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すきなひと
あたしの好きな人は
優しくて、
とても冷たい人だった。
優しくてかっこいい人。
はじめはそれだけだった。
かっこいいとは思うけれどタイプでもなかったし。
でも
何故か、自然に目が彼のほうを追っていて
いつの間にか視界には彼ばかりがいた。
視界に映る彼は優しいけれど、冷たかった。
笑顔なのに笑顔じゃない。
みんなに平等に優しいけれど
みんなと距離を置いてる。
あぁ、きっと彼は自分以外など信用していない
そんな気がした。
ーダメだよ。
あたまの中で警報がなった。
彼は、ダメだと。
きっと彼を好きになれば傷ついてしまう。
悲しい想いをしてしまう。
そう、分かっていたはずなのに。
もう気持ちに嘘はつけなかった。
だって、視界はもう彼でいっぱいで。
溢れ出る気持ちを制御などできない。
もうとっくにあたしは彼に捕らわれていたのだ。
はじまりなんて分からない。
自分の気持ちに気づいてしまったのだから仕方ない。
この気持ちはきっと報われないけれど、止めることなんて
もう、できない。