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世の中、思い通りにいかないことばっかだ。
まだ生まれてきて14年しか経っていないが、中学3年の俺、戸塚優翔はそう日々思う。
「優翔!また学校サボったりしたら今度は家締め出しじゃ済まないからな?」
「いちいち言われなくても分かってるって!」
母親はサボんなってうるせぇし、
「お前なぁ、戸塚。いつになったら黒く髪染めてくるんだ」
「だから!!地毛だって言ってんじゃん!」
「嘘付け!プリンになってきてるだろうが」
教師は黒くしろってしつこいし、
(実際染めてんだけども)
「次、戸塚」
「はーい」
「なんだこの点数…。明日から補習があるからちゃんと来いよ」
「ハァ!?てか、そんな大声で言うなよ!皆に聞こえてんだろ!クスクス笑うな!!」
「ちょっと見せろよー!
……ゆーとぉ、お、お前さ、ブハッ、18点は流石にやばいって!!」
「わ、笑うなぁ……!!!!」
テストの点は最悪だし、補習もあるし、友達の新庄圭はバカにして笑ってくるし、
「圭!次の授業サボろーぜ」
「新庄と戸塚!サボるとか聞こえてきたよ?もう私達中3なんだしそういうのやめとこうよ…」
「あっ、朝原さん!?そうだよな…はは」
憧れのマドンナ、朝原さんと久しぶりに話せたと思ったら注意されたし、
夕方、家に帰って来て入ろうとしていると、
「あ、優翔。明日から補習だって?サボらずに行けよ?俺ら大学までエスカレーターだからって試験はあるんだし…」
「お前に関係ないだろ」
家が隣で幼馴染みの弓槻叶は、
成績上位で、剣道部主将で、モテて、生徒会に入ってて、自分が優秀だから俺を何かと見下してるような事を言ってくる。
こんな風に、とにかく何にもかも思い通りにいかない。
今日だってそうだ。
日曜日だし、彼女欲しいからナンパに出かけてみても、話さえしてくれなかった。
しかも、皆無視というか目を合わせないように足早に逃げていった。
酷い。みんな酷い。
俺、何にも駄目な事はしてないはずだぞ。
『今からちょっと時間ある?』
って聞いてるだけなのに!!
何がいけねぇんだよ!?
「あー…彼女欲しい…黒髪美人の彼女が欲しい…」
俺の、まさに中坊ですって感じの見た目がいけないのか…?
顔は童顔だけど、金髪は大人っぽくてかっこいいからカバー出来てるはずなんだけどなぁ。
そういえば、圭とナンパする時は女の子逃げないし、成功率高かった気がする。
圭は身長も高くて細マッチョだし、高校生だって言っても十分なぐらいに大人っぽい。
何より、イケメンだし。
その圭は、一緒にナンパしに行くと、俺を嘲笑うかのように女の子をかっさらっていく。
だから俺一人でナンパしてるというのに、こんなにも圭の力が絶大だったとは…。
辛い。辛すぎる。
でも!彼女欲しすぎる俺は挫けたりしない!
気を取直して、最寄駅から3駅の都心部まで行ってナンパし直そう。
都心部で人が多い方がいける気がしてきた!
絶対に彼女作る。
そう意気込んで俺は戦場へと向かった。