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Q.『凡龍は平凡な日常を楽しめるか』?  作者: 虹乃夢見
“普通”という事情は何時でもそこにある
19/24

『;じ・おーでぃなりぃ・でいず』

現実世界でのひとコマ、入りまーす(キリッ

 目が覚めたから時計を確認してみると既に昼の二時を回ってた。

 『現実世界での空腹による一時的な強制ロクアウト』とか…。

 結果的に倒すのが間に合ったのは良かったけど駄目だなぁ、マジで熱中し過ぎてたみたいだ。

 …何か食べよう。

 リビングまで足を運ぶと、妹がソファで寝っ転がってテレビを見ていた。

 だらしない格好だったから小突いたら「ふぎゃ!?」と変な声を出してきたから更に薄い週刊誌を丸めて顔面にぶち込み追撃を行う。


 「あーにぃーきぃー。酷いってー」


 「誰も居ないからと無闇に尻を見せるな。色気無しても知らないし」


 「ちょ…何見てんのよ!?」


 「成程。天下の妹様はお仕置きされるのが大好きで仕方が無いM…と」


 威圧を込めた満面の笑みを送る。

 と、その可愛い顔がみるまに青く染まって行った。


「うう~」


 何時もセクハラをしてくるお返しだ。

 これ位の逆襲は有って当然!


 「というかそのパンツ、僕のじゃないのかね? 最近ちょくちょく消えてってってるんだけど、気のせいかな?」


 「えー…だって、兄貴の履き心地良いんだもん」


 ――――すっぱーん。


 「にゃ!?」


 本日二度目の雑誌バットスイング。

 見事に硬球(妹の頭)がスイートスポットに吸い込まれていって――――ホームラン!


 「全く…」


 溜息を()く。

 その時、何やら聞き慣れた音楽が耳に入ってきたのでテレビの画面へ視線を向けるとさっきまで僕が活動していた“例のあれ”のCMだった。

 いや、驚きだね。


 「おりょ? 兄貴―?」


 「何だね? 妹様よ」


 「もしかして興味有るん? あれに」


 とっくにCMは終わってるぞ、妹よ。


 「んー? まぁ、ね」


 実際やってるし。


 「逆に聞くけど、見るからに廃人っぽい雰囲気の小並はどうなんよ?」


 「酷っ!? 廃人認定は否定はしないけどさぁ」


 そう。

 この日常家の駄女神こと日常(ひづね)小並(こなみ)は普通に男にモテる程の美少女なのだが――――根っからの廃ゲーマーなのだ。

 成績優秀・スポーツ万能、外では普通に何でも出来る非の打ち処が無い完璧超人。

 けれども家の中では残念な事にあんな感じだ。

 下着一丁上等、中にはすっぽんだった時もある。

 こないだもそれで肝を冷やしながらどついてやったってのに、まるで進歩が無い。

 兄貴としては色気のバーゲンセールなんて開かないで欲しい所。

 全く…コイツの脳みそ、何で出来てるんだ?


 「んー? どったの?」


 「いンや、普通にお前の生ゴミ脳に頭を痛めてる所だよ?」


 「生ゴミ言われた!?」


 兄である僕が見た目は兎も角、如何にも平凡っぽい思考なのに。

 非常に残念、仕方でならない。

 …このアホ娘に関してこれ以上考えてたら埒が明かない。

 別の事を考えるか。

 と言っても、今考えるべきは食糧。

 またの名を昼飯。

 冷凍庫を覗いてみると、丁度良い所にカッチカチのミートソースを発見したのでレンジに入れて解凍モードに掛ける。

 次に鍋に水を入れて火に掛ける。

 沸騰した所で塩を一撮み、それから麺状の乾パスタを投入、タイマーをセット。

 その間に野菜を切る。

 ピーマン、残り掛けの人参、玉葱の残りの切れ端を水で洗い、フライパンに火に掛けて油を敷く。

 フライパンに熱が充分行き渡ったら切った野菜を入れて程良く炒める。

 充分に焼けたら、解凍したミートソースを入れていっしょくたに。

 此処でタイマーが鳴ったのでコンロのガスを止め、タイマーを切り、鍋の湯を切りながら麺を笊に。

 水を切って、フライパンの中へと勢い良くぶち込んでやる。

 再びフライパンを火に掛けながら具と麺を絡め、馴染んだ所で皿へ移した。


 「完成っと」


 題して『なんちゃってナポリタン・スパゲティ』!


 居間に在る机の、自分の席に完成品を置いた所で「うへへ~い。良い匂いですのぉ~」と我が家の堕女神が手を出してきたのでフォークで軽く心にO・HA・NA・SHIを施そうとした所、自室へ逃亡を図った。

邪魔者が消えたので、ちょっとだけすっきりした気分だ。

 ま、部屋を汚した分はキッチリ返してやりますがね。

 この時、だもうと小並の背筋か凍り、くしゃみニ回したとかしなかったとか。


 甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸


 食事を終えて(食後の食器洗い含む)部屋に戻った僕は、ベットに座り込んだ。

 ――――戦闘結果は予想していたよりも酷かった。

 というか、対処しきれなかった。

 主にHP4割削った後の事。

 生き残れたのは僕を含めた、たったの四人。

 高レベルか、スキルやプレイヤーが持つ個々の特性が良かったのか。

多分僕は後者の方。

 後の三人は“攻略組”と呼ばれるトッププレイヤーの上位に名を連ねている。

 恐らく両方だったんだ。

 取敢えず食べたばかりだし、激戦で疲れたし、インする気になれないし、それに――――眠い。

 気が付いたら自然と目を瞑っていた自分が居た。

 当然の事ながら、それ以降の記憶なんて全く無い。


 甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸


 「うー…」


 目が覚めた時は太陽の光が部屋を真っ赤光のペンキで染めている最中だった。

 まだ眠気が抜けきって無いけど、そろそろ夕食の準備を始めるとするかな。


 「珍しい」


 何時の間にか帰って来ていた母さん――日常ひづねしかる――がキッチンで調理をしていた最中だった。

 何時もはもうちょっと遅い時間に帰宅するんだけど何かあったのかな?


 「…あら? 久し振りに早く帰ってきたのに、第一声がそれ?」


 「…お帰り」


 「まぁ、良いわ。そう言えば凡?」


 「…何?」


 うげ…眠気のせいで返事に力が篭っちまった。


 「こないだ残してといたミートソースが無いんだけど、知らない?」


 え、あれ使う予定だったの!?

 此処で言い訳したら何だか話が拗れそうな気がするけど…仕方無い、か。


 「ゴメン。お昼ご飯作るのに使っちゃったんだけど」


 「え? …変ねぇ、朝二人分作って置いた筈なんだけど」


 有罪ギルティー

 おいコラ、何人の分まで食べてやがんだ、このアホ妹が!

 通りでシンクの周りが水浸しのままだったのか!

 それと、使った皿が“なんだか中途半端に拭き掛けみたいになってた”様な感じだったのは、そう言う事かよ!

 流石に腹に据えかねたので、仕返しとばかりにアホの分だけ準備をせずに母さんと二人だけで食事を摂った。

父さん?

 あの人はかなりの仕事が入ってきたせいで今日帰れないと連絡が来た。

 帰ってきたら労ってあげましょう。

 因みにあの後「何で夕食呼んで来なかったの」と、急に僕の部屋に乗り込んで来たんで、アイアンクローを喰らわせた後にぽいっと部屋の外へ摘まみ出した。

 酷いとか言って来てるけど、勝手に人の昼飯を食われた僕からすれば寧ろそっちの方が非道いと言わざるを得ないぞ?

 反省の色が見えないので「人の昼飯を勝手に食う奴に慈悲は無い」と部屋のドア越しに叫んだら「げげっ」という声が聞こえた――――と、思ったらでかい足音を立てて逃げた。

 正確には逃亡したというのが正解か。

 全く…アイツ、何処まで堕ちて逝くつもりだ?


 「ふぅ…」


 それにしても危なかった。

 あの犬っころがまさかあそこまで強かったって言うのは誤算だった。

 いや、見誤ってたって言うのが正しいか。

 毛針に闘氣、その他諸々。

 特に闘氣に関して、あれは相当ヤバかった。

 肝が冷える、なんて代物じゃない。

 どう見ても凍り付いて砕け散っちまうって感じだ。

 その後の記憶が曖昧だけど、結局はどうなったんだろうなぁ?

 まぁ普通に生き残ってたメンバーは心配してるんだろうな。


 「はぁ…」


 夕飯食い損ない事件の真相解明後、ログ・インするために湯船の中で浸かっていた。

 それにしても…。

 湯気で見えにくくなってるそれを見る。


 「またでかくなった、気が」


 何が、とは言わない何が、とは。

 富士山…ヒマラヤでも目指してんのか?

 最近無駄に憑いた謎の塊が自重してくれない。

 まだ成長するのかと思うと、憂鬱だ。

 つーか持つ者の余裕とか似合わないんだけど、性別的に。


 風呂から上がって部屋に戻ると、ヘッド・ギアを被る。

 本来なら今日はインしたくない気分だけど、勝利後に急に(と言うか強制的に)アウトしてしまったので謝るためだ。

 こればっかりは周りに心配を掛けさせた僕が悪いので早めにしないといけない。

初登場の妹がダメ過ぎた点。

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