『……あれれ?』
現実では蜘蛛の糸にはちょっとした毒性があるみたいですね。
因みに人工的に作られた蜘蛛糸なら『スパイバー』で検索してみましょう←ヲイ
すっかりお馴染となった森探索。
現在、まだ二時。
まだまだ、潜っていても問題は無い。
深部への侵入を試みる傍ら、素材をきっちりと採取を行いながら突き進んで行…………きたいが、目的は蜘蛛狩りのために木々の間を縫いながら、移動している。
仕方が無いが、蜘蛛糸のためだ。
それが駄目なら芋虫を探すか。
植物繊維から作られる素材も魅力的だが、それよりも優先すべきは蜘蛛の糸だ。
獲物はすぐに見付かった。
既に羽根を毟り取って首元を掴んでいる蟻王を六角形の巣にぽいっと放り込む。
蜘蛛の横糸は粘着性が高い、幾らもがこうが、逃げる事は敵わない。
蜘蛛は獲物を知覚するとすぐに糸を巻き付け玉に変えてしまう辺り、流石だ。
『龍之威圧』で蜘蛛を気絶させると、素早く糸を棒に巻き付け、退散した。
しっかしなぁ…生物にしか効かないけど、これはこれで便利なのでこれからも使い続けようと思うんだ。
蟻王の素材も同時に入ったので、一応良しとする。
○幽糸…グラススパイダーの糸、素材としては優秀。
品質B-
きた!
『B』!
-だけど、今現在手に入れた中で最高の物だ!
その後も、蜂と蟻を捕まえては、次々と蜘蛛の巣に引っ掛けさせて、その度にどんどん糸を採取していく。
…面白い!
調子に乗った僕は更に奥深くまで入ってしまった。
「ええっと…あれ、迷ったかな?」
急に大広間と呼ぶべき場所に居た僕は辺りを見回した。
“誰もいない?”と不思議に思った途端、不意に違和感を感じて横っちょに避けようとした所で、後頭部に衝撃が走った。
ああ、もう…咄嗟に部分的な『龍化』で後頭部を変えていたお陰で気絶せずに済んだけど、そうじゃなかったらお陀仏だったよ!?
……少し慌てちゃったけど、深呼吸してゆっくりと心を落ち着かせながら『龍之威圧』を発動させる。
いんや…今は発動させる、というよりも威圧という怒りの感情を撒き散らしてるって言ったらいいのか。
……なんて言ったらいいのか…兎に角、一言でいえば“邪魔をするなら許さない”的な。
「出でこない」
威圧で相手は否が応でも慎重にならざるを得無い状況にあるのか、出でこない。
『発見眼』を応用して気配を察知しようとするも失敗。
というか出来ない。
出来たら出来たで人外決定だけど。
――――仕方ないか。
『龍之威圧』を可能な限り弛めてみる、と途端にぞわりと悪寒がしたので思いっきり『龍之威圧』を最大値で発動させてしまった。
『ギャウン!?』
犬の様な鳴き声が背後でしたので振り向くと、犬よりもシャープで、尖鋭的な狩人が威嚇をしながら僕を睨みつけていたのだ。
○【グランド・グラスウルフLv20】
HP100%
MP50%
(あっちゃー…。そうだよね…森と言ったら狼系のモンスターだって居たのに)
シット!
だが、前向きに考えてみよう。
素材面で、毛皮や骨はこれまで以上に素晴らしいものへと化ける…そう考えるとこれが仮にボスだとして、倒す理由が出来た事になる。
「やるっきゃないか」
完全に龍化させると、『龍之咆哮』で狼を威嚇する。
当たり前だけど、向こうの咆哮で足止めなんて御免だ。
『龍之吐息』を連発して周りのグラスウルフを迎撃する。
息吹とは違って、威力が低い分クールタイムも短く、扱い易い。
…無属性のしか放てないのは悔しいけど。
刀を振ろうとしたけど、掌に握った感じがしないので見て見ると手甲に長い刃か両腕に着いている。
所謂『パタ』と呼ばれる剣に酷似していたのだ。
いや、何の冗談だい?
まぁ、なっちゃったものはしょうが無いけども。
『【龍牙一閃】!!』
変な声が僕の口から出るのと同時に狼のHPの2/3が消し飛んでいた。
……ホント、無茶苦茶が過ぎない?
僕というアバターについての疑問は後回しにした僕は、目の前の手負いの狼に向かって剣を振り抜き、残りのHPを消し飛ばした。
……戻ろうか。
うん、今はそうしよう。
甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸
ボスよりも、自分について解らなくなった僕は街に着くなり図書館へ向かった。
粗方見て回ったけれども、それでも情報は得られず。
その代わり、『精霊魔法』と言うスキルを覚えてしまったのだけれど。
ただ単に絵本を読んだだけなんだけど…なして?
考えても仕方の無いので、街をぶらぶら歩いていると『マイルトン倉庫』と書かれた看板を見付けたので入ってみる。
「いらっしゃいませ」
…広い。
「ようこそ、マイルトン倉庫へ。私は受付のアニーシャよ」
「ああ、うん」
受付の女性は僕の歯切れの悪い返事にくすくすと笑っている。
「お客様は此処を利用するのって、初めてですよね?」
「ええ、まぁ」
「驚いたでしょ? このお店はね、空間圧縮と拡張を応用した魔導具を使用してるの」
彼女曰く、空間拡張の魔導具を幾つか使用して、魔方陣を描いているために広い空間を確保できたんだとか。
ふむ、成金だから成り立つやり方ってヤツか。
後、収納する空間は保存の魔方陣も同時に組み込んでいるらしい。
うーむ、この辺は如何にもゲームっぽい。
「折角何で利用してみようかな」
「有難うございます!」
問題の狼素材と、それから蟻と蜂も同時に預け、工房へ向かう。
これで一先ずは安心だろう。
「おう。コモンよ、どうした?」
「狩りの成果を」
「ほぅ?」
親方に連れられ奥の部屋に移動、そこで成果の証であるグラススパイダーの糸、正式名称『幽糸』をストレージから取り出した。
「こりゃ、上等な糸だな?」
「はい!」
「……一応聞くが、何の糸だ?」
「蜘蛛、です!」
「…もう一度言ってくれ」
「グラススパイダーの糸です」
「……正気か? 今の聞き間違いで無ければ、あの幽霊蜘蛛から巣を掻っ攫って行った様に聴こえたんだが」
あの蜘蛛、こっちの人は幽霊蜘蛛って呼ばれてたのか。
通りで“幽”糸なんて大層な名が着いていた訳だ。
兎も角、親方の台詞から察するに蜘蛛を狩るのは何よりも苦労するみたい。
威圧で呆気無く気絶の揚句、一撃死されてると知ったら何追求されるか、たまったもんじゃない!
言わぬが花…うん、知らぬ存ぜぬを突き通そう…その方が良い。
「しかし、困った」
「困るだろ、素材が素材だからな」
「んん、まぁ蜘蛛糸は性能面でも優秀だけど、どうせならお洒落したいというのが人の性ってモノなんです」
「……何故かお前を見てると、周りの女共と似た様な気分になるのだが…まぁ、今更か」
「ええー、酷い!」
「五月蝿ぇ」
酷い言われ様だな。
それは兎も角、この街の住人はファッションセンスに乏しいとしか言えない程、服装の見た目が簡素なのだ。
単純な色合いしか先程から見掛けない。
そこそこ大きい街なのに、残念である。
本当に残念である。
それにしても、もし作れるとして、僕にはどんなデザインが良いだろうか?
見た目女にしか見えないから、敢えての女装とかも良いかもしれない。
うーん…それともボーイッシュガールなデザインも捨て難いぞ。
と、話はそれたがそれでも蜘蛛糸が駄目と言うなら最悪、代用品として芋虫を探さなければならなくなるが。
……正直面倒臭い。
その上気持ち悪い。
蜂の子?
それはそれ、これはこれなんだ!
じゃあ養蚕業はどうなんだって?
知らないよ!
「…親方?」
「何…うおっ!?」
「避けないでください、殴れないじゃないですか」
「ま、待て! 待つんだ! 良いか? 当たったら工房が傾くぞ!?」
「構いません。と言う事で、大人しく殴られてください」
「何故そうなる!?」
「胸に手を当てて、良く思い返してください…なっ!」
あ、また避けられた!
――――散々親方を追い回したけど、一度も当たらなくて微妙に悔しい思いをした事は置いといて、前回から考えていた製糸機器と機織り機の設計書を親方に渡して今日は終わりにしよう。
明日も朝早い、夕食が終わったら早く寝よう。
Name :コモン
Sex :男性
Race :凡龍【人化形態】
HP :100%
MP :100%
Weapon :凡剣・日常茶飯事Ⅰ(27%)
Head :凡龍兜・頭吉1
Bady :凡龍鎧・義胸1
RArm :凡籠手・右京1
LArm :凡籠手・左京1
Leg :凡龍脚・脛雄1
Acce :凡龍環・厳首1
Title :【平々凡々】
Skill :『武闘術』Lv12 『平凡化』Lv6 『行動制限解除』Lv19 『発見眼』Lv12 『鍵人』Lv1 『趣味術』Lv19 『龍言語』Lv1 『龍魔法(無)』Lv5 『精霊魔法』Lv2(New)