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Q.『凡龍は平凡な日常を楽しめるか』?  作者: 虹乃夢見
“普通”という事情は何時でもそこにある
12/24

『狩り暮らしの異邦人(エトランジェ)』

連続投稿後編の始まりです。

 此処数日、素材欲しさに狩りを続けていた記憶しか無い。

 そしてもう一つ、検証事項として予てより回復アイテム系食品を作成していたりする。

 残念ながら、ビスケットはHP・MP回復は見込めなかったものの、LPライフポイント回復という謎仕様だったのには驚いたので、暫くこの情報を封印する事を泣く泣く決意せざるを得なかった。

 そりゃだって、あーた。

 別の視点で見れば一種の蘇生アイテムに近いと踏んでるんですもの。

 クッキーも同様だったのでこれも即、封印!

 というかさっきから封印するアイテムのベクトルが、かなり変だと思うのは僕だけじゃない…筈。

 うん、きっとそうだ…そうに違いないんだっ!


【『龍魔法』のレベルが上がりました。『火炎之吐息ファイアサイ』と『火炎之息吹ファイアブレス』を覚えました】


 おお、スキルレベルがそこまで上がっってたか!

 それと武器を見てみると何かこんな感じになってた。


 凡剣・日常茶飯事Ⅰ(★50%)


 ふむ、一体どういう事だ…?

後 でタルワール君に訊いてみようか。

 取敢えず現在の僕のステータスはこんな感じ。


 Name   :コモン

 Sex    :男性

 Race   :凡龍ノーマライズドラゴン人化形態ヒューマノイド・フォーム

 

 HP     :100%

 MP     :100%


 Weapon :凡剣・日常茶飯事Ⅰ(★50%)

 Head   :凡龍兜・頭吉1

 Bady   :凡龍鎧・義胸1

 RArm   :凡籠手・右京1

 LArm   :凡籠手・左京1

 Leg    :凡龍脚・脛雄1

 Acce   :凡龍環・厳首1

 

 Title  :【平々凡々】

 

 Skill  :『武闘術』Lv27 『平凡化』Lv13 『行動制限解除』Lv25 『発見眼』Lv26 『鍵人』Lv1 『趣味術』Lv21 『龍言語』Lv3 『龍魔法(無)』Lv10 『龍魔法(火)』Lv1(NEW)  『精霊魔法』Lv3


 なかなか良い育ち具合だ。

 『精霊魔法オラクルマジック』は良いとしても、未だに『鍵人キーマン』はどうも謎すぎる。

 そもそも『本当に必要なのか?』と疑いたくなる程の意味不明な存在っぷりをこの僕にアピールてくる。

 うーむ…どうしたもんかね?

 普通に性質が悪い。

 死亡フラグっぽい感じはしないけど、謎だ。


 「さて、狩りでもしながら工房にでも行こうかね」


 『CVO』はプレイヤーレベルが一切存在しない。

 代わりにスキルレベルや熟練度が物を云うシビアな側面を持っていると言って良い。

 HPやMPはパーセントで表示される。

だからこれ以上に減る事はあっても、それ以上増える事なんて絶対に有り得ない。


 これもこの世界の厳しいポイントでもあったりする。

 だから必然的にスキルレベルと武具の強化に注がれる事に焦点が充てられる訳だ。

 街に戻って武器の事に着いて相談するために工房に寄ったら、珍しい事に初見のPPCがカウンターに居たので声を掛けて見る。

 声を掛けて見ると盾のメンテナンスの為に立ち寄ってるとの事。


 「…へぇ。じゃあ、つまりお前が噂の『蜘蛛狩り名人』か」


 ……ん?

 何か変な言葉がこの人から出た様な…?


 「いや、お前のPCNは【コモン】だろ? 蜘蛛の糸欲しさに蜘蛛を狩るプレイヤーって言ったら【コモン】しか居ねぇし。それとも『グミ職人』か『骨収集人』の方が良かったか?」


 「どっちもヤです」


 確かにお洒落したいがために蜘蛛糸採取しに行ったり、グミの元のゼラチンを作るために集めた記憶はあるけど…さ?


 「ま、これに関しちゃじきに真似する奴等が増えていくだろうからそんな二つ名は消えていくだろ」


 そんなもんなのかね?


 「ああ、俺の名は【BSG】だ。“Big Sheld Gardna”、略してBSG…ってな」


 TCG(そっち)の方のBSGなんですね。

 断じて中二何とかを患わせたのかと思いましたよ?

 いえ、十二分に患ってますね。

 それを言ったら僕も人の事は言えませんが。

 だってほら…いかにもトーシローというか、ボンクラっぽい名前って憧れるじゃない。


 「おーう。出来たぜ、兄ちゃん…って、コモンの坊主も一緒か」


 「まぁ、ね。偶然此処で居合わせただけですから」


 「でも坊主は見た目可愛い娘っ子だからな、ほいほいと何処ぞに付いて行っちまわねぇか危なっかしいからよ」


 「失礼な。明らかに怪しい所ダンジョンには行っても、怪しい奴等の傍らにくっ付いて行く気は更々無いですよ? ――――アジトを燻り出して壊滅させたいと仰るなら話は別ですけど」


 「「物騒だな、おい」」


 二人揃って酷いですね。

 尾行ならしようと思えば出来そうなものだけど、流石にPK職相手には手数も火力も微妙なラインで挑むのは分が悪すぎる。

 僕はあくまで普通にゲームを楽しみたい。

 だから避けられないもの以外は全部パス、スルー、無視シカトの方針で行く事に決めている。

のんびりライフ、それが一番。


 「おう、そうだ兄ちゃん。兄ちゃんの要望通りの盾が出来たぜ」


 「おお、そうだそうだ」


 「坊主は知ってると思うが、こないだ兄ちゃん等と同郷の奴が弟子入りしてきたからな。割と良い仕上りになってると思うぜ?」


 「俺等、と?」


 「おう。…ま、坊主の伝手ってのも有るがな」


 痛い。

 親方、笑うのは良いけど背中叩くのやめてくれませんかね?

 …マジで痛いから!


 「…親方? これ以上は衛兵、呼びますよ?」


 「おおう…済まんかった」


 「ホントですよ。傷物になったらどう責任取ってくれるんですか?」


 「あー、いや…まぁ、何だ。取敢えずはその盾を付けてくれ」


 む、はぐらかしましたね?

 後でGMに親方をお仕置きさせて貰わなければ気が済まないぞ。


 「どうだ?」


 「うむ、悪くは無いな。いや…寧ろ、最高だ」


 BSGさんが装備したのはミドルシールド。

 いや、良く見ると中途半端に真っ二つにしてある感じだ。

 しかも両腕にそれぞれ一つずつ。


 「構造としちゃ鍛えた魔物の骨を中核に、蜂と蟻の甲殻でサンドしてる状態だ。…確か、“複合式”とかって言ってたな?」


 鍛えた魔物(モンスター)の骨は独特の堅さと弾力で、こういった素材としては優秀だ

それでいて軽い。

 其処に、骨より堅牢な、僕が持ち込んだ蜂(の女王)と蟻(の王)の甲殻を張り合わせれば、あら不思議。

 そこ等辺で売ってる物よりも良い盾の出来上がり。

 僕等の様なPPCが手を加えればグレードやランクが一段階ワンランク二段階ツーランク…いや、それ以上の物になるのだ。

 但し、あれから見るにタルワール君はまだ其処の域まで達して無いっていう様な感じだろうね。

多分、親方の相槌を打つ程度って所かな?


 「取敢えず、拳を横に合わせる様に端っこを合わせてみろ」


 「……?」


 はてな?

 何をするつもりなんだろか?


 「――――こりゃあ…」


 試しに遭わせてみる…と、BSGさんが携えていたのは一対のミドルシールド、では無く、ひとつのバカでっかい――――――――――――――――タワーシールドだった。


 甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸


 まさか連結機構でひとつのでっかい盾になるとは思わなかった。

 僕の中では変形機構のアイディアっていう手も有ったけど、そればっかりに頭が行き過ぎて抜けてた。

 流石、本場の職人には脱帽だ。


 「親方、此処にいらしてたんですね」


 「おう、タルワールか」


 「コモンさんもお久し振りです」


 「お久ぁ~」


 カウンターの奥から見知った人物が現れたので挨拶。


 「あれから、どう?」


 「ええ…まぁ、ボチボチです」


 「そっか」


 「コモン、この人は?」


 「BSGさんは会うの初めてだっけ。この人は【タルワール】君て言って同郷の鍛冶職人なんだ」


 「ほう。掲示板(あそこ)で誰かが言ってた『異邦人の職人』か」


 その発言したのは僕ですが。

 というか確実にこの人、あの時参加してたクチか。

 通りで僕のPCNを知ってた訳だ。

 いや、掲示板は【名無しの~】が一切無いから、この人カマを掛けたんだと思う。

 それ以外だとタルワール君を擁護した時のPPCって事でもある訳で。

 あの時のあれは確認した限りでは酷い内容だったのを覚えてる。

 僕を勝手に悪者に仕立て上げて勝手に罵倒して喚いてたと言うもの。

 但し煽っていたのは当事者の奴等だけで、他に参加していた人達は諌めようと必死だった。

 それだけだったらまだ良かった物の、職人を“唯の、武器やアイテムを生んでくれるだけの道具だ”と言ったために大炎上…する前に運営が強制的に雑談トピ自体を強制的に削除したというのが当時の内容だ。

 その後直ぐにそいつ等のPCアバターにペナルティ称号とスキルを付けられてしまったらしいとの専らの噂である。

 桑原桑原、自業自得とはまさにこの事であるか。


 「はぁ…。そう、なんですか?」


 「ま、運命って奴に感謝だな」


 「所で、今日はコモンさんはこの後どうされる予定なんですか?」


 「うーん…そうだねぇ。僕が親方に渡した『機織り機』の設計図を元にして“何処まで進んでるか“と言う確認と、もうすぐポーションが切れそうなのでそれの作成と納品。後は素材集めに狩りに出かけるって所かな?」


 「親方にそんな物を渡してたんですか?」


 「ま、製糸機械である『座繰り』と『機織り機』自体は木工職人で作るとして問題は『足踏みミシン』。忘れてたけど布を織って終わりって訳じゃ無くて縫う奴。こればっかりは鉄を中心とした鍛冶職人と共同作じゃなきゃ無理……って事ではい、親方。新しい『設計図レシピ』です」


 「……」


 はてな、何だか皆顔がコチコチに固まってる様な。

 それ以上に親方の顔色が青い。

 まるで死亡フラグを宣告されたかのような表情だ。

 いや、フラグ関係無いか。


 「親方。諦めましょう?」


 「おめー…いや、これが普通か」


 BSGさんに至っては何故か納得した顔である。

 はてな?


 「ふぃー…て、あれ? 皆何してんの」


 ナイスです。

 ええグッドタイミングです、ブリギットさん。


 そこで僕の拘り、というか計画を話す。


 「へぇ…良いじゃないの。というかやってくれなきゃ困る!」


 「解ります? やっぱり外側の鎧とか着込むばっかりで、中身が未だにヘボいのはそろそろ堪えます」


 「そうよねぇ。お洒落がしたいって欲求は老いても尽きないものなんだから!」


 おおっ同志よ!

 嗚呼、やはりお洒落道は偉大だったよ。


 「うふふふふ」


 「んふふふふ」


 唖然としてる周りは蚊帳の外、気付けば僕等二人は妖しい笑みを溢していた。

LPは=生命力です。

魔力=MPは肉体の構成及び維持に必要なエネルギーでHPは肉体の稼働、もとい運動に必要なエネルギーです。

HPMPの限界を越えるか、一種の飢餓ハラペコ状態や病気等の衰弱で減りますね。

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