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駄目だ……。
まっっっったく成功しないわ…。
数時間頑張ってみたけど、駄目だ。
やっぱり逃げられんだけど。
自信なんて元々無いけどここまで来ると、なんか泣きそうになってきた。
ほぼ半泣きになりながら、夕方になりつつある街をあてもなくとぼとぼと歩く。
俺、そんなにガキに見えんのかなぁ。
見るにも耐えないほどブサイクかなぁ。
もうそろそろさ、初彼女欲しいよ。
綺麗な黒髪で清楚系な女の子……
そう、
あそこで歩いてる、
黒髪セミロングで、パッツン前髪に姫カット、ツインテールで後ろ髪を残して下ろしてて、
竹刀が入ってるような袋を掛けてて、フリフリのエプロンを着けたミニ丈の着物の美少女……
って!!!???
超好みだし、何より、
すげー可愛い……!
パッチリした目に色白な肌。女子にしては少し高めな身長で、すらっとした足で、すごくスタイルがいい。
服装はコスプレかな。ちょっと浮いちゃってるけど、すごい似合ってるから全然OK!!
ここまでどストライクな女の子見たの初めてだ。
もはや運命さえ感じる…!
もう、これは声をかけるしかない!
そして、絶対に成功させなければ!!
「あ、あのっ!!今からちょっと時間ある!?」
◇
幸せな日だった。
なんて幸せな日だったんだ!!
「ただいまー」
「おかえりー。ご飯食べてきたんでしょ、って優翔!?あんた顔にやけすぎて気持ち悪い。…何がいい事でもあったの?」
「うるせー。へへー、なんにもないってぇ」
「…彼女でも出来たのか…」
今日の事を思い出しただけで顔がにやけて仕方が無い。
口角が上がりまくるのが分かる。
なぜこんなにも幸せなのかというと、
あの子へのナンパが成功したから!
自分でも信じられない。
他の人には散々逃げられたのに!
だけど逃げられるどころか、某有名チェーンカフェでお茶した後に、ファミレスで一緒にご飯まで食べたのだ!
奇跡が起こったんだと思った。
その黒髪美少女は、「湯島かなこ」ちゃんという子だった。
かなこちゃん…。名前まで可愛い…。
初めはナンパにビビってか、ビクビク緊張して何も話してくれなかった。
だけど、俺が根気よく話しかけていると少しずつ少しずつ俺と話してくれるようになった。
話してみると、どうやらかなこちゃんは俺と同い年で、県内でも有名なお嬢さま学校・夢島学園の中等部に通っているらしい!
育ちの良さを感じさせる大和撫子な雰囲気。オムライスを美味しそうに食べていた。すごく綺麗な食べ方だった。
そういえば、左利きみたいで珍しいなぁ。
かなこちゃんは、話してくれるようになっても少し無口。
「こ、声が低いのがコンプレックスなので、たくさん話すのが恥ずかしいんです…」
って、赤面しながら教えてくれた。
Cawaii!!
それと、あの服装はやっぱりコスプレだったらしい。
なんか、「おしかけ*メイド」っていうアニメの、明音柚子というキャラクターの服だそう。
知らなかったから調べてみたけど、
うん。かなこちゃんの方が圧倒的に可愛いな!!
和服メイドらしい。かなこちゃんにピッタリだ!
街中をコスプレして歩いてたのは、イベントに参加した帰りで、着替えが無くなっていたかららしい。
盗んだ奴が居るならコロス。
さらには、別れ際にメアドを聞いたら快く教えてくれた!
メールすぐにしたら引かれるかな?でも我慢できない!!
別れるとき俺が、
「また会ってくれる?」
そう言ったら、顔を真っ赤にして、
「……うん!」
って、次の約束までしてくれたんだ!!!!!
もうこの際、彼女とかどうでもいい。
俺は、彼女が欲しいんじゃなくて、かなこちゃんと付き合いたい。
メールもできて、風呂に入った後、今日の出来事を思い出して悶えていたら、空は明るくなり、気づいたときには朝だった。