『突っ走れ!』
「それにしてもコモン君、初期装備にしては変わってるのね?」
「解ります?」
「珍しい形だからね」
「…珍しいんですか?」
うーん…鏡とか見ていないから良くは解らないけど、彼女が言うからには普通に珍しいんだろう。
そう思わないと駄目な気がするけど、まぁ良いか。
武具を作ろうにも、初期装備の性能が良いので無意味に思える。
ここは無難にポーションやアクセなんかの小道具を作成してた方が良いだろうな。
料理なんかもいいだろう。
流石に味は本職じゃ無いので普通にそこそこなんだけど。
満腹度メーター、なんてものがあるかもしれないので取得しようと思ったけど、『趣味術』スキルが、その代わりを発揮してくれるらしく取るのを止めた。
ブリギッドさんにそれを言ったら眼を限界まで見開いて、驚愕していた。
いや、貴女でも驚くんですね?
彼女の驚く顔を見てこっちも驚いてたら肘鉄を食らったのは頂けなかった。
脇腹、痛いんだけど。
愚痴っているのもどうかと思ったんで小型のスコップと草刈り鎌、それと砥石を購入して街を出る。
トップを目指しているつもりは無いけど、何時までも街中に居るのは普通につまらないのなんのって。
言わば退屈凌ぎって所。
門を潜り抜け、草原フィールドを移動していると兎を発見する。
『発見眼』で見て見るとその詳細が解った。
【グラスラビットLv1】
HP100%
MP0%
草原に生息する魔兎
説明文短っ!?
いやまぁ、初心者様に調整されているとはいえもうちょっと欲しい。
試しに剣で斬ってみるとぱぁっと一瞬にしてポリゴンの光と消えてしまった。
呆気無い、呆気無いぞ兎!
手に入れたアイテムは以下の通り。
○グラスラビットの毛皮×1
○グラスラビットの肉×1
○グラスラビットの骨×1
泣きそうになったが、骨と肉が手に入ったから良しますか。
暫く草原で兎と犬と鳥を狩った後、森の中で散策してみる。
モンスターに関しては相変わらずのラインナップだったけど、蜂とスライムが追加されていた。
というか虫に関しては蜂しか出てこない。
個人的には蟻とか、植物のモンスターが出てきて欲しいのだけれども、高望みは良くないので考えるのを諦めた。
でも手に入るドロップは普通に手に入る部類としてはどれも良い素材だ。
特に蜂の毒針に関しては最高で、隠し武器や鏃に使用すれば効果が見込めると思っている。
後は薬草・毒草・食材の宝庫だったのは僕にとっては嬉しい誤算で、これだけあればまずは餓え無い。
○グラススライムの核×15
○グラススライムの体液×15
○グラスビーの顎×22
○グラスビーの毒針×11
○グラスビーの甲殻×11
○グラスビーの巣×1
○グラスビーの蜜×5
○グラスビーの子×8
○ララクラフト草×56
○ア・ブラ草×68
○ナナバの実×34
○ミルクルの実×8
○ハッカッカ草×4
○ただの枝×100
○ただの枯れ木の一部×2
○拳大の丸い石×3
○大きな黒曜石×4
○黒曜石の欠片×27
これだけとれば大漁…大猟だろう。
所で今自分はどうなっているんだ?
メニューを開いて今の状態を確認してみる。
Weapon :凡剣・日常茶飯事Ⅰ(11%)
Head :凡龍兜・頭吉1
Bady :凡龍鎧・義胸1
RArm :凡籠手・右京1
LArm :凡籠手・左京1
Leg :凡龍脚・脛雄1
Acce :凡龍環・厳首1
Title :【平々凡々】
Skill :『武闘術』Lv3 『平凡化』Lv2 『行動制限解除』Lv3 『発見眼』Lv4 『鍵人』Lv1 『趣味術』Lv1 『龍言語』Lv1 『龍魔法(無)』Lv2
順調にスキルの方は上がっている。
しかし、解せないのは武器の方で何故か(11%)と表記されていた。
変な事もあるもんだ。
けれどもこういうのって大抵…。
そう思って剣を見て見ると予想通りの答えが有ったのだよ。
その結果がこれ。
○凡剣・日常茶飯事Ⅰ【片手半剣】
・凡能力が形となった剣、鍛錬と熟練度を重ねる事により成長し、そして進化する。
成長する所かレア度も上がりそうだな、おい。
初期装備にして破格の性能なのは良い事である。
しかも耐久力は無いから壊れない。
防具にしたって同じ事。
買い替える事が無いって言うのは懐に優しいし、嬉しい。
オシャレのセンスは下がりそうだけど…そこは気にしない方向で。
取り敢えず戻ろう。
蜂の子をひとつストレージから取り出すと、口の中に放り込みながら森を抜けて街へと急いで戻って行った。
甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸
「はい、素材」
街に戻った僕は狩った獣の皮、蜂蜜と蜂の子を抜いた蜂の素材(それでも一部は抜いた)を見せた。
「と、言われてもねぇ」
食材系と薬剤系は抜いてはあるのだけれども、その多さにブリギットさんは困惑そうな表情で顰めてた。
それでもスキルのレベリングに必死なトッププレイヤーの面々はこれ以上を所持しているかもしれない。
或いはNPCの職人に素材を渡して強化か作成を施しているのかもしれない。
それを踏まえると、生産系のスキル持ちのプレイヤーにとっては有り難いレベリングアイテムとも言える。
ネトゲでもそうだけど、生産スキル無しでゲームを進めるって普通に不可能だと考えそうなもんなんだけど。
「……凡人の僕でも理解できる事なのに、ロマンが無いね」
一応僕は『趣味術』で作る事が出来る。
本職には一歩及ばないだろうけど、その分幅広く想像力を形に出来易いし、どツボに一旦嵌れば本職にも負けない様な力作を作れたりするのだから中々侮れないスキルだったりする。
「それにしても、僕以外のPPCが来ないのは辛いね」
「そうね。おねーさん、寂しい」
わざとらしく誘う様な口調で見つめてくるのだけれども、僕の容姿はどちらかと言うと少女だったりするので、反応に困る。
というか舌打ちしないで下さいよ。
「そういえば調合用のとか、料理用のキットって扱ってる?」
「駄目。βの時はほんのちょっと売ってたけど、売れ行きはほんの僅かで、今日の正式サービスを機に辞めちゃった」
おお、何と勿体無い事だ。
ロマンを求めてやって来るPPCの、残念そうな表情を思い浮かべる度に夢を諦めて辞める人が続出しかねないぞ。
ふぅむ…さて、どうしたモンかね…?
考えると余計に空きっ腹になりそうなのでストレージからグラスビーの子を一匹取り出して頬張る。
これがまた意外と美味しいのだ。
リアルでも蜂の子は貴重なタンパク源であり、中には高級珍味として売られていたりする。
今回は蛹が無かったけども、油で揚げると美味しそうだ。
蚕の件もあるし、何時か食べてみたい。
(幼虫とはいえ)美味しそうに虫を食べる僕を見て真っ青になっているブリギットさんの表情を堪能した所で買い取りの交渉を始めた。
革は一度全て買い取って貰い、加工された一部を買い取る約束をする事に決まった。
皮をなめす技術なんて材料が不足…して無くも無いが本職である彼女にやって貰う事にした。
一通りやりたい事が終わったので街の散策をまた初めて見るかな?
運良く初級採取キット、初級調理器具に初級錬金・調合キット・初心者鍛冶キットを購入。
これからじっくり仕事に取り掛かりたいと思っていた所で丁度お昼の時間になってしまった。
名残惜しいが、現実世界で餓死するのも嫌なので宿屋に入ってログ・アウトしたのだった。
Name :コモン
Sex :男性
Race :凡龍【人化形態】
HP :100%
MP :100%
Weapon :凡剣・日常茶飯事Ⅰ(11%)
Head :凡龍兜・頭吉1
Bady :凡龍鎧・義胸1
RArm :凡籠手・右京1
LArm :凡籠手・左京1
Leg :凡龍脚・脛雄1
Acce :凡龍環・厳首1
Title :【平々凡々】
Skill :『武闘術』Lv3 『平凡化』Lv2 『行動制限解除』Lv3 『発見眼』Lv4 『鍵人』Lv1 『趣味術』Lv1 『龍言語』Lv1 『龍魔法(無)』Lv2