第5話 欲求不満?、でございます
H-Mティオールの余りにも衝撃的な行動に、意識を失ってしまった僕は夢を見ていた。
いや、夢と断定するには早いかもしれない。根拠も無いが。
ただ不思議と夢の気がした。経験、というやつだろう。
…夢、という事は認めておこう。
ただ………
『ご主人様。本日はこの様なお召し物でよろしかったでしょうか?』
『ご主人様。お口をお開けください。あ~ん』
何故僕がH-M ティオールに囲まれている夢なんだ!?
俗に言うハーレム、なるものだが……凄い複雑だ。
そもそも、僕は女性と接する機会が乏しい。
幼稚園時代は女性を意識する事など無かったものの、小中高は私立の男子校に通っていた為に知り合いの女性は家のメイドぐらいだ。
性を意識し始める年齢に異性が居ない環境下に居たせいで、耐性が無に等しい。
例えだが、外出時(とは言っても1年の内数える程度)に町中を歩く女性を見付けるだけで緊張してしまう。
気持ち悪いと思われても仕方ない。
直しようが無いからだ。
一時、叔父が家に来た際女の子つまり従姉妹を連れて来て無理矢理遊ばされた。
中2の時の話だが、緊張し過ぎて貧血を起こした。
まぁ、大きく言うなら『メイドを除いた女性恐怖症』。
メイドさんは話し方が大体似ているので女性、というより機械のイメージ。但しH-Mティオールとは別の。
……だからこの夢は相当に辛い。
汗腺から血が出そうだ。
死ぬのはお断りだがこの悪夢から抜け出せるなら安い代償だ。自分にとっては。
『ご主人様?先ほどから何かお考えになってるのですか?難しいお顔をされております』
一人?のH-Mティオールが話し掛けてきた。
質問なのか、心配なのか。
表情何一つ変わらないから分からないじゃないか。
「主な原因は君達なんだけどね…」
今気付いたが、僕は真っ白な部屋の中で大きめなソファに座っている。
その傍ら左右対称にセーラー服のコスプレをしたH-Mティオールが、ウェイトレスのコスプレをしたH-Mティオールが立っている。
『ご迷惑でしたか?』
今度はウェイトレス姿のH-M ティオールが問い掛ける。
やはり表情何一つ変わらない。
「迷惑、とは言い切れないけどそれに近い困惑は感じているよ」
言い方にもよるが責めているようにも聞こえる。
『困惑ですか…。一般男性からしてみれば幸福、と思えるのですが?』
「随分と面白い事を言いますね。夢の中ではそんな自我が生まれるのかい?」
『この夢はご主人様の思考・感情が入り込んでいるのでそれが原因でしょう』
なるほど、この夢は僕を基盤として作用しているのか。通りでH-Mティオールが人間的な質問をする訳だ。
「じゃあ何故君達はいるんだい?」
これが一番の疑問だ。
僕の基盤に何故コスプレ姿のH-Mティオールがいるのか。
返ってきた言葉は何とも疑い深かった。
『ご主人様の本能が、欲求が不満何です』