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16話 幼馴染

申し訳ありません。

2話から登場している「森ノ宮遥」君ですが、登場する度に名前を間違っておりました。見直して訂正しましたので此処で報告させて頂きます。

もしかしたら、見落としがあるかも知れませんが、気が付き次第訂正します。





「帆夏さーん、居るー?」

「はーい、待ってー今行くー」



帆夏と私は文化祭で使う『看板』の作成中だ。

ダンボールに白い模造紙を張り付け、そこに今では希少となりつつある“丸文字”を使った文字を書いている。

主に文字を書いているのは帆夏で、彼女はイラストも上手く色使いも大胆で、手伝っている私まで楽しくなる。



「さくらさん、少し待ってて」

「うん。いーよ」



私は帆夏に指示されるままにショッキングピンクやら蛍光グリーンなどを使って隙間を埋め尽くすのに没頭していた。







今、学校の中は文化祭の準備に忙しい。


授業が終われば机や椅子は教室の後ろに追いやられ、剥き出しの床にはブルーシートや新聞紙が広がり騒然となる。





前世以来ぶりにブルーシートと対面した時は、何故だか営業部の課長を思い出して1人ケタケタと笑って、クラスの皆から要らぬ心配されて困ったけどね。

課長ってさ、頭バーコードの見た目だったけど、凄く良い上司で、桜の季節になるとブルーシート片手に出社して、そのまま花見用の場所取りをしてくれる人だった。

わざわざ有給使って一人で場所取りしてるの。

新入社員が「代わります」と言っても笑って断る人だった。


その見返りかどうかは分からないけど、宴会の最後には趣味の詩吟が披露されるのがお決まりのパターンで、上手いのか下手なのかは分からないけど、終わる頃には人だかりになって拍手喝采を頂いて嬉しそうにしていたっけ。

そして二次会に誘われても断って、ブルーシートを片手に帰って行く姿を思い出したら泣きそうになってしまった。






あの課長もイベント事が大好きだったなー、なんてぼんやりしていたら「手伝ってー」の声に驚いて、関係無い所にオレンジ色のペンを置いてしまった。



(うわー帆夏にどやされるー)



私が当初予想していたココの文化祭は、何でもお金で処理するのかと思っていたけど、意外な事に手作りが当たり前で、皆もやる気パワーが全開だ。



委員長始め他の男子生徒は脚立に乗って電球にカラーフィルムを覆ったり、窓に掛っているカーテンを外したりと力仕事全般をしてくれている。



花蓮や多数の女子生徒は縫物をしながらおしゃべりをしていて楽しそうだ。



私も最初は縫物部に在籍していたんだけど、度重なる花蓮からのダメ出しとの遣り取りに「2人を見てると針が進まない~」と言われ(笑われたのは何故だ?)帆夏が私を連れ出してくれたのは、不本意だけど嬉しかった。



威張れる事では無いけど縫物全般向いてません。

昔からそうだったけど、生まれ変わってもその辺は改善されておりませんでした。



花蓮も他の友達もみーんな上手なのは何故!?







「・・・それじゃあ、帰りが少し遅くなるけど、寄らせて貰います」

「ごめんね。急に変更しちゃって・・・」




教室の入口付近で話している声が聞こえたので、何気なく顔を上げて見れば、さっき呼ばれた帆夏と森ノ宮先輩が数枚の紙を手に話している。



その雰囲気はなんて言うか良い雰囲気で、先輩後輩よりもっと近しい感じがする。



『遥とは幼馴染だからねー』



遥、と上級生に対する言葉使いじゃない呼び方に一瞬驚いたけど、幼馴染だと言って笑って教えてくれた帆夏は何処か嬉しそうだった。





帆夏は茶色組(髪の毛)の中でも余り目立たないタイプだ。

容姿は私より少し背が高く、全体に女性らしいぽっちゃりとした体形で可愛らしい女の子タイプだ。首元辺りまでのふんわりとしたボブスタイルが似合っていて、どんぐりの様にまん丸い瞳がリスみたいで愛嬌がある。


確か、金融庁の証券取引等監視委員会委員長の孫で、父親も金融庁に在籍していると聞いたがお堅いイメージは無く、逆にクラスの誰とでも気さくに話をする彼女はこのクラスの癒し的存在だと私は思っている。



その直ぐ横に立ち並ぶ森ノ宮君はとても背が高い。

ゴレンジャーの人間は大概に人外で、全員が178センチ以上の身長で顔が小さい。薫様は女性なのでそれに当てはまらないが、彼女も女性としては175センチと高身長である。そんな中でも一番の長身なのが森ノ宮君で186センチだとか聞いた覚えがある。


が、しかし、線が細くてヒョリとした彼は圧迫感が無く、存在自体が軽いのでは無いのかと思う事もしばしばある。

雰囲気も飄々としていて掴み所が無く、時々ではあるが存在自体を忘れる事もある。


(ごめんねー)



幼馴染って言葉に私は憧れがある。

今も昔もその言葉に該当する人が居ないから余計なのかも知れないけどね。

昔は父の会社の社宅に住んで居たが、隣近所はじいちゃんとか単身赴任のお父さんとかで、近い年代の遊び友達となり得る人は居なかった。


あんなにカッコいい幼馴染が居たら、私の考え方ももう少しは可愛げがあったんじゃ無いかと思うんだけさー。



(はあ~ 見てるだけで胸がキュンとする~ )




そんな二人のほんわりした雰囲気を邪魔するかの様に、教室のドアがガラリと開けられた。



「あっ! す、すみません」



撫子さんは担任から呼ばれて職員室に行った筈なので、こればかりはしょうがない事なのだ。

撫子さんが悪い訳じゃない。

入り口の前で仲良く話していたお二人が悪いのに、何でか撫子さんが謝ってしまった。



「ごめんごめん、僕らがこんな所で話してたのが悪かったんだよね」

「下條さん、気にしないでね」



それじゃ、と言って帆夏は私の隣へ戻って来たが、撫子さんは未だ入り口でおろおろしている。

そりゃあ森ノ宮君に話し掛けられて素通りは出来んよねー。



隣で仕事を始めた帆夏を見たが、彼女は何かを気にする風も無くペンを持ってイラストを描き始めてしまった。


私はどうにも気になって入り口の方を見ていたが、横からクスリと笑い声が聞こえて来て思わず帆夏の方を振り返った。


「もう直ぐ帰るわよ」


そう言った帆夏の声が聞こえたのかの様に、森ノ宮君は帆夏の方をチラリと見て教室を出て行った。




「流石だねー」

「状況はちゃんと見る人だからね」

「ふうん。そんな人がわざわざ来るって事は、急用だったの?」

「文化祭で使う食器。遥の所からレンタルするんだけど、その打ち合わせの予定が変更になってしまったの」



森ノ宮君のお家は家具屋さんだけど、それ以外にも食器とか茶葉とかも扱っているそうだ。

食器は売買する他に、レンタルとしてイベントやパーティー等に貸し出しもしているとは流石と言うべきなのかな。



1年1組では飲み物を提供すると決まった時、帆夏の提案で私達のクラスは食器と茶葉だけは良い物を使おうという話に決まり、それ以外は全てが手作りと言う事で話しは纏まっている。



「他のクラスからもレンタルの申し込みがあったらしくて、最初に選ばせるって約束したからってわざわざ来てくれたの」



そう言って笑う帆夏はとっても可愛い。



「楽しみだね、文化祭」



「うん!」



花の様に咲いた笑顔に、心の中で「ごめんね、帆夏」と謝っておこう。




だって、本当は楽しみじゃないんだもん!



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