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10話 陸上競技大会





7月に入ると校舎の至る所で賑やかな声が響き渡るようになる。

後1週間後に行われるクラス対抗陸上競技大会の練習をしているからだ。

この期間は全ての部活動が休止となり、クラス内での練習に力が入る


優勝したクラスには『夏休みの宿題が半分になる』という特典が付いている為、結構みんなが本気になっている。

それに当日(土曜日)は学校開放日になる為、家族やOB、近くの人達などが見に来るのでかなり賑やかになるんだとか。

(露店も立ち並ぶと聞いたから結構楽しみにしていたりする)




この行事を切っ掛けにクラスの雰囲気も良くなり、一気に親交が深まるという学校側の作戦だと思っている。

うちのクラスも下條さんと花蓮の攻防に少々ピリピリムードだったから、丁度良い行事が来たなーなんて他人事見たく思ってた所だ。


下條さんは変わらず儚げで、特別だれかと友達関係を構築出来ないでいる。その原因は生徒会のゴレンジャーが頻繁に彼女の所へ遊びに来る事が起因していると思われる。でも最近はその頻度も減って来ており、特に西園寺君と薫様の姿を見る事は少なくなったと、クラスの女の子達は残念そうに話していた。



花蓮は花蓮でそんな下條さんに対して厳しい態度を取るもんだから、ゴレンジャーからは鬱陶しく思われ始めている。

花蓮も下條さんの事は放っておけば良いのに、彼女なりに構うもんだから事がややこしくなってる気がするのは私だけでしょうか。




『触らぬ神に崇り無し』








そんな風に思っていた事すら忘れていた週末の土曜日は、気分が上がるほどの良い天気となった。




クラスのムードメーカとなりつつある委員長の菊池君が声を張り上げる。

「1の1ー!夏休みのー宿題軽減の為にー、優勝するぞおー!」

と拳を高く掲げたら、クラスメイト達も満面の笑みで拳を高く掲て声を揃えた。

「おーっ!」



『女子1000メートル出場の生徒は第2体育館前に集合して下さい。男子走り幅跳び出場の生徒は武道館前に集合して下さい。男子ハードル出場の・・・・・』



放送部のアナウンスに従って空色のジャージの群れが右に左にと走り抜けて行く。




私は最初の競技1000メートル出場だ。

軽く準備運動をしてから競技にのぞむ。

周りを見れば茶色系の人種ばかりで、その中に1人薄い緑色の人がいるだけだった。



//ピッピッピ、ピーッ//



電子音の合図で走り出す。

始めは後方につけてゆっくりと。500を超える辺りから徐々に中ほどに移動。300を切ったら徐々にスピードを上げて、残りの100でラストスパートだ。

そしてゴールが見えたと思った時に、横から緑色の髪の毛が通り過ぎた。



「あなたの後ろ、走り易かったわ」

緑色の人が私に声を掛けて通り過ぎて行った。

(やっぱり2番かあー。あと少しだったのにな)分かってはいても少しは悔しい。



「何故抜かれるのですか」

「はえっ?」

横を見ると、腕組みをした花蓮が立っていた。

「余裕が有った様に見えましたけど?」

「ひぇぇ!?」

「リレーでは全力を出して下さい」

「う、うん」

もしかして、見に来てくれたのかな。




後は午後の最後の競技、クラス対抗リレーに出るだけだったから、クラスメイトの応援に走る回る事にしたのだった。




意外な事に、儚げなヒロイン下條さんは足が速く女子100メートルで優勝。

花蓮は思っていた通り、女子ハードル・女子走り幅跳びで優勝した。

それ以外にもクラスの皆の健闘もあって、学年で1位、全校で2位と好成績を出している。



『最終競技、クラス対抗リレーに出場する生徒は、第1体育館西口へ集合して下さい。繰り返します。最終競技、クラス対抗リレー・・・・・・・・』



50メートルx4人で走る200メートルリレーは男女混合で行われる。

第1走者は委員長菊池君。第2走者はヒロイン下條さん。第3走者はバスケ部岡本君の予定が突然の腹痛の為補欠の私。第4走者はやっぱり花蓮である。



「岡本君、大丈夫なの?」

ストレッチをしながら委員長に聞いて見た。

「登校して直ぐ露店で買い食いしたらしいぞ。それも何件も梯子したから、教室に着く前に保健室に直行だとさ」

分かる!岡本君の気持ちは凄く分かる!朝から学園の中はお祭り騒ぎの様に賑やかで、私も『りんごあめ』『たこやき』『串焼き』の看板から目が離せなかったのだ。



「さくら、分かっているわね」

足元で靴の紐を結び直していた花蓮が、何時もより低い声で唸っている。

「分かってるよー」

全力で走ればいいんでしょ!はいはい。




//ピッピッピ ピー//




電子音で始まったリレーは、最終種目という事もあって物凄く盛り上がっている。



『第1走者、一斉に走り出しました!先頭は2年2組暁君、その後ろに続いているのは2年1組森ノ宮君、そしてその後ろを追っているのは1年1組菊池君です!』



『おおぉーーー!』と言う大歓声が聞こえている。



『第2走者にバトンが渡りました!現在1位は2年2組!続いて2年1組、あー此処で3年3組が3位に上がりました!そして1年1組、女子100メートルで優勝の下條さんに渡りました!』



『そこー!行けえー!』更なる大声援が会場を埋め尽くす。



『1年1組下條さん!早い早い!3年3組東雲君を追い越しました!おー2位の桃井君に迫っています!追い越せるでしょうかー!あっ!!!』




大声援が一瞬にして静まり返る。




2位の薫様に迫った下條さんは、薫様が落としたバトンを踏んでしまい、そのままバトンを踏んだ右足が宙に浮いて、背中から地面に落ちた。



薫様が駆け寄り声を掛けている。

救護テントから数人が駆け寄る。

先生達も駆け寄って行く。



数分、しゃがみ込んでいた人達の中から1人の男性が立ち上がるの見えた。

「龍ちゃん?・・・」


彼の腕の中にはぐったりとした下條撫子が抱えられていた。

その隣には袴田先生がいて、何処かを指して走り差って行く。

その後を追う様に龍ちゃんが消え、続いて薫様と東雲君も何処かへ消えて行った。




『お、お知らせします。クラス対抗リレーの生徒は至急放送部テント前にお集まり下さい』




暫くの間、龍ちゃんが消えた方を茫然と見つめていた。



「さくら、行きましょう」

花蓮に腕を取られて歩き出す。

「大丈夫よ」

(なにが?)と聞き返そうになる自分に嫌気が差した。




クラス対抗リレーはやり直しとなり私達のクラスは5位となった。

学年では1位をキープし、総合では3位。



総合1位は3年1組で、西園寺君と東雲君のクラスが優勝。

リレーではアンカーだった西園寺君が余裕で1位をキープしたままゴールしたが、盛り上がりに欠けたリレーとなった。



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