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9話 クラスメイト

大雑把に書き上げた作品でしたので、少し肉付け作業をしております。

その為、1話ごとの文字数が異なりますのでご了承下さい。





『下條さん凄いわねー!』

『花蓮様も凄いじゃない!』

『委員長、意外と頭良かったんだー』


嫌々、意外と、なんて言葉はこの学校には不釣り合いですよ?

れっきとした進学校ですからね。



お昼休みの時間、皆が騒いでいるのは掲示板に張り出されたテスト順位だ。

上位10名までは氏名が公表され、それ以下はクラスと出席番号から割り当てられたコード番号が並んでいる。



1年生の1位は下條さん、2位は花蓮、3位が菊池君(委員長)と上位を私達のクラスが独占していた。その下に連なるコード番号も0101が上位の方に多く見られ、私達のクラスは凄いなーなどと驚いた。


私のコードは〈0101026〉1年1組26番から割り当てられた番号を探して見たら、35位の欄にその番号が記されていた。


因みに、2年生の1位は森ノ宮君、3位に薫様、8位に暁君と生徒会メンバーはトップ10入りしている。

言わずもがな、3年生の1位は西園寺君、2位は東雲君だった。

(人じゃ無いね!)




クラスに戻って見れば大きな人の塊が3か所に分かれて騒いでいる。


1つは下條組。

爽やか系のイケメンが多く、少数の穏やか系女子と和やかに歓談している、の図。


2つ目は花蓮組。

大手優良企業の御子息ご令嬢が周りを固めて褒め称えている、の図。


3つ目は委員長組。

賑やかな女子と元気な男子に担がれて踏ん反り返っている、の図。



これはどう見ても委員長組が面白そうだ。

そこには仲良しの帆夏ほのか(堀内さん)達も加わっていたから、尚更そちらに足が向いたと言う事もあるけど。


「ふっふーん。これで分かっただろう諸君。僕はスポーツ推薦だけでは無く、実力もあるのだよ!」

鼻の穴を大きく膨らませて話す委員長は滑稽だけど愛嬌がある。

周りの友達も「はいはい」とか「分かった分かった」とか「そん位にしておけよー」とか半分宥めて半分楽しんでる感がある。



私は知らなかったけど、委員長はサッカーのスポーツ推薦で入学しており、地元のプロサッカーチームのユースに席を置く注目株(注:本人談)なんだそーだ。

まあ確かにヒョロリとした身体つきとか、若干長めの髪の毛とかは当てはまる節はあるけどね。





そんなワイワイと楽しい昼休みに、一陣の風が吹き込んだ。





「撫子ちゃーん!君、凄いね!」

「撫子ってオレより頭良いかもなー」

「やっぱりオレ達の教え方が良かったんだよ」


森ノ宮君、暁君、東雲君の3人がいらっしゃった。


下條さんの周りにいたクラスメイトを押し退けて、彼女の周りを固める3人に皆の視線が釘付けとなっていた。

困った様に下を向く下條さんは、黙ったまま一言も発しない。

それを気にする事も無くしゃべり続ける上級生に、何だか違和感を感じる。




それを横目に、あちらこちらで囁かれる噂話に拍車がかかる。




『やっぱり下條さん勉強してたんだ』

『私達が誘っても来る訳無いか』

『勉強もしないで遊んでる私達なんて滑稽だったんだろうね』

『じゃあ、生徒会の人達に勉強を見て貰ってたの?』

『放課後になると直ぐ居なくなるもんな』

『彼女に話し掛けても、ちゃんとした返事って帰って来たこと無いよね』



うわー、皆さーん、聞えるよー、聞こえてますよー!?

このまま傍観していて良いのかと自問自答をしていると、語気を荒げた声が脳天に突き刺さりました。




「皆さん、学校へは学びに来ているのですよ」


うん。知ってるよー。



「悔しければ皆さんも努力なさい」


はーい。花蓮ってば、お母さんみたいだよー。




それで終われば良かったのに、余計な言葉が花蓮に向かって投げかけられた。



「花蓮は努力が足りなかったのか?それともこれ以上は無理かな?」


ちょっと!東雲君!何て事を言うんだよーーー!



だって花蓮はずーっとアメリカで生活していたんだよ?

国語とか歴史とか社会とか分からない事は多い筈なのに2位って凄い事じゃないの?

日本に帰って来て1年も経っていないのに、だよ?

それって彼女の努力に対する侮辱じゃないか!



「・・・努力が、足りなかったのでしょう」



あれ?花蓮が、引いた?

ハンカチを握っている指先が真っ白になっている。



「ふーん、認めるんだ」


東雲君、それ以上追い込むなら、私、黙っていないよ。



「次は、負けませんわ」


花蓮の視線は下條さんを捕えている。



「・・・・・」


顔を上げて視線の合った下條さんは、花蓮の気迫に言葉が出ない。みたい。



「下條さん、黙っていれば何とかなると思わないで下さい。言いたい事が有れば言って下さって結構です」



それは暗に、何時も言葉少ない下條さんに対する嫌味に聞こえるけど、私には言いたい事を言えないでいる下條さんの背中を押している様に感じられた。




視線を合わせた花蓮は静かに待っている。



視線を外した下條さんは無言で俯いている。




// キ~ンコ~ン カ~ンコ~ン //




絶妙のタイミングで午後からの始業のチャイムが鳴り響き、凍りつきそうになっていた教室は上級生の退室によって常温に戻った。





午後からの授業は国語だった所為なのか、お昼に取った食事も相俟ってか、睡魔との戦いを強いられる時間だった。特にこの先生は朗読が大好きで「ことばのたまてばこ」と言うラジオ番組から抜粋する事が多く、本日は童話を取り上げて朗々と読み上げる話は子守唄となってしまった。


子守唄を聞きながら視線を巡らせれば、相変わらず視線を落とし気味の下條さんは心此処に在らずって感じがするし、逆に先生を睨みつけるようにして集中しようとしている花蓮がいじらしくも在る。


そんな二人をチラチラと横目に伺う人も居れば、関係無いわとマジで寝ている人も居る。




しかしここ最近のゴレンジャーは如何なものかと思うんだよね。

下條さんの元に入れ代わり立ち代わりで現れては、一緒に帰ろうとかお昼何処で食べるとか結構しつこく誘ってる。


それが入学当初からほぼ毎日の様に繰り返されるんだから、クラスの人達も結構扱いに困るのよね。

始めは遠巻きに見てたけど、勇気のある女子がゴレンジャーに声を掛けて、上手い事その輪の中に入ったもんだからさー。逆ハーがイケメンを取り囲む只のハーレムになっちゃってね。


そりゃーもー五月蠅いのよ。(笑)


花蓮がチラリと「もう少し静かにして頂けないかしら」と呟いたら、それを聞き逃さなかった東雲君が「仲間に入りたいの?」と明後日の返答をするし。


私から見ればどっちも可哀想なんだけど、どっちも助ける事は難しいのよね。

で、結局傍観してるだけなんだけど、めちゃめちゃ歯痒いのよ!



多分、多分だけど、下條さんがまだ選択をしてないからじゃ無いかなと思うのですよ。



ゲームだったら、本編に入る前に選択しなきゃいけない筈だけどさ。


でも現実だとやり直しは利かない訳じゃ無い?

(何?それともやり直し出来るの?また入学式から始めるの?勘弁してよねー。周りはいい迷惑だよ。今までの経験でそれは無いと思ってるけどさ)


下條さんが誰かと二人でいる所を目撃もしていないし噂も聞いてない。


だから、余計にゴレンジャーも必至なのかも知れない。


私は偶々攻略者との繋がりが出来てしまったけど、それ以上の接触も無いしそんな素振りも全く無い。偶に下條さんの様子を聞かれる事が有るだけで、袴田先生絡みで暇つぶしの材料になってるようなもんだと思ってる。





夏休みまでに決まれば御の字。

遅くても夏休み明けには何らかの道筋は出来るのでは無いかと踏んでいるんだけど。





その後、本格的に寝てしまった私は帆夏に起こされるまで、授業が終わった事に気が付かなかった。




少し青白い顔をしていた花蓮の事が気に掛ったけど、彼女はそのまま授業を受けて、部活に参加する事無く帰ったらしい。


同じく色を失った状態だった下條さんは、授業を受けて部活にも参加したらしい。


意外と彼女はタフかもしれない。




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