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Q.『凡龍は平凡な日常を楽しめるか』?  作者: 虹乃夢見
“普通”という事情は何時でもそこにある
6/24

『やってみたら普通に面白かったって言うのは自分だけ?』

 昼食を終えてログ・インした現在の時刻は十二時五十二分。

 さて、行動を開始しよう。

 行く先々で薬草と毒草の採取に薪と黒曜石を拾っていく。

 果実系は後回しにする。

 途中グラスビーを発見したので、隠れて追って行くと地面に開いた拳大程の穴を発見。

 半龍化状態にして全身に鱗を包ませるとアビリティ『龍之威圧ドラゴンプレッシャー』を発動させて地中に居る蜂を気絶させる。

 羽音が完全に聞こえなくなったのを確認してから素早くスコップで地面を掘って行くと巨大な巣を発見した。

 現在進行形で気絶してるのか、痙攣しているので素早く首を捻じ切り落としていく。

 『龍之威圧ドラゴンプレッシャー』の効果が切れそうになったので再び掛けて捻子切る作業を十分程繰り返して最後の成虫を殺すと素早く巣をストレージに放り込み、堀り起こした土を戻してその場を退散する。

その後はスライム狩り。

 特に必要なのは体液の方でこれが大量に無いと困るのだ。

 一通り狩った後、街に戻って工房に作業場を借りると、初心者鍛冶キットをストレージから取り出した。

 用意するのはグラスドッッグの骨、グラスラビットの骨、グラスバードの骨と、スライムの核に体液。

 まず最初にスライムの核を砕いた後に擂鉢で細かく砕いて行く。

 水槽の中を冷やしたスライムの体液で満たして準備は万端だ。

 さて、次に床に火種を入れて火を起こして、手押し鞴で温度を調節した後、轟々と熱っせられた炉の中に箸を使って骨を入れる。

 モンスターの骨は普通の動物の骨とは違って鍛錬が可能となっているみたいで、ちょっとやそっとでは駄目にならないのは嬉しい限りだ。

 おっと…骨が赤くなってきた所で砕いたスライムの核を繋ぎに初心者の金鎚で鍛えていく。

 骨なので水減しや摘み沸かしといった工程は簡略化されてしまうのは勿体無い気もするが、要らん工程を加えて失敗するよりひたすら打ち続けている方がよっぽど効率は良い。

 或る程度鍛えた所で、先を斜めに切り落として切っ先を打ち出していく。

 そして刃の部分を打ち出して冷ます。

 それから鑢等で平面にしてやってから炉の中に突っ込んでやる。

 刀身が赤らめた辺りでスライムの体液で満たした水槽に鍛えた刀身を入れて焼き入れを行ってやる。

 ふう、さて作業は終盤に突入だ。

 刀身の歪を直して、全体を整えてやり、砥石で刃を砥いでいく。

 本来なら砥ぎ師に頼みたい所だが、職人プレイヤーが実質彼女一人(ブリギットさんだけ)なので負担を減らすために自分だけで丹念に砥いでいくしかない。

 軽量化のために樋掻きをし、銘切りを施して、(なかご)にサラシを巻いていって、刀身はほぼ完成した。


 「出来た…」


 工程が省けた分、早く終える事が出来たのは僥倖だけど、初めて鍛冶を経験したので気が滅入る思いだ。

 片付け終わった所で時刻を確認すると午後五時を回って残り十五分となっていたので、落ちる前に各種取り付けるための小さなパーツの作成をNPC鍛冶師に依頼。

 宿屋に急いで入ってログ・アウトを行った。


 甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸


 再びログ・インした僕は、ブリギットさんの所へ向かって予め頼んでおいた兎革の一部を購入すると工房に籠る。

 初心者鍛冶キットを買ったNPCの経営する店で、序でに購入した特殊な薬を塗布した。

 こうする事によって、刀身を長持ちさせる事が出来る訳だ。


 続いて鞘、鍔、(つか)の作成に、NPCに依頼して作って貰った目釘、(はばき)の組み立てに取り掛かる。

 柄・鍔・鞘は蜂素材を加工する。

 骨と違って鍛えなくても十分な硬度があるので特殊な液に浸して乾燥させる。

 完全に乾ききったらまた漬けてを五回程繰り返してから本格的に加工していく。

 甲殻、とも見て取れる蜂の体をコツコツと慎重に削り出していく。

 足りない部分は工夫して継ぎ足しながら刀身に合わせた長さにしていったけど、これがまた妙に苦労した。

 最初はレベルが低かったせいで失敗続きだったけど、スキルレベルが10になった所から何とか様になってきたのだ。

 但し、油断してると普通に失敗してしまうので慎重に。

 完成したので、組み立てる前に薬に漬け込んで乾燥させてから、繋ぎ合せていく。


 「やった!」


 遂に完成した。

 長かった…。

 生産者、という(がら)じゃないけど、元々職人が少な過ぎたせいで作らざるを得なかったのが正直な所である。

 それでも初心者の僕が完成まで漕ぎ着けられたのは(ひとえ)に素材の魅力に取り憑かれたお陰なのかもしれない。

 その後は調子に乗って、薬草と果実を合わせた回復薬ポーションを作ってしまったのは言うまでも無い。

しまった、と気付いた時には朝の六時半を過ぎていたので急いで宿屋に向かってログ・アウトする羽目になってしまった。

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