行間1 遅すぎる救援
幸いこれ以上害悪種が現れる気配はない。その事実はかなり心の支えになっていた。
自分は斉木昇。聖署の人間として東京で害悪種と交戦している1人だ。
東京で害悪種が出現するというあまりにも想定外すぎる事態、さらに1種類のみだと思っていた害悪種の新種出現で、初めはパニック寸前だった。
必死に戦う中で、新種たちもそれほど脅威ではないことに斉木は気付き始めていた。斉木は強魔法使いだ。
「《ハイ・ボル・ブロード》‼︎」
目の前に広がる害悪種の群れに魔法を放ち、蹴散らす。確認した中では、強魔法を耐えることが出来る害悪種も蜘蛛型くらいのもので、二撃与えれば蹴散らすことは容易だった。
問題なのは「いつになったら終わるんだか、、」
その数だった。
幸いこれ以上害悪種が現れる気配はない。その事実はかなり心の支えになっていた。
目の前の学校は害悪種が侵入しているようだが、目の前にまだ10体程度は害悪種が群がっている。
魔法は《始まりの日》以来、全ての人間が扱えるようになったというものの、才能がない者もいるのが現実だ。よって住民全てが害悪種と戦えるわけではないだろう。
早く助けに行かなくては_そう思いながら再び魔法の詠唱を始めようとした、その時だった。
ドォッッッン‼︎
凄まじい熱風が伝わる。「何があった⁉︎」
学校内で爆発なんてどう考えても普通ではない。不吉な予感が増す。
「《ハイ・ボル・ブロード》‼︎」
蹴散らす、蹴散らす。
斉木は学校に足を踏み入れる。
「遅いぜ….」
生徒のようだ。斉木の知る由もないが、そいつは風城茂という青年だった。炎が燃え盛る体育館を見ていたが、鋭い目つきでこちらを見てくる。
「お前ら聖署だろ!なんでもっと早く来れないんだよ!」
何も言わなかった。
だけど、これでも全力の救援だった。
たとえ遅すぎたと言われようとも。