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【完結】魔力最底辺の魔石研究者ですが、余裕あふれる完璧公爵様に実は溺愛されていました ~気づけば私から逆プロポーズ!?~  作者: 藤田さち


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2. 届け!必死の救難信号



(うん、何度鑑定しても、これは魔石だわ!)

 

 誰が、学生時代のプレゼントに硝子玉よりも高価な魔石が使われていると思うだろうか。


(公爵閣下のお財布にはなんら影響はないと思うけど……。これが金銭感覚の違いというやつなのね……)

 

 色味が薄いし小さいので、内包する魔力は極めて少ない。けれど、今日は満月。魔力は満月のとき底上げされる傾向にある。だから今まで気づかなかった違和感に気付けたのだろう。


 違和感をそのままにしない研究者魂、これは所長に褒めてもらえるのでは?

 プレゼントを鑑定する淑女らしからぬところは両親に叱られそうだが。


  

 魔石に転写された魔法陣はない。

 なら、今、私が魔法陣を書き込むことができる。


 ――どうする?


 この石ではできることはかなり限られる。

 けれど、極わずか、彼の魔力の気配がある。魔石は地層の魔力が長い年月をかけて結晶化したものだ。青いものは、主に水の魔力からできている。彼の魔力と相性がよくて、彼の魔力を吸収していたようだ。


 何もかも偶然。

 けれど、これで彼と繋がる。


(運も実力のうちよ!)


 私は現金なのだ。チャンスは躊躇なくつかむべし。ですよね、所長!


 

 バレッタのピンを立てて、石床に居場所を伝える魔法陣を刻み始めた。

 静かな地下室にガリガリと音が立つ。

 

 ――大丈夫。見張りはいないんだから。

 並大抵の力では足りなくて、指に血が滲むがどうでもよいことだ。

 

 魔法陣は円などの図形と古代語を組み合わせてできる。一度描かないといけないのが厄介だ。本当なら羊皮紙が一番良いのだが、これ以上は望んだらバチが当たりそうだ。


(……ああ、もう!)


 それでも、思うように書けず、焦りが苛立ちに変わる。


(だめだめ、落ち着くのよ)


 一度手を留めて、バレッタを握り込むようにして両手を組む。冷えか痛みか、それ以外の何かか。震える拳を宥めるように、ふう、と息を吹きかけた。

 

 正確な図形を描くことが求められるので、今できる最大限で丁寧に描く。


(石に描くなんて初めてだわ。さすがに綺麗には描けないか……)


 でも複雑な魔法陣は必要ないし、十分だろう。

 魔法陣の最後に、居場所『ボードン伯邸宅、地下室』、送信先『ルシアン・アイゼン』の情報を古代語で書き足す。

 彼ならこの情報と、あとは魔石に宿る彼の魔力を辿って、場所が特定できるはずだ。


 ――いくら自分の魔力であっても、万物に魔力が宿るこの世界の中で探し出すのは至難の業だ。


(探し物も、広い邸宅より、一部屋特定されると捗るもの。それと同じね)


  

 魔法陣の中央にバレッタを置く。


 指先で魔石に触れ、鑑定の要領で微量の魔力を丁寧に流す。強い魔力は魔石を壊してしまうからだ。魔力で結晶の形をとらえて、その中に魔法陣を流し込んでいく。


 

 ――千載一遇のチャンス。絶対に逃してはならない。

 額を汗が流れる。

 慎重に。ひたすら慎重に。

 

 魔法陣を流し込み終えると、ふわりと図形が光り浮かびあがって、魔石に吸い込まれた。


(成功だ……!)



 身体に怪我がなく足が繋がれていなかったら、立ち上がってその場で踊り出していたに違いない。


 地道に魔石研究を行ってきてよかった。

 もっと複雑な陣の転写を、何百回、何千回とやっている。こんな劣悪な条件でも成功させるなんて、私、それなりにやるのでは?


  

 ほっと胸をなで下ろして、間もなく。

 ドタドタ、と静寂を崩す重い足音が近づいてくる。

 

(嘘でしょ、もう気づかれた!?)


 やばいやばいやばい。

 咄嗟にバレッタをスカートの裾に隠す。

 

 扉の向こう側から魔法錠に魔力が通され、ほのかに発光する。ゆっくりと解錠されていく様を横目で見ながら、青い魔石に触れた。

 ドクンドクンと煩く鳴る心臓に合わせて、はっはっと短い息が漏れる。冗談抜きで、心臓が口から飛び出そう。


(このっ、静まれ……!)


 万が一にも失敗しないように極度の緊張は全力で見ないふりよ。

 起動用の微弱な魔力を流すと、冷え切った指先を、魔石の仄かな熱が温めた。普段じゃ気づかないほどの変化だ。指先に全神経が集中している。でも、つまり、それは希望が繋がった証拠。

 

 ――魔石が起動した。


(どうか、間違いなく彼に届きますように……。お願い、どうか、どうか……! ルシアン様……!)


 

 その時、ギイイイと錆びついた鉄の擦れる大きな音を立てて、扉が開いた。



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