3話 ゴレンジャー
赤が西園寺清隆(さいおんじきよたか)3年生、生徒会長。
西園寺グループ(ホテル・不動産など)の御曹司。
青が東雲省吾(しののめしょうご)3年生、生徒会副会長。
華道、東雲流本家の二男。
黄が暁将之介(あかつきしょうのすけ)2年生、補佐兼会計。
警視総監の長男
緑が森ノ宮遥(もりのみやはるか)2年生、書記兼会計。
森ノ宮家具(大手チェーン店・主に輸入高級家具)の御曹司
ピンクが桃井薫(ももいかおる)2年生、書記。(生徒会の紅一点)
P.P.P(ファッション業界のトップブランド)社長の長女
上記は私が入学した桜ノ宮学園の生徒会役員である。
ちなみに、名前の前に示した色はそれぞれの髪の毛の色である。
ついでに、簡単なプロフィールは周りのざわめきの中から拾ったものである。
入学式の時、壇上の上に並んだ生徒会役員を紹介された時はショックで唖然としたのを思い出す。
記憶の隅に置かれていたあの乙ゲーの攻略キャラ(?)とかが勢揃いしていたからだ。
壇上の上に立ち並ぶ皆さん、無駄に美人だなーって思ったのも一瞬だったよ。
名前を紹介されてその度に揺れる髪色が、2次元の煌びやかな色合いと重なり当てはまってしまうと、もう唖然とした上に可笑しくて笑いを堪えるのに必死だったもの。周りが頬を染めて羨望の眼差しで見つめていたから、多分私もその一人に紛れられたと思っているけどね。
だって!笑いを堪えていて顔が赤くなってたなんて、誰も分からないでしょ?
お願いよ、それ位許して、ね?
大体、何で私が此処に居るのよっ!って事の方が物凄く重大な事なんだからさ!
去年中学3年の冬、高校受験の願書を出す時に、私はこの高校を選択するつもりは毛頭無かったんだ。
見覚えのある学校名に見覚えのある学舎。
出来れば違って欲しいと言う願望からか、敢えて前世の記憶は引っ張り出さないようにしていた気がする。関わらなければそれまでだし、自分には自分の未来があると信じてさ。
ついでに、前世では苦手だった勉強も「もっと真剣にしておけば良かった」という思いもあって結構努力したんだよ! そのお蔭で頭の方ももっと上の高校を目指せる出来にまでなって、学校の先生からもT大付属高は大丈夫って言われたのに。
一応、滑り止めで願書を出したのは桜ノ宮学園。
実は母の母校で、父の弟が理事長って事もあって半強制的に決められた。
結果。お分かりの通り、T大付属高は不合格。
こっそり取り寄せた点数表を見たが、不合格になるような点数では無かった。
中学の先生にも聞いて見たいけど、私の姿を見つけると逃げ出すと言う行動を見て、これは父と母の策略だろうと諦めたのも早かった。
桜ノ宮学園はT大付属高の次に難関な学校だったし、龍ちゃんが時々部活の指導に来ている事も知っていたから、その辺は直ぐに諦めが付きました。
それに桜ノ宮の制服はPPPブランドのデザインで兎に角可愛いしね!(笑)
ブレザーとベストは無地の紺色(胸元には校章のエンブレム)で、スカートは紺地にピンクとグレーのチェック柄、ブラウスは白の丸襟、ソックスも校章の刺繍入り・・・細かい物にまで滅茶苦茶指定が多く、その分かなりお金も掛る。
だから金持ち学校って言われるんだよ。
因みに、T大付属高の制服は紺色のプリーツスカートに紺色のブレザーで超シンプル。
前世での制服に酷似していて懐かしさが半端無いっす。
「道明寺さん、同じクラスですね!」
窓際の席だったから、ついつい外を眺めて考え事をしてしまった。
声を掛けて来たのは私と同じような色合いの子で、でも私より身長が高い子。
確か、母側の系列会社のパーティーで何度か会ったかな。
「堀内さんも同じクラスだったんだね!」
名前を憶えていた事に驚いたのか、「覚えていてくれたんだ」と彼女は嬉しそうに頷いてくれた。
その後も、似たような子と似たような会話を数度かわしているうちに、なんとなく堀内ほか2名の合計4人で仲良し組が出来上がってしまった。
でもまあ、非常に嬉しい状況です。私を含め、みなさん、普通っぽいから安心しちゃった。
安心したら丁度お昼休みになる時間で、4人で仲良くお弁当を食べる事になったのも嬉しい出来事だった。
直ぐに打ち破られちゃったけど。
「お久しぶりですわね、さくらさん、ビュッフェには行かれませんの?」
来たあー! 道明寺花蓮(どうみょうじかれん)、名前から分かる通り御親戚。父の弟の末娘。さっきチラリと話したけどこの学園の理事長の娘で、これから登場するヒロインのライバルという立ち位置のお方だ。
「うん。今日はお弁当を作って貰ったからね」
チラリと私の手元に視線を移した後、ふっと小さく笑って「それではまた」と通り過ぎて行ったのですよ。その後ろには3人のお供を従えて!(王道だわー)
「花蓮さまって噂通りにお美しいわね」
「先日までアメリカに住んでいらっしゃったのでしょう?」
「桜ノ宮に通う為にお戻りになられたってお聞きしたわ」
「うん」
どれも本当の事だから「うん」としか言いようが無いんだよね。
花蓮とは小さい頃に数度会った事がある位で、一緒に遊んだ事は無い。
彼女が5歳になる頃、アメリカ人の母親と共に渡米して以来、今まで顔を会わせた事も無かったのだ。
道明寺花蓮。腰まで伸びた紫色の長い髪。小さな顔に零れんばかりの大きな瞳。ぷっくりとした唇は飴細工で出来てるみたいに美しい。
170センチ越す身長に、見事なプロポーションが張り付いているんだから、当然アメリカでも有名だったらしい。
私がこの地に来て、早い段階で両親から聞いた「道明寺花蓮」って名前にドン引きしたけど、実際会って見れば普通の赤ちゃん(でも髪の毛は紫色だったんだよね~)だし、会話らしい会話をする事も無く別々の道を歩く事になってたんだ。
だからさ、彼女の事はさっぱり忘れてたんだよ。
「西園寺様の許嫁なんですってね」
そうそう。一番の人気キャラ(妹情報)、通称「赤の君」の許嫁さんでした。
花蓮は3姉妹の末娘だから、出来るだけ良家に嫁がせたかったみたい。
「道明寺さんは?いらっしゃられないのですか?」
はい、いらっ、いらっしゃられませんよ。(口まわらんって、)
「うん。うちは兄様がしっかりしてるからね」
そんなもん居たら困るわ!龍ちゃんと仲良し出来なくなるっちゅーの!
「おーい、今日の日直―、生徒総会の資料取りに行ってくれー」
「「はーい」」
本日の日直は、私と、下條撫子さん。
下條さんが私を見てにこりと微笑む顔は、儚げな美少女です。
三つ編みに編まれた淡い水色の髪の毛先が揺れてます。
少し下がり気味の目尻が愛らしくて、小振りな唇から響く言葉は妖精の囁きの様です!
(妖精の囁きってどんなの?って聞かないでねー。分かんないから!)
背恰好は私と似た感じだけど、胸元辺りがやや少し、ほんのちょっとだけ、窮屈そうに見えたのは目の錯覚かしら?
そんなモロモロから何かを察するかもしれませんが、間違いなくヒロイン様のご登場です。