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4話 生徒会




生徒総会の資料は、その名の通り生徒会室に置いて在る。


「失礼します。1年1組、資料を取りに来ました」


校舎棟とは別棟にある生徒会の館。

旧校舎の赤レンガで作られた図書室を残した建物だと聞いている。

重厚な木の扉は開け放たれており、その中の空間は図書室だったとは思えない程煌びやかな装飾で飾られていた。

天井からぶら下がる大きなシャンデリア、壁はベージュ色と落ち着いているが、窓に掛かるカーテンは深い緑色でそれを纏める為のタッセルは金色だ。

足元の絨毯にはココの校章と同じ模様が描かれていて、土足で踏み込むには少々勇気がいる。


「1の1さんね。こっちの机の上に紙が貼ってあるから、自分のクラスの分を持って行って下さいね」


笑顔で教えてくれるのは、「緑の君」と呼ばれる森ノ宮君。


はい、と返事を返してその部屋へと足を踏み入れた。


足元の絨毯は毛足が長く、足を取られそうで歩きにくい。


「きゃっ」


横から小さな悲鳴が聞こえたと思ったら、下條さんが足元に転がっていた。


「大丈夫かい?」

何処から現れたのか、「青の君」と呼ばれる東雲君が下條さんを抱きかかえて、近くに置いてあるソファへ座らせていた。


「あー、膝、擦りむいてるー」

総会資料を纏めていた「黄の君」と呼ばれる暁君が、ポケットから可愛らしい絵柄の付いた絆創膏を取り出した。


「何故、何も無い所で転ぶのか分からん」

窓際の大きな背もたれに寄り掛かって本を読んでいた「赤の君」の西園寺君が、さも面倒なと言う感じで溜息を付いている。


「馬鹿ね、彼女は絨毯の上を靴で歩く事なんてした事無いのよ。ましてやこんな毛足の長い絨毯なんて、歩きにくいに決まってるじゃない」

部屋の奥から出て来た生徒会紅一点の「薫様」は、手にティーセットを乗せてにこやかに歩いて来る。


「薫、知り合いか」西園寺君が目線を上げて問う。

「ええ。私の茶道の先生よ」薫様は得意げに答えて、先生大丈夫ですか、とお茶を勧め始めた。


一斉に下條さんに集まる皆の視線。


頬を染めたまま俯き気味の下條さん。やっぱり儚げだあー。


「あなたも一緒にどーお?」

薫様の美しい笑顔を向けられたけど、この場合のお邪魔虫は退散と言う事で。

私はこれから職員室へ行かなければいけない事を告げて、その場から立ち去る事に成功した。




勿論、資料は持たないで。

(多分、暁君か森ノ宮君のどっちかが持って来てくれるだろうしね)




「ほぉ~」 と溜息を1つ付いてみる。


あれが目出度い第一次遭遇というヤツか。

これから彼女は頻繁にあの生徒会室へ行く事になるんだろうなー。

なんつーか、大変そう。


でも、薫様が意外と話の分かる人物みたいだから、まあ何とかなるような気もするし。

さっきの西園寺君と薫様のやり取りだって、下條さんの状況を分かってくれていたからなんだしさ。




下條撫子さんのお家は「下條流」と言われているお茶の家元で、撫子さんも中学生の内に師範役となっている人なのだ。

彼女のお家は純和風のお屋敷で、畳の部屋か板の間の部屋しか無いらしい。

お家では和服を着ているから、当然足捌きもすり足ぎみで、大股に歩く習慣は皆無に近い。



私だってあの部屋は歩きずらかったもの、下條さんなら尚更だと思うよ。


でも、転ぶかな? 膝、擦りむくってどんな転び方したの? ん~謎だ。



しっかし、彼等のあの行動の速さったら凄いわー。

私が体を動かす隙も無かったもん。

ま、私は居ないのと同じだからいいんだけどね。


大体私が胸キュンポーズで「先輩(ハート)嬉しいですぅ」なんて行動は取れませんから。

目線が33歳じゃない?どれだけキラキラのイケメンでも10代には萌えません。

どっちかって言うと社会人1年生の新人を見守るお姉さんの気分に近いかな。

だから心の声では君呼びになっちゃうんだよね~(笑)



まあでも、役得役得~ なんて思いながら校舎へ戻ろうとしていたら、少々怖い顔をした花蓮がこっちへ来るのが目に入った。

ココで生贄にされるのは勘弁!と、校舎の陰に隠れて何とかやり過ごす。


花蓮の向かった先は・・・赤レンガか、やっぱり。


うーーー残念っ!

もう少しあそこにいたら、メインキャスト勢揃いな所を見られたのよね!?

きゃー! 何てカラフルなのかしら!


これなら毎日通う学校も、結構楽しく過ごせそう。





1話から4話まで、見やすいように改行を加えました。

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