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Q.『凡龍は平凡な日常を楽しめるか』?  作者: 虹乃夢見
“普通”という事情は何時でもそこにある
8/24

『師匠!』 『いや、親方は隣だけど!?』

 結局、あの後は蟻から毒針を手に入れられなかったけど、その代わり蟻王狩りという貴重な体験ができたので良しとする。


 「あ、コモン君やっと来た!」


 素材を買い取って貰おうとブリギットさんのいる露天に出向いた所、丁度彼女から呼び出しが掛ったのだ。

 生産職目指している身だし、そういった報告があってもおかしくは無いか。

 ブリギットさんが手を振る先には見慣れない人(新人プレイヤー)が居た。

 うーん…幼さが消えてない所を見ると中学生あたりかな?

 基本的に『CVO』って十三歳から始められるから、多分そうなんだろうね。

 プレイヤーの名前はタルワールという少年で、武器を作りたいがために『CVO』を始めたと言うのだ。

やったね、職人がまた一人増えたよ!


 「それで、素材の一部をタルワール君にあげたいんだけど、どうかな?」


 「良いんじゃないかな? でもタダじゃ駄目。取敢えず半額の値段で売ってあげるから、それを買い取って」


 これも商売だ。

 例え今日始めた初心者相手でもでも無料タダで「はい、あげる」なんて偽善者(お人好し)の真似は絶対したくは無いし、譲れない。


 「それに今の僕のストレージにある素材はさっき森で手に入ったばかりの貴重な素材で一杯だ。それを考えると、半額の値というのは充分破格の値だと思う」


 こういった交渉は、凡人故にどうも苦手だ。

 やるなら手っ取り早く、しかも自分も含めて相手方にも有利に事が進む様に。


 「取敢えず、手に入ったっていう素材を見せてくれる?」


 「良いですよ? 丁度納品したい品もありますし」


 そう言って、彼女達に見せた。

 蜂・蟻素材にと黒曜石、それから作成した回復藥ポーション類。


 「後、兎と犬の皮を」


 肉と骨は全て此方に回すため、出さずにしまっておく。


 「こんなに沢山…」


 「ポーション類はブリギットさんに納品として買い取って貰うとして、問題は蟻と蜂素材」


 「黒曜石オプシディアンは?」


 「好きな様に使ってくれて構わない…ていうかこれは流石に超格安で提供します」


 「あら、そうなの?」


 「元が元ですから」


 大量に仕入れられますしおすし。


 「全部買い取れ、なんて言わないけどスキルの成長のために少し多めに買っておいた方が良い。今の僕でさえ扱えるかどうか、と言った所だしね」


 昨日作成した武器は、完成する事が出来たのは運が良かったとしか、良い様が無い。

 それ程モンスター素材は金属より扱い辛いのだ。

 うーん、トップを地で行くプレイヤーならば既に鉄製の武具を手にしているかもしれないケドさ、今はこれが精一杯。

 というか二日目に何を期待してるんだろ、僕ってば。


 「料理人、薬師に農民目指してる人が居ないのはどう見てもマズい気がするのは僕だけかな?」


 「何言ってるのよ。私も同じよ…ていうか皆NPC頼りにし過ぎ! もうちょっと職人PPCに目を向けなさいっての」


 愚痴交じりに叫んでいるが、確かに何でもかんでもNPCに頼りきりはいけない。

 NPCとの信頼は大切だろうが、それでもPPC同士の信頼を忘れてる気がする。


 「取り敢えず、薬師が来るまで僕が代わりを務めるとして、タルワール君は…」


 「俺…僕はNPC鍛冶師に弟子入りしようかと思ってます。流石に一から作るには基礎や経験値が足りなさ過ぎますし」


 弟子入り…か。

 曲りなりにも生産者まがいの事をしているからね、気が向いたらしようかと思う。

 尤も、それじゃあ遅すぎると言われるかもしれないけど、気にしない。

 “凡人”だもの。

 あ、逃げたなこいつとか言ったら“普通”に嬲り殺しますよ?


 「所で、今後の予定とかある?」


 「これから僕は丸薬に代わる回復アイテムを量産しようかと」


 「僕は鍛冶職人捜すとこから、ですね」


 「だったら僕が紹介してあげようか?」


 「助かります」


 「私も、今日はお店畳んで素材の加工でもしておくわ」


 「んじゃ、今日はこの辺で解散という事で」


 「では、一緒に工房までお願いします」


 僕等は露天市場から暫く歩いて『アムネシア』という工房の前に来ていた。


「おう、坊主今日はどうしたんでぃ?」


 出てきたのは一つ目巨人キュプロクスの大男。

 名前は『ガンテツ』といい、主に鍛冶師を育成している職人でもある。


 「今日は調理部屋を借りに来ました」


 「珍しいな。何か美味いモンでも作ってくれんのかね?」


 「まぁ…或る意味で、ですけど」


「そうか」


 「それと…彼、『タルワール』を弟子として取ってくれませんかね」


 「ふむ?」


 「実は――――」


 甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸


 「成程、最近の冒険者が狩る事にしか目が行っていねぇんで、同郷の、しかも職人を本気で目指すそいつを俺に預かって欲しい、…と」


 「その通りです」


 「そうか――――良いぜ? 本気で良いモンを作りてぇってんなら、俺ァ応援してやる。着いてこれるか?」


 ガンテツさんはタルワール君に視線を向けると、にやりと不敵な笑みを溢した。


 「…! へい、宜しくお願いします、親方!」


 「良い返事だ!」


 「んじゃあ俺はこいつを鍛えに行くからよ、好きに使ってていいぜ?」


 「有り難うございます」


 「其処の嬢ちゃんは、どうするんで?」


 「皮とかの加工に…」


 「なら向こうに細工師用の部屋がある、そこを使え」


 「「ありがとうございます!」」


 二人と別れた僕は、部屋に入ってすぐに骨をスキルでゼラチンに変えた。

最初に乾燥させて粉末状にしたララクラフト草とハッカッカ草と、ミルクルの実から出た果汁とナナバの実を混ぜた回復薬を作成する。

 次に、オレ=オレジナの実を切って絞り、濾して果汁100%のジュースを作り、湯せんで温める。

 調理部屋に有った油を買ってきた型に薄く塗って砂糖を混ぜたゼラチンと、オレジナ果汁と少量のポーションを加えて冷やして固める。


 ○オレジナグミ…オレ=オレジナの実を使用したグミ、甘酸っぱくて美味しい。

 ポーションを少量仕込んでいるため回復量が向上している。

 品質C

 HP20%回復 満腹度0.5%回復


 良い物が出来た。


 一応ポーション抜きのグミを同時に作っていたのでこれも確認してみる。


 ○オレジナグミ…オレ=オレジナの実を使用したグミ、甘酸っぱくて美味しい。

 品質C

 HP5%回復 満腹度0.5%回復


 何と15%の差が出た。


 色々試してみるか。


 ○ポーションジュースグミ…ポーションジュース100%のグミ。

 美味しい上に健康に良い。

 品質C

 HP15%回復 満腹度0.5%回復


 何と、なんちゃってオレンジグミと0.5%の差であったか。


 序でにこれも作った。


 ○ハッカッカグミ…ハッカッカ草を使用したグミ、爽やかな感触が気分をすっきりさせる。

 品質C

 状態異常・『混乱コンフュ』を回復、数分間の『睡眠スリープ』耐性(微)を付与 満腹度0.5%回復


 HPとMP回復は付かなかったものの、状態異常と抵抗に効果が有ったのは嬉しい誤算だ。

 面白序でに、こんな物も出来てしまった。


○ オレジナ飴…オレ=オレジナの実を使用した飴、柑橘類の甘酸っぱい味が口一杯広がって美味しい。

 ポーションを少量仕込んでいるため回復量が向上している(※虫歯に注意)。

 品質C

 30秒でMP5%の回復(MP20%回復) 満腹度0.2%回復


 MP回復!

 満腹度は下がったのは痛いが、MP回復は優秀だ。

 括弧の中は噛み砕いた時の回復量だろう。

 注意書きも虫歯とか……中々リアル染みているのが地味に恐い!

 此処まで拘らなくて良いよ、とツッコミたくなったが、我慢だ我慢。

 ポーション抜きのオレジナ飴もグミと同じ様な回復量を誇っていた。

 また、ハッカッカ飴は、何と睡眠耐性(小)へと変わっていた。

 しかも、『大声』スキル等のハッキリ言って喉を確実に傷めそうなスキルには若干の効果を向上させる効果まで追加されたのは何気に凄い。

 もう喉飴認定した方が良いんじゃないのかな?

 でも果物が少ないのが残念だ。

 出来れば林檎、葡萄、桃、鳳梨、檸檬味なんかが欲しい。

 そうなるとミックスグミ、ミックスキャンデーと色々やりたい事が増えてくる。

 どうやら僕は武具作りより、こっちの才能が高めの様だ。

 やったね、主夫への道がまた一歩開かれたよ…って何言ってるんだろ?

 問題はもう一つの食材だ。

 蜂の子。

 これは乾燥蜂の子(かんぶつ)止まりのままである。

 今は醤油もお米も無い。

 仕方ない、こればかりは保留という事にしておこう。

 でも、ポーションにしてもグミ、飴はヒット間違いなしだろう。

 でもその前に、その内需要が過多になって供給が追い付かない未来しか思い浮かばないぞ?

 それで良いのか、戦闘職の皆さんや。

 うーん、もう暫くは僕等の様に新規ユーザーに委ねるしかないのか。

 それはそれで実に嫌だな。


 甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸


 調理部屋から出ると、そこにはブリギットさんの姿があったので声を掛けてみる。


 「あ、コモン君。貴女から貰った素材で色々と加工してみたら『加工術』と『細工術』がかなり上がったわ」


 「へぇ、凄いじゃん」


 特に蜂と蟻の素材が大きい。


 「モンスター素材と言えば…そうだ、そう言えば魔物の骨は『鍛冶』スキルで加工できるみたいだよ」


 「ホント!?」


 「う、うん。昨日の夜に完成したんだけど」


 ストレージから作成した『骨刀』を取り出した。


 ○骨刀・凡骨丸ぽんこつまる…魔獣の骨を鍛え上げて作られた太刀。

 ・――――唯の骨にだって共に戦いたいと願う意思があるんだ!

 品質C+ ATK+45 耐久値120%

 【チェインブースト】斬戟コンボが発生する度にダメージ上昇(微)とクリティカル率上昇(微)


 「何…これ……」


 作成した武器を見るなり彼女は眼を剥いて絶句してしまった。

 ……普通に考えればそうなんだよね。

 特筆すべきは効果にあると言って良い程、優秀なのだ。


 「これ、実は密かにタルワール君に仕立て直して貰った方が良いと考えているんだけど」


 「私もそうした方が良いと思ってる」


 これについては彼女も納得してくれた。


 「ハッキリ言って僕には必要ない物だし」


 初期装備が優秀すぎて、無用の産物になってる感が否めない。

これはタルワール君に参考品という形で納品した方が彼のためでもある(と予想)。

 空気が重くなってしまったので、今しがた出来た新作回復アイテム(グミと飴)を納品した。

 ブリギットさん、これについて後で聞いた話だけど、確認した時思わず胃の中がひっくり返りそうになったと供述していたりする。

 でも、美味しいのでついつい摘み食いをしてしまってたりする。

何時の世も、食欲には勝てないって事か。

定番ポーションの先に存在するのはお菓子でしたとさ。

そしてグミが回復薬、察しの良い良い人は気付いてる筈←


因みに解っている人が大多数を占めますが一応ルビを振ると林檎(りんご)葡萄ぶどう鳳梨パイナップル檸檬れもんこうなります。

桃に関しては何も言うまいよ…。



 Name   :コモン

 Sex    :男性

 Race   :凡龍ノーマライズドラゴン人化形態ヒューマノイド・フォーム

 

 HP     :100%

 MP     :100%


 Weapon :凡剣・日常茶飯事Ⅰ(11%)

 Head   :凡龍兜・頭吉1

 Bady   :凡龍鎧・義胸1

 RArm   :凡籠手・右京1

 LArm   :凡籠手・左京1

 Leg    :凡龍脚・脛雄1

 Acce   :凡龍環・厳首1

 

 Title  :【平々凡々】

 

 Skill  :『武闘術』Lv5 『平凡化』Lv4 『行動制限解除』Lv5 『発見眼』Lv6 『鍵人』Lv1 『趣味術』Lv16 『龍言語』Lv1 『龍魔法(無)』Lv3

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