H-Mティオール…お手伝い用アンドロイド
何だか短編って人来ないので連載をする事にしました。
これは自信作なので見てくれて、感想くれるとありがたいです。
よろしくお願いします♪
科学技術というものは時が経つ毎に進歩をとけていく。
思い返せば今から数十年前、数軒に一台有るか無いかと言われた電話機。それが僅か数十年で
誰でも一台は持てる携帯電話に進歩した。
これは今からそう遠くも無い時代の話。
徐々にロボットが経済を支える形になりつつある
未来の話。
…………
『本日よりお世話させて頂きます。お手伝い用アンドロイドの"H-Mティオール"です』
近頃、日本のとある企業が販売した完全自立式お手伝い用アンドロイド『H-M ティオール』。
その容姿はアンドロイドの様に機械機械していない、まさに人間に近い容姿。
世間的なウケが関係しているのかお手伝い用アンドロイドはすべて、女性。
ロングカットからショートカット・黒色から多色。あらゆる要望に対応する為に、ハンドメイドである。
しかし、オーダーメイドに対応したハンドメイドでは時間と金が掛かる。
最高金額で家数軒分に匹敵し、安くても数千万円という程の高級さである。
喉から手が出るほど欲しい者は数多と居たが、そのあまりの人気に製作が追い付かなくなり
ある日事件が起きた。
『H-Mティオールによる暴行事件』
文字通りの事である。
詳しい内容は次の通り。
購入者がある日、感情を一切持たないH-Mティオールに痺れを切らして暴力を振るった。
当然ながらH-Mティオールはアンドロイドなので
痛みは感じない。敢えて言うなら殴った本人が痛い。しかし、毎日毎日幾度となく殴られ続けたH-Mティオールはある日こう言った。
『痛い………』
企業側が推測するには
H-Mティオールは完全自立式のチップを埋め込んであり、そのチップが恐らくテレビか何かで暴力に苦しむ人を見た。
そして、次に起きた事が購入者への反抗、つまり暴力だ。
苦しむ人を見た後、復讐する映像でも見たのだろう、暴力を振るう途中に発していた言葉も、
そのテレビか何かの言葉と完全に一致していた。
幸いにも企業側がこの責任を負う事も無く、購入者側の一方的責任となったが、新たな壁に企業はぶつかった。
『H-Mティオールが人間の様に感情を持てたり、出せたりする事』
元々がアンドロイドなので、彼女達に感情という概念が無い。今回起きた事件は自立式チップが『暴力を振るわれたら耐え、何時か復讐する』と解釈した。彼女なりに人間を理解しようとした事が裏目に出たのだろう。
企業はあらゆる対処法を考えた。
1 研究所に居る所員約30名の喜怒哀楽をコピーしたチップを埋め込む。
これは失敗した。地球上には約70億人の人間が居り、喜怒哀楽を使うタイミングは人によって異なる。それに、表情に出ないので意味が無かった。
2 着せ替えパーツ
これは論外だった。チップの案が潰された事によりほぼ案が無くなった企業が、半ば諦めで出したが全くをもって意味をなさなかった。
完全に壁にぶつかった企業側にある日、一本の電話が入った。
『彼女…笑ってくれたよ』
会社員の男性からである。
彼はH-Mティオールの試作品を受け取った第一人者である。毎日働きづくめの彼は帰る時間が何時も遅かった。でも彼は毎日帰る度にH-Mティオールに声を掛けた。
『ただいま、今日はこんな事があったんだ』
会社であった事・夢の事・自分の過去話……等々。
始めこそH-Mティオールは、頷きや『はい』としか行動が無かったが、話し始めてから数ヶ月…
『それは善き事ですね』
初めて笑ったのである。
その事を聞いた企業は考えた。
『人間の生活に、暖かさに、直に触れることで人間らしさを自立式チップが学んでいく』
・長期的に試験者と生活をさせ、感情が芽生えたら回収。試験者に関する記憶を全て消去して
売り物として販売。
そこでバイトを募ったが、信用出来る人間を探す為にとある財閥の御曹司に依頼した。
…………………………………………
「仙李様。ご主人様がお呼びでございます。本殿までお越し下さい」
「分かりました。ありがとうございます、春さん。直ぐに向かいます」
僕は敷地内に建ててある本殿と繋がった、離に住んでいる。
両親が自立心を育てる為に建てたらしく、既に11年は経つ。
呼びに来てくれたのは家の専属メイド長の一人、春さん。小さい時からお世話になっている。
『来たか仙李。さ、掛けなさい』
「失礼します。お父様」
本殿の丁度リビングにあたる場所では、ソファに座る姿が威厳を思わせるお父様と朗らかな姿のお母様がいらっしゃった。
『まず言っておこう。誕生日おめでとう』
『おめでとう、仙李』
「ありがとうございます、お父様、お母様」
何を言われるのかと不思議だったが、その事だったのかと安堵した。
『誕生日プレゼントとして何が良いか千種と相談してな。お前にはこれを渡そうと思っている』
そう言って渡して来たのは一枚の大きな封筒。
「お父様…これは?」
『開けてみなさい、仙李』
お父様の代わりに答えたのは静かな雰囲気を漂わせるお母様だった。
訳が分からないが、それの答を見つける為に封筒を開いた。
「……H-Mティオールの…試験者?」
『そうだ。実はその会社の社長が私の旧友でな。信用出来る試験者を探してるらしくお前が抜擢されたんだ』
「…資料から察するに…H-Mティオールと同棲しろ、という事ですね?」
『あぁ、その為の家や情報を用意してある。
詳しい事は明日分かるだろう』
『頑張って下さいね』
「はい、分かりました」
僕はその事をあっさりと引き受けた。
普段から顔合わせが少ない両親がくれたプレゼントだ。嬉しくない訳がない。
それにしてもH-Mティオールとの同棲か…。
「一度だけ工場に行った事はあるが…一体何故同棲するのだろう…?」
渡された封筒を見つめながら長い廊下をメイド長の一人、春さんと歩く。
基本、私語を話さないのがメイド。と教えられているので、この無言は対して辛くない。
「ご苦労様でした。もう下がっていいですよ」
『分かりました。それでは仙李様、お休みなさいませ。失礼します』
取り敢えず、明日から始まるアンドロイドとの
同棲生活に備えて睡眠をとる。