初恋
俺が好きになった君は―――
とんでもない嘘を持っていたなんて。
「初恋」
俺は、あの卒業式の日最後の君の後ろ姿をみた。
もう二度と見れない、彼女の後ろ姿。
もう二度と聞けない彼女の声。
そして制服。桜。
喋ったことはなかったけれど、俺は彼女のことが好きだったに違いない―――――
2年後―――――
「え?それが初恋??一回も喋ったことないのに好きになったのかよー??」
ああ――、としかいいようがない。
「うるさいなッ俺はぴゅあなんだよー」
ぴゅあとは、女子生徒がよくつかう言葉。恋愛に対してよくつかわれる。例)私はぴゅあなハートの持ち主なの。ぴゅあな恋がしたい。など
「『ぴゅあなんだよ』って日本語まちがえてる」
クス―――と可愛らしい声が俺の耳に響く。
俺はその時出会ってしまった。
髪がふわっと風に舞い上がる。
髪のいい匂いがふわふわっとひろがっている。
もう会うはずもなかった彼女に――――――
「えっと…神木くん…?」
「あ、神木翼で…でっふ!!」
噛んだ。
あ、なんでこういう時噛むんだろう。
緊張してるからかな―――
きゃぁぁぁと女子から歓声が飛ぶ。
「翼様かわいー」「でっふだってーもう好きー」「前髪あげてるのもかわいいのに噛むとか可愛いすぎるー」「きゃーかっこいい」
うるさいな。
なんだあの女子どもは、俺に押し寄せているではないか。
「うわっ!!じゃ、じゃあね!!また今度ね翼くん!」
彼女はその女子の中に埋もれて行った。
ああ(・・)、また(・・)だ(・)――――――
彼女は普通の人だ。
特別ではない。モテているわけでもなく普通に暮らしている。
人気は男女問わない。天然でちょっとドジで、頼れるお姉さんタイプ。
俺はそんな彼女がうらやましくて、
憧れていて、
いつのまにか好きになっていた。
彼女は成績は優秀。
俺が2位で彼女が1位。
中学の時からずっとそうだった。
どうしても抜けない。と、もがいてた。
「――――翼ぁ?何どうしたの?ボーッとしちゃって…」
と俺の幼馴染の桜木海里が話しかけてくる。
俺は何かと海里がいないとだめで、高校行くのも海里がいなかったら行っていなかった。
「あ、いや。あの転校生とかいなかったけ?」
「あ、いたね。同じ中学のあんたが成績が破れなかった人。えっと――――」
いやだ――――
聞きたくない、本人に聞くんだ。
俺は耳を塞いだ。
「―――!?翼どうしたの??耳塞いで」
「――――ッ!!!!!……なんでもない…ごめん」
じっ・・・と海里は俺を凝視。
そしてこの沈黙。
「……翼っ!!こっち来て」
「??」
「――――ねぇ、翼さぁ。その転校生のこと好きでしょ?」
「え゛?」
なんで、バレた?
顔に出ていたか?それとも声?
女ってすげぇな。とつくづく思う。
「ばればれだよ。生まれた時から一緒だし」
“女のカン”ってやつ?
「……中学の時から気になってた。」
海里は顔を優しくして
「分かった。じゃあ、協力してあげる。だからがんばれよ!」
「ううん」
*
部活開始時間
「みんなー集まれー」
と顧問が呼ぶ。顧問はちょうど20代前半の新米教師。
小野坂瞭先生で、結婚しているが生徒に人気がある。
(顔が良いで女子に人気がある)
「我がサッカー部に2人目の女子マネがきました!!!!」
歓声が
「はじめまして」
あ、彼女の声だ。
「今日からサッカー部のマネージャーの柏木美月です。一年生で転校してきたのでまだよくわかんないこともありますが、がんばります」
名前。
これは運命なのかもしれない。
彼女は家の都合で田舎の学校に行っていたのに
都会の有名な私立高校に転入してきた。
そして部活も一緒。
これは神様がくれたプレゼントなのかもしれない。
「今日はここまでにします。せんせーなんか言う?」
「おいおい、部長。しっかりやんなって。まあ、いいや。もうすぐ大会が近いので選抜メンバーをもうすぐ決めます。だからみんながんばって。3年生は引退試合なのでみんな選抜に選ばれるように!!!あと明日練習試合です。以上」
「え?明日練習試合?せんせー??なんで早く言わないの?」
「忘れてました。すいません」
「ありがとうございましたー」といって今日はお開き。
さあ、俺は早く制服に着替えて海里の部室へ向かわなくては。
「あのっ翼くん!!」
「??」
「今からお茶しない?――――――」
「海里!今日早く終わったからカラオケ行かない??4人で」
「行く!!ちょっと待ってメールするから」
着メロが鳴る。
「あ、メール」
海里!やったー(^◇^)
あの転校生の名前とアドレス聴けた!!それに、部活一緒(*^^)v
それにお茶誘ってくれた!
なので今から行ってきます。弓矢がんばれbb
っばさ(^-^)
おめでと(●^o^●)C:。ミ
私も丁度今日早く終わったので友達とカラオケに行きます。(*^_^*)ざまーみろ
弓矢じゃなくて弓道だよ(怒)てか、もう大会終わったし(もちろん優勝)
楽しくお茶してきてね(^^♪
*;:;:;:;:;*海里*;:;:;:;:;*
「・・・・・・・よかったじゃん。私が協力しなくてよかったじゃん…」
小声でボソッと海里は言ったあと、返信をした。
「カラオケ行こっか!!」
「おお、彼氏の御許しでたか」
「彼氏じゃなくて幼馴染」
なんで、こんなに胸がズキズキするの
翼があの転校生を好きだったって言われただけで
なんで、こんなに苦しいだろう。
応援したいのに…
「――翼くん?どうしたの?」
「ああ、ごめん。柏木さんと話せるのすごく嬉しくて…」
あ、本音。
二人は中学ライバルだったこともあり気まくなっている。
「そんな風に思ってくれてるならすごく嬉しい。私翼くんと中学の時友達になりたかったんだけど、なかなか話しかけられなくて…彼女もいるみたいだし。」
「え?」
「あ、いやほらあのいつも帰ってた女の子」
「ああ、あれ幼馴染。」
彼女は照れ臭そうに顔を赤くして目をそらした。
耳まで真っ赤だった。
「ごめん。変な勘違いしちゃった…あ、ご、ごめんねっ!今のなし…」
「いや、こっちこそ…」
チラッとお互いを見つめ
口が笑ってしまっていた。
笑った時の彼女の顔はとても綺麗で、見とれてしまった――――