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怪盗ソルシエ 〜雨ノ森市とお気に入りの喫茶店〜  作者: 冲田


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7/11

第7話 ターゲット

 喫茶・時間旅行で、昴と玲がコーヒーを飲んでいた。

 それは、最近では良く見る光景だった。たいていは昴が彼女の席に押しかけることが多かったが、正直、どうして彼が自分にこんなに(かま)ってくるのか、玲には疑問だった。


 他愛のない会話をしていることが多かったが、今日は怪盗ソルシエが話題にあがっていた。彼の犯行の周期から考えて、そろそろまた動きがあるのではないかと、玲は考えていたのだ。


「この屋敷。それからこっちの屋敷……。雨ノ森に来てからのやつの狙いを辿ると、法則が見える気がするの」

 玲が地図を広げて、独り言のような、誰かに話かけているような調子でぶつぶつと推理を展開している。


「今のところ、盗まれているのは主に宝石。一度目も二度目も盗まれたのはルビーなどの紅い宝石。三度目はダイヤモンドだったみたいだけど……ソルシエは紅い宝石を好むと聞いたことがあるから、また紅いものを狙う可能性は高いわ」

「へぇ、なるほど?」

「不思議なのは必ずしも高価なものを狙っているわけではない、ということ。雨ノ森に現れる以前の犯行を見てもそれがうかがえる。だから逆に、彼が何をターゲットにしているのか読みづらい……」

「ところで、この推理の過程をなんで僕と?」

「対話形式で考えると、情報が整理しやすく、ひらめきやすいので」

「はあ……なるほど……。じゃ、僕もアイデアを出せばいいんですか?」

「いえ、相づちを打ってもらえれば、それで十分です。あくまで、思考のプロセスですから」

「でも、これ、意味あります? ソルシエはどのみち予告状を出すんだから 次のターゲットを割出さなくても……」

「それはそうなんだけど……。なんというかな。彼のことを知りたいのよ。考え方のクセや行動のクセが分かれば、逃亡の先回りもしやすい」

「ゾクゾクするね。きっと君が熱烈な愛情を向けていることを彼が知ったら、大喜びするよ」

「愛情なんかであるわけがないでしょ! 探偵と怪盗っていうのは対決するものなの!」

「僕は探偵と怪盗は、喫茶店やバーで語らうものだと思ってるよ」

「そういう作品もあるけどぉー! それ大抵、探偵や警察のほうが残念に見えるから 私は好きじゃないわ」

「そう? それは失礼」

 昴はクツクツと声を押し殺すように笑う。


「それで、捕まえたらどうするの?」

「どうするって……そりゃあ警察に窃盗(せっとう)の現行犯で突き出してやるのよ。怪盗を捕まえたとなれば私の実績にも(はく)がつくし?」

「“箔”が必要だから、怪盗さんの()扶持(ぶち)を奪っちゃうんだ?」

「違う。そもそも窃盗は犯罪でしょ? 箔はオマケよ。ともかく、私が予想するに、次に狙われるのはこの邸宅よ。理由は……」


 テーブルに置いてあった玲のケータイからピロンと通知音が鳴った。ニュース速報が画面に表示される。


『怪盗ソルシエが予告状。つぎのターゲットは雨森くん像⁉︎』


「はぁ⁉︎ あ、雨森くぅぅうんん?」


 彼女はガタと立ち上がり、握りしめたケータイの画面を顔に近づけた。ひょっとして、近くからよくよく見れば 違う文章でも書いてあるんじゃないかとでも考えているようだ。

 大きな声と音をたてたので、かなり視線を集めていたけれど 彼女はまったく気にしていない。


「推理、外れちゃったみたいですね」

「なんでこう、予想の斜め上、しかもはるか上空な行動をするのよ……この人……」

「本当、僕にも信じられない。怪盗ソルシエが盗むものっぽくないよね。雨森くん」

「ええ、ええ、本当に。 何? 実はすごく芸術的価値でもある像なの? コレ?」


 雨森くん像──そもそも雨森くんとは、雨ノ森のゆるキャラだ。かわいい河童(かっぱ)合羽(カッパ)を着て自信なさげな表情をしているデザインの 街のシンボルキャラクターで、残念ながら、ゆるキャラランキングとは無縁だった。

 その銅像が駅前北口に堂々鎮座し、待ち合わせスポットとして使われている。


「ともかく、私は現地視察に行ってくるわ。コーヒー、ごちそうさまでした!」


 玲は急いで荷物をまとめると、喫茶店から出て行った。

 しかし、残念ながらこの視察は失敗に終わる。ニュースを見た人たちが彼女と同じように、雨森くん像にはなにか秘密があるのかと、雨ノ森駅北口に、詰めかけていたからだ。

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