『ちょっと、説明してもらいましょうか?』
※未だ短い文章が続くのかよ、というツッコミは無しで
「……眠い」
――――普通に眠い。
他の人から見たら『非常に眠い』が普通の表現だけれども、僕の場合は普通にそうじゃない。
欠伸を噛み殺して黒板を見てるけど、雑音を忘れる程眠い。
ま、暇を持て余しているかの様に退屈である、というのが妥当な表現かな。
兎に角眠い。
途中当てられたけど、全部出来た…それまで上の空状態だったのは普通に否定しないけど。
何のアクションも無く、只通り過ぎていく時間は訪れ、解放された自由に則って淡々と歩みを進めていく。
帰宅部、故に解放感の効果は凄まじい。
「さて、と」
食事も済んだ、お風呂も入ったし、宿題も済んだ。
ベッドに備え付けられた布団に包むと、新品同然のバイザー型のヘッドギアを装着して目を瞑る。
「ログ・イン」
さぁて、と…そろそろ夢を見に旅立つとしますか。
甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸
瞳を開けると、そこにはただ荒野が広がるのみ。
僕の他に誰も居ない。
何時も通りと自らに言い聞かせながら、メニューからステータスウィンドウを開く。
「ようこそ、『Complete Voyage Online』の世界へ」
機械的な言葉が脳内に響く。
鬱陶しいが、やるべき事を為さなければ当然ゲームは出来ない。
名前を入力。
“平凡”を強調したいので『Common』と入力する。
勿論僕は男である、よって性別の欄に男性と入力。
種族は何が出るか解らない(主に人間性で選ばれるのだが)ランダムで。
スキルも同じ様にランダムに振ってみた。
【全ての入力が終了しました。コモン様の新たな旅立ちを祝して、アイテム一式を贈ります。それでは、『Complete Voyage Online』の世界をお楽しみください】
機械的な声と同時に周りの景色が真っ白に塗り潰されていった。