「それとこれは別問題……じゃないよな?」
「あぁ……今すぐ牢屋に入れたい所だが……」
ゴルドが耳に手を当てて何やら頷いたりしている。でも今はゴルドよりあの声の主が気になってしまった。お兄ちゃんを出すって誰の事なんだろうか。俺の事なら抱きしめて感謝の言葉を30通りほど言うんだけど流石にそんな都合のいい話は無いだろう。でもここまで奮闘して牢屋エンドなら天から見ている神様も苦笑いくらいはしてくれてると思う。
自分で墓穴を掘ってしまった哀れさに笑い、椅子に再び座り目から落ちる止まらない雫を拭きもしなかった。異世界に来たなら冒険者になったり魔物と戦ったり楽しい事をしたかった。
泣きながら笑う俺にゴルドは剣を鞘に収めると、膝を曲げて縄を解いた。手足が自由になった俺はゴルドの行動の真意が理解出来ず涙目になりながら顔を上げた。
「釈放だ、例の女の子が迎えに来てるぞ」
「おんな……のこ……?」
「ほら、さっさと行け。牢屋に入れるぞ?」
「あ……はい……」
女の子、思い出せる範囲で行くと金髪幼女と美少女3人に変な目で見られた母親に一番最初に声を掛けられた巨乳老婆。数少ない中から二つほど除外して俺を助けてくれた慈悲深い女の子の元に行くため椅子から立ち上がった俺はドアを勢いよく開いて出口に向かって走った。
久々に走って周りから見たら汚い走り方になっているかもしれないがそんな事を気にしてはいなかった。ただ一言、感謝の一言を跪いて伝えたかった。そのためだけに俺は全力疾走していた。
そして出口前の扉に手を当て、押し開いた。この先には命の恩人がいる。隙間から微かな光が差し込み、その幅が大きくなるほど外の景色がハッキリと見えてきた。
虫の臭いがするこの扉を開けた先には数時間前に見た街並みに外の空は雲に絵の具で落書きでもしたのか、幻想的な茜色が夕方を知らせてくれている。
扉から手を離して俺は少しずつ目線を下ろしていった。最後に目先に溜まっていた残り雫を拭き取って目の前を見た。そこには輝く金髪を靡かせながらそっぽを向いて指を絡めながら身体を揺らしているあの少女がいた。
それを見た俺は不覚にも笑ってしまった。
「クッ……ハハッ!」
「え……えっと……」
「ハハッ……ハハハッ!」
「ごめん……なさ……」
「ありがとおおおおおおおおおお!」
ロリコンでも何でもいい。でもこの子が頑張って俺を助けてくれたという事実は変わらない。幼女を抱いた後、クルクルと何回転も回って回って、延々と回り続けた。その間笑いながら頬ずりをしてくる俺に少女は困惑しながら何か話そうと必死になっていた。
「ふにゅ……! にゃ……にゃん……」
「い、き、て、る、ぞぉぉぉぉ!」
「……加速」
少女が何かを言ったと思ったら俺の回っていた速度がさらに増し、その場に全身を包み込む竜巻を作り出すほどの速度にまで達していた。三半規管が限界を迎える所で俺は無理矢理止め、視界が定まらない中、縄が垂れている井戸を見つけるとその場まで駆け込み、顔をその井戸の中へ入れて口から見せられない液体を大量に吐いた。
そして速度を上げた張本人である金髪の少女も井戸の取っ手に顔を固定して俺と同様に吐き出した。
吐き続ける中、俺は自重という言葉を思い出し、それを今日から心がける事を神に誓った。