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ある女性のリベンジ前の独白

作者: 北野 大地

初投稿

 「彼」が引退すると知った時、残念だと思うよりも良かったと安堵してしまった「私」がいた


 きっと「彼」も「私」と同じ夢破れた人間、理由は違ってもお互いに共感しあえるかも、なんて下らない思考が「私」の頭の中に渦巻いている


 最低だけど、醜悪だけど、それでも「私」はもう一度「彼」と話がしたい


 だから地元のスーパーで出会った時、気まずそうな「彼」に笑顔で話しかけられたのは我ながらファインプレイだったと思う


 会話の流れで上手く「彼」の車に乗り込めたのも賞賛に値するね!


 車中の助手席では「私」がモデルを目指していた事、挫折してつい先日実家に帰ってきた事、そして「君と私は同じだね」などと、随分馴れ馴れしい事を言ってしまった


 けれど「彼」の横顔は昔と変わらず無愛想に口をへの字にしながら相槌をうってくれて、そんな姿がやけに懐かしく見えて胸の奥が熱くなってしまった


 「彼」と一緒なら


 会話が終わり、視線を落として瞼を閉じる。いい歳しながら膝の上で汗が滲んできている自分の掌を握り合わせ「彼」の横顔に向き直り「あのね」と話しかける


 「あの、私と「掴まって!!」」


 瞬間、「彼」の声に正面を向いた私は対向車線をはみ出しながら猛スピードで突っ込んで来る大型トラックを視認した




 どうして、何時もこうなるんだろう




 「彼」との関係は何時も後悔してばかりだ


 幼稚園の頃から一緒にいたのに、些細なことで話さなくなって、遠ざかって行く

「彼」を追いかけもせずに、勝手に悩んで、キツく接してしまった




 もし、やり直せるなら




 余りにも激しい衝撃に霞んでいく意識の中、「私」は真っ白な空間に投げ出されたような浮遊感を得た




 伝えたかった事があるんだよ? 




 言葉を紡ごうと唇を動かそうとした瞬間、一気に身体が墜ちていく感覚に見舞われ、そしてーーーーーー




 「私」は自分の部屋のベッドから転がり落ちていた




 と同時に自分の身体がやけに軽く感じて、"昔置いてあった”姿見の前に無意識に立っていた


 そこには25歳の自分よりも小さく、肩まで髪を伸ばしていた中学生の頃の「私」自身の姿が眼に映った


 そう、「私」は12年前の過去の自分に『転生』してしまったのだ


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