『凡兵の意地というモノを見せてやる』
※とってもシリアスです。
※お気に召さないのでしたらリターンしても構いません。
広場に出てみるが、何も居ない。
…いや、デカブツ狼の姿は居ないがかなりの視線を感じ――――。
「ぎゃうん!」
咄嗟に、足元に落ちてた石を思いっきり投げなかったら今頃襲われたメンバーのHPは間違い無く全損していた。
そう思うと冷や汗が止まらなかった。
「各自戦闘態勢を執れ! 迎撃用ぉ意っ!」
「何が…一体…?」
「……恐らく嵌められたんだ。ワン公に、ね」
大抵の狩りは一体では不可能、だから集団で攻めなければ捕えられないし、生き残れない。
となると、この行軍を察知されたとみて間違いない。
――――ああ、畜生! やられた!
「どうする…どうする…どうする…?」
いや、待て。
「……このメンバーで風の力を行使できる、もしくは念力みたいなスキル持ちのプレイヤーはどれ位?」
「何を…?」
「良いから、教えて!」
先程、作っておいた“それ”を二つ程取り出し、指に挟んでそれを目の前にずいっと提示する。
「――――燻り出す。そのための、策」
「…………出来るんだな?」
その問いに僕は、
「…………」
――――無言で頷いた。
「迎撃の姿勢は崩さず、風または空気をコントロール出来る奴はもう少し前へ」
“あれ”を森の中に投げ込む役はデイビットさんとシェーンさん。
――――せー…の、
――――えい!
「今だ!」
凄まじい破裂音が響くと同時に、煙が此方に流れない様に、周りのメンバー数人がスキルや魔法等を発動させる。
同時に奴等の退路を断たせるために風の壁で退路を塞いでやる。
「…………」
数秒の後、木々の向こうから敵が現れて来た。
げっげっと苦悶の表情を浮かべながら現れたそいつは僕の狙い通り、『毒』状態になっていた。
○ポイズンボム
森で良く見掛ける『毒草デモニウム』から抽出した劇薬(原液)を使用して作成された毒爆弾
一定の確率で状態異常【毒(中)】にする
※爆心地の近くや風下に立って居ると非常に危険です
品質±C
これが、僕が作り上げたものだ。
毒に侵された取り巻きらしき狼が倒れた瞬間、その様子に業を煮やしたのか、本命である敵が姿を現した。
【グランド・グラスウルフLv30】
HP100%
MP50%
状態異常・激昂
…あら?
レベル、上がっていらっしゃる?
いや、激昂状態になるのは仕方無いとしてなんか所々光っている様な。
「ぐぇ!?」
――――へ?
何が起き――――
「ぐぁ!?」
「グーニィ!?」
盾持ちが、盾越しに吹っ飛ばされた!?
重装甲で、それでも素っ飛ばされた!?
何かが落ちた。
「…硝子?」
この透明感と、質感。
グラス…グラス…ガラス…そう言う事かよ!
○巨草狼の硝子針毛
巨草狼(異常種)の毛先が体内の魔力の暴走により変異したもの
珪素質に変化しているために貫通力に優れ、また殺傷力も高い
品質B-
「い…“異常種”?」
「何だと!?」
おっと、拙い。
口に出してたか。
だけど、此処まで来たら知らずに攻めていくよりまだマシな方だ。
取敢えずサンプルとして針毛をストレージに仕舞い込んで…と。
出来た。
ただこうして対峙してみると、“現段階”でタンカーが全く役に立たないのは辛い。
御犬様の癖に生意気な!
「――――マズ!」
げげっまた撃ち出してきた!?
「俺様を舐めんなよ!」
端的に言えばその攻撃は当たらなかった。
…BSGさん、攻撃弾いてらっしゃる。
弾いてる、と言うより攻撃してるっていうのが正しいか。
しかもノダメ。
「はっ伊達に盾を極めて無ぇーぜ、ワン公!」
そりゃそうだろ。
とあるプレイヤーの発想によって生み出された、攻撃と防御を兼ね揃えた高性能な盾を持つのはこのPTメンバーの中で彼唯一人だけ。
「喰らいやがれぇぇぇ!」
お返しとばかりに盾からアンカーを射出する。
当然避けられたけど、アンカーを振り回してぶち当てた。
「負けられないって、か」
と言っても影ながら、だけどね。
戦闘開始から有に一時間ちょい。
BSGさんを中心に盾持ちが全線で表立って殴っているお陰か、今の所被弾率はかなり少ない。
防勢から一転、攻勢の姿勢で暴れてるせいで誤解されがちだけどさぁ…本来盾ってあらゆる衝撃を和らげ、同時に攻撃を防ぐ物だからね?
だけどさっきから言ってると思うけど、完全に防げていない。
やっぱり強力過ぎる攻撃は流される。
特にマシンガン・ガトリングガン宜しく撃ち出して来る時は僕のスキル『平凡化』と、武器アーツの【コモンスラッシュ】でどうにか対応してる。
今の所最初の一撃以来HP全損しているプレイヤーは0だけれども、それでも“確実に”という保証は一切無い。
だけど嘆いてばかりはいられない。
嬉しいですよ?
長期戦のお陰かスキルがガンガン上がってる。
『平凡化』のスキルがこれで32迄上がった事も有りさっきよりも幾分か楽になった。
同時に日常茶飯事Ⅱの熟練度もすっぱすっぱ、と斬れば斬る程にグングン上昇していく。
――――何時までもこんな時間が続けば良いのに。
そんな絶対に感じてはならないフラグが牙を剥くとは、この時考えもしなかった。
甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸
狼のHPが残り四割を切った時、異変が起きた。
既に激昂状態になっているから次に何が来るのか予想がしにくい。
「来るぞ、構えろ!!」
けど、来なかった。
来る筈も無かった。
――――気が付いた時は、大半のプレイヤーが電子の粒子と消えて居た。
理由?
「――――畜生め!」
『龍化』で龍人状態じゃなかったら今頃お陀仏だった!
多分あれは僕らで言う所の【撥氣】。
恐らく氣“だけ”でふっ飛ばした。
「……クソッタレ」
「BSGさん!?」
どうにか持ち堪えたらしい。
でもHPが残り一割切ってる。
僕でさえ三割強。
それ以外は……。
生き残ったのは僕を除いてたった三人。
二十人以上居た筈なのにほぼ九割近くが塵芥と消えた。
言うなればほぼ壊滅状態。
犬っころの癖に…犬っころの癖に……。
クソ…走馬灯が頭の中流れて…。
走馬灯…?
死ぬ?
殺される?
――――否!
断じて否!
否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否ぁぁぁぁぁぁ!!!
――――『スキル『生存本能』が発言しました。スキル『龍魔法(水)』『龍魔法(風)』『龍魔法(土)』が発現しました。同時にスキル『精霊魔法』と統合、それにより新たに『精龍魔法』へと昇華しました』
何か、アナウンスみたいなのが聞こえてきたけど、もう、どうでも、いい、や…。
「グゥルルルルルルァァァァァァァ――――――――――――――――――――――――!――――――――――――――――!!」
完全に全身を『龍化』させた僕は何が何だか解らないままに“それ”を発動させた。
「『火精龍よ、祖成る火で以て吾の眼前に立ち塞がる敵を焼き尽くせ【ヴォルケイノ】! 『水精龍よ、祖成る水で以て吾の眼前に立ち塞がる敵を押し流せ【ダイダルウェイブ】』! 『風精龍よ、祖成る風で以て吾の眼前に立ち塞がる敵を、吹き飛ばせ【ハリケェン】』! 『土精龍よ、祖成る土で以て吾の眼前に立ち塞がる敵を押し潰せ【メテオライト】』!」
「――――――――――――――――!!?」
その後の事は知らない。
ただ薄れゆく意識の中で、その台詞が、変異種として僕等の前に立ちはだかった【グランド・グラスウルフ】の最後だったのを確かに憶えている。
Name :コモン
Sex :男性
Race :凡龍【龍化形態(Delay・23:03)】→【人化形態】
HP :3.8%
MP :1.5%
Weapon :凡剣・日常茶飯事Ⅱ(36%)
Head :凡龍兜・頭吉+2
Bady :凡龍鎧・義胸+2
RArm :凡籠手・右京+2
LArm :凡籠手・左京+2
Leg :凡龍脚・脛雄+2
Acce :凡龍環・厳首+2
Title :【平々凡々】
Skill :『武闘術』Lv35 『平凡化』Lv32 『行動制限解除』Lv30 『発見眼』Lv26 『鍵人』Lv2 『趣味術』Lv34 (New!)『生存本能』Lv1 『龍言語』Lv5 (New!)『精龍魔法』Lv2