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Q.『凡龍は平凡な日常を楽しめるか』?  作者: 虹乃夢見
“普通”という事情は何時でもそこにある
16/24

『レッツゴー☆コモンさん』

 ログ・インしてまず向かったのは、ブリギットさんの居るお店。

 露天商から、洋裁関連で破竹の勢いで大出世してる。

 現在洋裁店と雑貨店の二店舗を同じ建物内で経営するため募集を掛けた所、NPCやPPC入り乱れての経営となっている。

 多分この世界に、この技術を普及させるために雇ったって感じかな。


 「いらっしゃいませ」


 雰囲気的には町娘かな?

 僕は一昨日アイコン表示をしない様に設定したけど、そんな雰囲気の美少女だ。


 「コモンと申します。ポーションの納品をしたいのですが…ブリギットさんと直接交渉したいので呼んで頂けますか?」


 「済みません。オーナーは所用で暫く店を離れております。もし良ければ、帰って来るまでの間、店内を見て回って行きますか?」


 「ええ。それではお言葉に甘えさせて頂きます」


 この際だ、時間の許す限り店内を見て回ろう。

 まずは雑貨から。

 主に日用品と冒険者用にきっちり分けられているみたいだ。

 ざっと確認してみたけど、そんなに変わったものは無かった。

 変わり無い、とは言っても製品を入れるための硝子製の容器が普通に使われていたりする所は流石だ。

 冒険者用は…と。


 「…あ」


 其処で発見したもの、それはグミの本もとい粉“ゼラチン”だ。

 穀物から作られた袋に一定の量が詰められたそれが目立つか、目立たないか、微妙な場所に存在していたのである。


 「ワザとこの位置に置いてある、て事はあの人(ブリギットさん)、完全に遊んでるね」


 舌をちろっと出しながら、てへっとしている彼女の姿が僕の脳裏を通り過ぎる。

 悲しい事に、そんな場面に違和感が無い。

 あざとい、あざと過ぎるよ、ブリギットさん!

 もう良い…取り敢えず気を取り直して服屋の方に移ろう。

 此方も防具としての服と、ファッションとしての服に分かれている。

勿論最初は男性服の方へ言ったんだけど、どうにも違和感しか感じなかったため、女性服の区画へ。

 プレイヤーの性別は男性なんだけどね、ああ何だか目頭から熱いものが込み上げてきたよ…。

 それに僕だって普通に羞恥心と言う物が有るよ?

 下着で興奮する程変態じゃないけど初心(うぶ)なんだよ?

 だけど、来た甲斐あって男性用の服よりもバリエーションが豊富だ。


 「だけど、物凄く気恥ずかしい」


 今、一度言わせてくれないかな?

 僕は変態じゃ無い!


 甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸


 心の叫びを勢大にぶちまけた所で、ブリギットさんが帰って来たみたいだった。

 そして、店の奥の会議室に入る。


 「うう…」


 「貴方にも人並みに羞恥心があって良かったわ」


 「僕みたいな凡人程度が気恥ずかしい思いしなかったら、今頃終わってますって」


 「私の中では奇人変人の類だと思ってたんだけど」


 「…どうせ僕なんか男性用の服を着て、後ろ指を指されながら笑われながら生きる破目になるんだ」


 「――――ごめん」


 今更だよ!


 「あー…と、所で今日此処に来たのは商品の納品だったかな?」


 「今更取り繕っても無駄です。…まぁ、今の所回復系とかバッファー系統のアイテムって何処も品薄ですからね、こんな凡人でも役に立てる事が出来るならそれに越した事は無いです」


 「うぐ…そ、そうね…。確かに現段階じゃそっち系の需要と供給が追い付かないものね。欲しいもの半額にするから機嫌直して、ね?」


 何が「ね?」何でしょうかね?

 そうなるって予想してたならそもそも胸中に留めて置けばよかっただろうに。

 口は災いの元て、こういう事を言うんだろうね。


 「…まぁ、良いでしょう、今回は聞かなかった事にします。次から気を付けてください」


 「心に留めて置きます」


 仮にも客商売で生計を立ててる人が、基本的な言葉のやり取りで不信を買ったら本末転倒所の話じゃ無い。


 「今回の分だけど、ノーマルポーション×100、各種ポーションジュース×50、各種グミ×250各種キャンデー×250、いずれも品質は安定のCです」


 「わぁ…こんなに」


 「バッファー系列のポーションはまだ無いですけど、大体の目途は付いてます。寧ろ、あれはポーションより錠剤タブレット舌剤トローチにした方が効果は高いと思いますね」


 但し、物にはよるけども、ポーション摂取も歴とした“水分補給”行為だ。

 渇きを潤すのにはもってこいのアイテムとも言える。

 因みにポーションを作る際、濾した後に出た出しガラは捨てて無い。

 あれはコンソメと混ぜてスープにして後で頂く予定だ。

 これはとあるNPCの薬師が、ポーションを作った際に出る出しガラが勿体 無いという事でコンソメと合わせて作った所、美味しいスープが出来上がったという実話からきている。

 欲しいと言ったら一杯100Gで売ってあげても良いぞ?

 少しでも上手い物食いたきゃ金払え、って事。

 けどね、僕だって其処まで鬼畜という訳でもないのよ?

 素材持ってきてくれたら、幾らか安くして作ってあげるから。


 「そうね。普通のポーションは一本単位150で×100だから15,000G。ポーションジュースは180の×50で9,000G、飴とグミは一個単位25×500の12,500G。合計で36,500Gね」


 現時点で回復アイテムで此処まで儲けた人は居ない。

 やったね、小金持ちだよ!


 「所で、気が付いた?」


 「何を藪からスティックに」


 「あのネタは古過ぎるって! そうじゃなくて…察しの良い貴方だもの、()()が冒険者用の雑貨エリアに置かれている事に既に気付いている筈よ?」


 “アレ”って言われてもね。

 というか思い当たるのが一つしか無い。

 が、僕の口からそれを言うのは何だか癪に障るな。


 「硝子の需要と供給が有り得ないくらい伸びてるって事ぐらいなら」


 「そこ!? いや、骨の使い道を示してくれたじゃない! それこそグミ用のゼラチンとか! ……あ」


 「わざわざご説明、お疲れ様」


 「~~~~くっ」


 「露骨に悔しがっても駄目ですよ~」


 そう、ブリギットさんのいう“アレ”とはゼラチンの事だ。

 あの、雑貨エリアの一角にて、不自然に台に置かれた、ソレである。


 「…全く。僕が気付かない訳が無い、って知っててあんな言い方したんでしょうけども、他の人からしてみれば良い迷惑ですよ?」


 追撃を喰らって両手両膝を着いてがっくしと項垂れる。

 というか身内だから僕も直ぐに察せたんだけど、商人として、それはどうかと自分は思うんだ。


 「ま、お説教はその位にして…良くここまで扱ぎ付けたね?」


 「それは、まぁ…料理とか普通に出来るし、調べれば直ぐに取り掛かれる範囲だし。何よりコモン(貴方)の行動が材料になっているのよ」


 「そうですか」


 「…とは言っても、在った所で買ってくれなきゃ意味が無いんだけどね」


 「…さいですか」


 けどま、僕の仕事が幾分か減った訳だ。

 きっとお抱えの錬金術師とかが汗水垂らして、必死になって作っているんだろうなぁ。心中お察し致します。


 「この後、どうする?」


 「もうちょっと買い物。防具は大丈夫だけど…インナーとか、下着類とか、プライベート用の服を見繕いたい」


 「珍しいわね」


 「そうでも無いさ。…今着てるの男性用何だけど…何故だか着辛くてね」


 これに関しては最初から違和感しか感じて無い。

 そしてさっき試しに女性用を来た所、違和感が綺麗さっぱり消えていたという不思議っぷり。

 其処まで機械も対応できなかったのかと思うと、「あれ? 普通て何だったっけ?」と普通に突っ込みたくなる。


 「…それ、私以外には言っちゃ駄目よ?」


 「というかね、僕に言わせれば現実世界(リアル)でそうなのに、ゲームの中でも同じ現象が起こってるのって、システム的に凄く嫌らしいんだけどね。せめて性別反転劇(完全TS)だったら良かったものを」


 Web小説で良く起こりうる現象だって訊いてるけど、どうやら僕は取り溢されたらしい。

 いや、もっと言うとレア中のレアの様な気がする。

 ちゃんと性別が男なのに現実世界(リアル)よりヤヴァイ、特に胸囲が。


 「…他の女達がそれを聞いたら、何時か嫉妬の炎で火傷するわよ?」


 「火傷以上に、虐めで既に全身火達磨状態になった身ですが」


 その名残か、意外と僕の趣味はそれ程無い。

 お陰で陰に隠れてこそこそと生きる羽目になった訳だけど。

 ただ宛ても無く外をぶらぶらする事と、家の中でぼーっとしてるかのニ択だけ。

 手先はそれ程器用じゃないからそうする以外に無い。

 いや、まぁ僕も普通の人間だから料理は出来るけどそれ程凝ったものは出来ないし、補修程度にしか裁縫も出来ない。

 まして機械やプログラミングなんて高度なものも当然出来やしない。


 何が言いたいのかと言うと、この世界の中で生産を生業にする僕ではあるが、それでも自分の手に負えないものは売買によって何とか回している状態だって事。

 但し、当たり前の事だけど買い物でも一番苦労するのは自分の身に着ける物だけは一番苦労する――――一般の人間より。

 そうなのだ。

 ゲームの向こう側である現実世界リアルでも外見は勿論の事、体格も何故かほぼ女性に近いせいで服装に関しては女性ものしか買えないのだ。

 別に僕は女物の服を着て四六時中欲情する様な変態でも無い。

 男性服が全くと言って良い程、自分の体に合わないから。

 下着も同様で、未だに下着…もといブラとパンツ類だけはどうしたら良いか、他人でも解らない程悩みの種になっていたりする。

 こういう時だけ再現率クオリティーが高過ぎるのは頂けない。

 ……無理な話か。


 「…解ったわ」


 「…お手柔らかに」


 甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸


 お店から出た僕はストレージをから先程購入した物を確認する。

 ――――購入したのは男装用女性服一式とそこそこ良い、普通のインナーと下着類数点だ。

 流石に自身が選ぶのはこっ恥ずかしいのでブラは一般的にスポーツブラと呼ばれている種、パンツはユニセックスとボーイレッグの二種。

 いずれもブリギットさんがチョイスしてくれたものだ。

 気を使ってくれたのか、選んでくれた物はそれ程可愛らしくなり過ぎない程度のデザインである。

 ……今度から現実世界(むこう)でも似た様な物の購入を検討してみるかな。

 と、まぁ用事が粗方済んだので、久々に狩りに出掛けますか。

主人公はリアル巨にゅ(オットダレカガキタヨウダ



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