第2話 相園美咲
「へえ?相園と同じクラスとは、面白いことになったなあ?」
「ああ、ああ…どうしたもんかなあ。」
現在時刻は22:00。場所は、今日から住むことになった神聖庁【特待生】の寮だ。まさかのまさかで神聖校の学校内にあった。なんだか外に出ずに一週間とか過ごしそうで怖い。はあ、外が恋しいよお。
「相園には暫く俺は会ってないなあ。久しぶりに3人で遊んで…みたいもんだ」
「…」
シゲが一瞬言葉に詰まったのは、"3人"のところだろうか。
「"3人"って響きが、なんだか懐かしく感じるよな。俺たちって最近"まで"3人だったのに…な。」
鈴白凛という1人の少女を思い出してしまった。今はもう、思い出すことしか叶わない少女のことを。
「あの日から、決めたんだろ?」
「ああ、決めた。神聖庁で何があろうが俺は折れない、絶対に」
◇◇◇
あの日_"大災害"の日、病室で神聖庁への招待を受けた後のこと。
「じゃあ、僕はそろそろ帰るよ。功咬君、強制しておいてなんだけど、世界級魔法使いを本気で目指してる場所だってことは、肝に銘じておいてね。それじゃあ僕は…」
「折れませんよ。」
そのまま帰らせたくはなかった。
「僕は蜘蛛の害悪種に追い詰められた最後に思ったんです。なんで俺はこんなにも無力なんだって。適当な考えで指揮を執って、、全滅寸前だって誰かが言ってきました、僕の…親友も目の前で死んだんです。僕が悪かったと言われたらそうなのかもしれない。でも僕にはあれ以上のことは出来ないかもしれないとも思ったんです。だから、あの時思ったんです。
"力が欲しい"って。"害悪種"をぶっ殺せるくらいの、"絶対的な力"が欲しいって。目の前の敵に憎しみしかなかった。でも何も出来ずに死ぬ自分が悔しかった。
…それが生きてるんです。憎しみを晴らせないまま死ぬはずだったのに。しかも超魔法クラスの力があるそうじゃないですか。なんか思ったんですよ。
『害悪種を駆逐するために生き返ったみたいだ』って。僕は害悪種を絶対に許さない。あの時の僕は何も出来なかったけど、何の理由もなく人を、凛を奪った害悪種を絶対に許さない!
決めたんです。"誰も失わないために"、"害悪種を駆逐する"って」
精一杯の心の叫びだった。誰かに聞いて欲しかった。
「君はいつか世界を変える、そんな風にまで感じさせたのは君が初めてだ。楽しみにしてるよ。」
◇◇◇
"害悪種を駆逐する"
その素質があると言うのなら、なおさらだ。
「凛の分まで頑張らなきゃな。周りはヤバイやつばっかみたいだけど、諦めるつもりもねえよ。」
「ついこないだまでお前も"才能ナシ"だったのになあ。俺も神聖庁なんて行ってみたかったもんだぜ。」
「シゲと別れるのはちょっと寂しいよ、泣きそうなくらいだ。」
「俺も"ちょっと".とか言われて泣きそうなくらいだ。」
「"超"寂しい!ヤバイ!泣けてきたから!」
別に嘘でもない。ずっと中学を過ごしてきて高校も一緒の予定だった親友と別れてしまった。知り合いもいないような場所で…知り合いはいるけど…仲良くしていけるのか。
「分かったよ。で、剛は…どうすんだ?」
「……なんのことかな」
「相園のことに決まってんだろ。放置するにも限界があるぞ。決めなきゃだめだ、お前自身でな」
「…分かってるけど、なあ…」
「まあ難しいのは分からんでもないがな。
何しろ相園は俺にとっては元"親友"だ。多少会ってないだけで、今から電話して話すことだって出来る。あいつの悩みを当てて相談に乗ったりするのが俺たちの関係だったかもなあ。けど…お前は違う。」
そう、親友だったのは嘘じゃない。でも違う。違うから困ってる。連絡を取りたかったのに出来なかった。
「何しろ相園美咲は剛にとっては、元…」
そうだ。
「"恋人"だったんだからな。」
◇◇◇
時間は今日の10:12。教室到着から数秒で相園美咲を発見。視線を逸らす。
「ええ…今日からこちらに編入することになりました。功咬剛と言います。…みなさん、どうぞよろしく。」
やっぱりというか、全然反応ない。冷ややかな目線達、なぜかニヤニヤしてる不良みたいな顔の男子、そして相園美咲。
気まずい。
「よろしくね功咬君。私は担任の浜百合よ。よろしくね。功咬君はそうね、あの席に座るように校長が決めたそうだから。」
え?美咲の隣?あ、美咲とか言っちゃった。というか校長どうせ「中学一緒だから話しやすいでしょ⁉︎ていうか相園ちゃん可愛いよね!」とか適当な考えで決めたんだろうなあ。会って初日で考えで読めるはずもないか。
取り敢えず相園美咲さんの隣へ座ることにする。座ったけどヤバイわ、心臓の鼓動がおかしい。美咲が気になってクラスのことが吹っ飛んでる。美咲とか呼ぶ権利はもうないのかな、ないよな。相園のやつこっち見てないようよな気がする。やっぱり嫌いになったりとか?いや、気まずいんだろうな。俺もだし。
相園美咲は俺の元カノだ。親友だったのは中1の頃まで。俺が告白した。彼女になってからもシゲと3人で遊んだり、それに…キスとかしたり?ああなんか恥ずかしくなってきた。でも気まずい理由は一つ。
俺から別れを切り出したんだ。
嫌いだったわけじゃない。絶対に。愛してるとまで言っていいくらいだった。あいつの為だった。
だって美…相園さんは、俺やシゲとは違ったから。
「才能」があったから。中学3年の最後に別れを切り出した。神聖庁に行くんだ。神聖庁は神奈川、俺は東京、そんなに会えるわけでもないだろう。彼女は言ってたんだ。
"エリート魔法使いになってみんなを幸せにしたいんだ"って。
中2の頃に話してくれた、忘れてなどいなかった。だって凄く輝いた目で俺に話してくれたから。あいつが結果を知った時の表情だって輝いてた。毎日あいつは努力を始めた。本気で魔法の勉強を始めて、中2の頃より会う機会も減った。本気なんだって分かったから、だから自分には才能がないと知って、思った。好きだったから
「俺のことは忘れて欲しい」と。俺を忘れるべきだと、魔法使いになるためだけに神聖庁で過ごしてもらうために、俺の事を考える時間さえ勉強してほしいと思った。だから別れた。連絡を取れる関係ですらなくなったんだ。
美咲は、俺の言葉を聞いて悲しそうな顔をしていた。俺に未練があることを知って欲しくなかったから、嫌いになったみたいな事を言ってしまった。
「分かった」って、それっきりだった。
そして今はその相園さんの隣にいる。あいつを傷つけたんだ。俺の都合でまた付き合おうなんて自己中にもほどがある。美…相園さん、俺が嫌いだと思ってるだろうし、あいつももう冷めたかもしれないしな。1年くらい経ってるし。
「編入生も来たことだし、能力測定しましょうか。」
神聖校での生活が始まる。相園美咲とどう付き合って行けばいいかは分からない。あいつの気持ちを聞いてみたいけど、恐い。こんなことなら別れなかったのに…神様の馬鹿野郎!なんてことを考えつつ、まずは相園美咲のことは頭の隅に置くことにした。なぜなら今から魔法育成のプロ達の
神聖庁の授業が、始まる。
主人公の気持ちを全部ぶちこんでみましたがいかがでしたか?
試験勉強で更新できませんorz春休みに本気出すので許してくだせえ