第九話前編 ハロウィンと再会
ハロウィンは便利屋も忙しい。
冷は魔女コスで子供たちにお菓子を配る。
吸血鬼コスで女の子に囲まれるイケメンは季楽である。
「かっこいい」「お兄さんからお菓子もらう〜」
そんな声が飛び交っている。
冷の前に現れたのは中学時代の親友だった。
とても仲が良かったが、中学校のある出来事がきっかけ
で今まで話せていなかった。
親友は冷のことを裏切ってしまった…
冷は自分が悪かった…
すれ違いの思いと共に冷が無関心になった理由が
明かされる。
ハロウィン…便利屋は借り出される。
魔女の格好をした冷は子供達にお菓子を配って
いる。
得意な愛想はここで大発揮される。
「冷さん、ありがとうございます。
人手がどうしても必要で。山六さんも
ノリノリでやってくれましたが、引退されて、
でもイケメンな季楽くんがいるから大丈夫ね。」
スーパーの店長であり、独身女性の彩美さん。
「彩美さん、季楽は高校生です。
いえ、依頼いただければやりますよ。
好きですし、子供と関わること。」
何か察して警告しつつ、笑顔で言う冷。
「知ってるよー。狙ったりしないから安心して。」
焦りを見せながら笑顔で返す彩美。
(うーん、季楽大人っぽさあるから勘違いしてた
可能性はあったな。本当か?)
警戒する冷。
季楽はバンパイアの格好をして、女の子に囲まれて
いる。男の子から嫉妬の視線が向けられる。
「どうぞ、楽しむんだよ。ハロウィンをよ。」
(なんか男の子たちから痛い視線があるんだが。)
笑顔で楽しげにしている季楽。
やりにくさは感じている。
「こっちにもお菓子あるからほしい人はおいでー。」
彩美と冷が同時に言う。
男の子たちは冷の方に一直線。
(負けた…冷さんの魅力に…)
悔しそうにする彩美。
「順番にね、並んでね。」
(彩美さんももってるんだけどな。)
困ったように笑いながら配る冷。
「素直な奴らだな…彩美さん。
配り終わりました。その彩美さんの分配り
ますか?」
気まずく思いつつ、提案する季楽。
「いいの、季楽くん。ありがとう。
あなたは素敵な男性ね。」
感動の極みな彩美。
「あ、いや、どうってことないですよ。
配って来ます。」
戸惑いつつ、お菓子を受け取り配りにいく季楽。
観光客もけっこういる。その子供たちがお菓子を
もらいに来たりする。
仮装しなくても「トリックオアトリート」と
言えればもらえるイベントだからである。
「トリックオアトリート、お菓子ください。」
女の子が冷の元にきた。
「ぅ…うん、どうぞ。」
誰かに似ていた…でも気にせずに渡す。
「あ…ちょっと紅葉勝手に行かないで。
すみません、お菓子ありがとうございます。」
慌てて母親がやってきた。
「いえ、大丈夫…です。」
顔を上げて笑顔で返す冷。
途中で言葉が少し切れる…なぜなら、
「冷…ちゃん?冷ちゃんだよね。私、春花だよ。中学校の時以来…だね。」
気まずそうにする春花。
「春花ちゃん…久しぶりだね。」
笑顔で返すも顔を下げる冷。
「あら、冷さん上がっていいよ。久しぶりなら
案内してあげなよ。」
彩美が気を遣ったつもりで言う。
「はい、ありがとうございます。」
ぎこちなく笑って言う冷。
「春花ちゃん、時間あるかな?案内するよ。」
気まずそうに言う冷。
「うん、お願いします。」
気まずそうに返す春花。
「やったー、お姉さんと観光。」
嬉しそうな紅葉。
(冷姉の中学の時の…子供がいるとはいえ、まずい
んじゃないのか。)
聞いていた季楽は、彩美にあがりたいと伝えて、
あがる季楽。
「俺もついていきますよ。」
間に入っていく季楽。
「季楽…?春花ちゃんいいかな?」
驚き、許可を聞く冷。
「うん、いいよ。えっと、どんな関係?
妹が二人いるのは知ってるけど…。」
当然の疑問を聞く春花。
「俺は竹刀 季楽です。冷姉の弟弟子です。
師匠の竹刀 山六が養親です。
今、冷姉と暮らしてます。」
積極的に説明する季楽。
「そ、そうなんですね。色々事情があるのね。
師弟関係は初めてみた。すごいね、冷ちゃん。」
感心している春花。
「うん、ありがとう。」
静かに笑う冷だが、すぐに暗くなる。
春花と紅葉を色んな観光場所を紹介して、最後に
便利屋さんろくに招待した。
〜便利屋 さんろく〜
冷はお茶を出す。
「ありがとう、家まで呼んでもらって。
なんか申し訳ないよ。」
春花は申し訳なさそうにする。
「ううん、久しぶりに会えたから。
あの時は全然話せなくて…ほんとは話したかった。」
首を横に振って、本音を言う冷。
「…ごめんなさい。私は冷ちゃんを裏切って
しまった。私がもっとなんかできたと思うの。
何もできなくてごめんなさい。」
涙ながらに言う春花。
「お母さん?」
普通でない状況に戸惑う紅葉。
「紅葉ちゃん、俺と遊ぼうぜ。」
「うん。」
季楽が察して外に連れていく。
前は大きな駐車場になっていて基本こないため、
安全である。
「謝らないで…私が悪いから。
その私がもっとしっかりしていれば良かった
話だから。春花ちゃんは悪くないよ。
頑張ってたよ。本当に。」
息が荒くなる冷。
「…うん、ありがとう。大丈夫?冷ちゃん。」
感謝を伝えた後、冷の様子を心配する春花。
「あっ…はぁはぁ。ごめん。」
立ち上がって、自分の部屋の方に走っていって
しまう冷。
「冷ちゃん!うん…そうだよね。本人が一番
辛いに決まってる…思い出せるようなことして
しまった。」
思わず叫ぶも、自分の言ったことを後悔する春花。
そのまま、外に行く。
「紅葉、そろそろホテルに戻ろっか。
ありがとうございます、季楽さん。
遊んでくれて。」
無理に笑って言う春花。
「はい、あの!春花さんは冷姉のこと裏切った
って…」
気になって言う春花。
「はい、その通りです。冷ちゃんは私の親友
でした。でも、あの時から話すことはなくなり
ました。今日、本当に久しぶりだったんです。
でも、笑顔で終われませんでした。
詳しくは明日、季楽さん二人で会いませんか?」
覚悟を決めたように言う春花。
「はい、もちろん。連絡先交換しましょう。」
覚悟を決める季楽。
連絡先を交換し、解散した。
〜冷の部屋〜
「あー、逃げた…本人は本気だったのに。
私は向き合えてすらない…春花ちゃんはちゃんと
できているのに。」
ずーんと体育座りしながら、独り言を言う冷。
「変わってなかったな、お母さんになってた。
おとなしくて優しい、素敵な友達…。」
静かに泣く冷。
〜便利屋さんろくの一階〜
「冷姉ー、春花さんと紅葉ちゃんホテルに戻った
ぞ。どこにいるんだ?2階の部屋か?」
呼びかけても返事がないため、2階の冷の部屋の
前まで行く季楽。
「冷姉ー、大丈夫か?」
心配そうに様子を伺う季楽。
部屋には入るなと言われているのでドアの前に
いる。
「…季楽、大丈夫。その二人は帰った?」
ドア越しに返事をする冷。
「帰ったから、今来た。
えっと…明日、春花さんに会ってくる。」
一応言う季楽。
「そう…私は言う気ないからね。それが良いよ。」
複雑な気持ちの冷。
「おぅ、今日は俺が晩飯作るわ。
ゆっくり休んでくれ、冷姉。」
明るい声で言う季楽。
「ありがとう、季楽。」
聞こえるギリギリぐらいで言う冷。
その後会話なく、終わった。
〜次の日 喫茶店〜
紅葉は夫に預けて、喫茶店でそわそわしながら
待っていた。
(相手は高校生とはいえ夫以外の男性と会うのは
いけないことしてる気がして、落ち着かない。
それに中学時代のことを話すこともだけど。)
紅茶をゆっくり飲みながら考える。
「春花さん、お待たせしました。」
季楽は挨拶をする。
「いえ、こちらこそ来ていただいて
ありがとうございます。
なんでも頼んでください。」
ぺこりとして座り、メニューを渡す春花。
「良いんですか!えっと…ナポリタンと
クリームソーダください。」
キラキラな目で注文する季楽。
(まだ、子供なんだなぁ。かわいい。)
ほんわかする春花。
「それで足りる?」
素で聞く春花。
「ほんとに頼むと多分大変なことになりますよ。
男子高校生の食欲ヤバいですよ。」
真面目に言う季楽。
「う…なめてました。ごめんなさい。」
たしかにと思った春花。
「それで、そろそろ本題に入りたいんですが。
冷姉は中学校の頃に何があったんですか?」
真剣な口調になる季楽。
「そうですね、中学校の頃の冷はとても明るくて
みんなに優しく、すぐに名前も覚えるので
愛される人でした。」
彩美は静かに語りだす。
「えっ…愛想はあるんですけど、人には無関心
ですよ。今の冷姉は。たしかに誰にでも優しいこと
に変わりないです。」
机に手を置いて身を乗り出す季楽。
すぐに元に戻る。
「うん…そうなんですね。変わってしまったのは
私のせいなんです。」
〜春花の知る冷の中学校時代〜
私は春花、おとなしくて人見知りなのでクラスに
うまく馴染めていなかった。そんな時…
「春花さん、一緒にペア組まない?」
笑顔で楽しそうに誘う冷。
「うん、素優さん、えっとありがとう。」
戸惑いながらも感謝する春花。
「どういたしまして、あっ冷でいいよ。
みんな下の名前呼びだし。ね!」
満面の笑みで言う冷。
「冷さん…よろしく。」
照れながら呼ぶ春花。
それが仲良くなるきっかけだった。
そこから、家が近いのもあって、一緒に帰ったり
遊んだり、まさに親友という仲だった。
ある日、それは突然始まった…
クラスの女子は冷を無視し始めた。
「おはよう!」
「……。いこう。」
「ぇ…」
唖然とした顔をする冷。
「おはよう、春花ちゃん!」
変わらない笑顔で挨拶をする冷。
「おはよう、冷ちゃん。」
気づかない春花。
昼休みに春花は三人で活動する女子に呼び出された。
「春花さん、冷さんのこと無視しなさい!」
「良い子ぶってるだけの彼女よ。」
「そうそう、むかつくから無視しましょ。」
明らかに中心犯だった。
「そ…それはできません!
私の大切な親友ですから!」
声が震えながらも叫ぶ春花。その後、
冷の元に走って行った。
「何、あいつ。陰キャのくせに偉そうに。」
リーダー格が言う。
「冷ちゃん!」
勢いよく呼ぶ春花。
「ぉ…どうしたの?春花ちゃん急に?」
戸惑う冷。
「冷ちゃん、ずっと一緒にいようね。
私は冷ちゃんの味方だから!」
真剣に言う春花。
「うん、ありがとう!」
目が少し潤みながら笑顔で言う冷。
冷は本当に嬉しかったんだと思う。
それを私は裏切ってしまった。
私もいじめの標的にされた。
同じように無視をされ、いないような扱いだった。
冷はもっとひどい扱いを受けていた。
物を隠されたり、壊されたり先生に見つからない
範囲でこそくにされていた。
私も後にこうなるんだって考えたら耐えられなく
なった。
ずっと一緒宣言をして一週間後、私は不登校に
なった…親に理由を聞かれても、先生に聞かれても
答えられなかった…親友を裏切った気持ちで
いっぱいで、自分の弱さに打ちひしがれていた
から。
その後も、冷が学校にちゃんと通っている姿だけを
見ていた。
自分の部屋の窓から…ちゃんとプリントとかも
ポストに投函している姿も。
生きてるのを確認したくて、申し訳なくて、
目が合うことは一度もなかった…。
私は転校はせず、次の年は保健室登校になった。
フリースクールというものに通って勉強自体は
した。
保健室の先生に、毎回冷ちゃんは
学校に来てるのかを聞いていた。
先生は特に理由も聞かずに教えてくれた。
毎回、「来てるよ、素優さん。」と返ってきた。
安心した、ただの自己満足でしかなかったけど。
そのまま、話すことなく卒業した。
〜喫茶店での春花と季楽〜
「私の知ってることはこれで全部です。
私は裏切ってしまいました。だから、人を
信じて裏切られるよりも無関心でいた方が良い
となったのかもしれません。」
責任を感じている春花。
「…。」
拳に力が入る季楽。
(冷姉は昔から人に隠して、溜め込むタイプ
だったのか。でも、春花さんは裏切ったのか?
それは違うんじゃ…。)
神妙な面持ちで黙る。
「春花さん。」
口を開く。
「はい…季楽さん。」
少し驚く。
「その、冷姉は多分春花さんのこと裏切られたって
思ってないと思います。憶測ですけど、
そのクラスメイトに裏切られたの方が正しい
です。春花さんは被害者ですし、冷姉も
それぐらいは後から考えてたら、分かると思う
んです。その一時思ったとしても、違うと
感じると思うんです。だから、春花さんは悪く
ないです!」
勢いでも真剣に伝える季楽。
「……うふふ、まっすぐですね。
私が深刻考えていたことがバカみたい思えて
きました。必要なことですけど…でももう一回
冷ちゃんと話す勇気もらえました。」
思わず笑い、自然な笑顔で言う春花。
「おぁ、そうですか?良かったです。」
首が痛いポーズをして照れる季楽。
(わかりました、冷ちゃんが季楽さんを
気にかけている理由が。こんなにも冷ちゃんの
ことを思っていて、大切にしてるから。
守ってあげたくなるんですね。)
母親の微笑みな春花。
「季楽さん、これからも冷ちゃんをよろしく
お願いします。」
丁寧にお願いする春花。
「はい、俺は絶対冷姉のそばにいるんで!
ずっと一緒にいるんで!」
勢い立ち上がって言う季楽。
「はい、分かりました。それを本人にも伝えて
あげてくださいね。」
ほんわか笑顔で言う春花。
季楽は顔は火照る。
〜冷の中学時代 春花不登校後〜
冷は昔中学校時代のことを思い出していた。
春花がいなくなった後も、なぜか学校には真面目に
通っていた。
無論、一人不登校になった程度で収まるわけも
なく、むしろヒートアップしていた。
しかし、たえた。
暴力振るわれようが、机に落書きされようが、
持ち物全てが水に浸かりようが、怒りと執念で
乗り切った。
(こいつらにだけは絶対に負けるものか。
春花ちゃんが不登校になったのも、元は言えば、
こいつらが全部の原因だ。私を不登校にしたいん
だろうが、関係ない!意地でも通ってやる! )
意志は堅かった。
そうしていたら、むしろ怖がり始めた。
一月ぐらいだろうか…
何をやっても不登校にならないためにボロが出た。
担任の前でとうとう、暴力を振ったのだ。
私は反撃せず、なんも言わなかった。
ただ睨んだ。
担任もさすがに勘付いた。そこから尋問が
始まった。
いつからあって、どんなことをされて、
誰からで、どのくらいの人数で、
春花ちゃんの不登校にも関係するのか、
泣くことはなかった。ただ淡々と話していた。
感情などなく、事実をありのまま話していた。
担任の表情は引きつっていた。むしろ、担任が
やめてしまった。責任を取るとかで。
逃げただけだが…いじめはそこからパタリと
なくなった。表上で仲良くしてる状態になった。
私は保健室で話を聞いてもらうように指示された。
午前中の朝早くと放課後に一日2回である。
話してどうなると思ったが、仕方なく行っていた。
保健室の先生は心理士の資格を持ってて
カウンセリングができるらしい。
「おはよう、ちゃんと来てくれて嬉しいよ。
根性あるのは確かだよね。」
いつも楽しそうにしている保健室の先生。
それが最初の印象だった。ちゃんと話を聞いて
くれた。どんな雑談でもだ。
最初は警戒してたから黙ってることも多かったが、
根気強く話しかけてくるから観念した。
それが二月だ。
三年生になった頃、私はふと聞いた。
「春花ちゃんはどうしてるかな。私、家は近くて
プリントとか届けるんだけど、会わなくて。」
なんで聞いたかは分からない。でも、答えてくれる
と思ったのだろう。
「うーん、ほんとは言っちゃダメなんだけど、
来てるよ、少し遅めにここに来て、私と話を
してるの。保健室登校ってやつだね。」
ダメだけど言っちゃうのが保健室の先生である。
「えっ、ほんとに!良かった。クラスに来なくても
学校にきてて。私ずっと気になってた…たぶん。
でも…ずっと余裕なくて…必死で…考えて…
なかった。私、最低…だ。」
今まで堪えていた泣きたい気持ちがそこで全部
出た。
しばらく泣いてて、先生はずっと静かにそばに
いてくれた。
それがあったかくて、余計と泣いた。
その後は、特になんもなく、卒業した。
〜冷の覚悟〜
「うん、会わなかったなぁ。卒業してからも。
東京行ったから、機会もなかった。」
一人ソファーに座って独り言を言う冷。
(春花ちゃんはずっと後悔してたのかな…
裏切ったなんて…私は思わない。
逃げることも必要なんだ。春花ちゃんは
自分を守るために最善のことをした。
私は戦うこと選んだ。それだけだ。)
もう一度春花と話す覚悟をした。
季楽と紅葉の遊んでいる様子
紅葉「お兄さん、アルプス一万尺する」
季楽「外でか?いいけどよ。あんまりわからないぞ。」
紅葉「大丈夫、私についてきて!」
「アルプス一万尺〜♪」
季楽「なるほどな…こうやるのか」
紅葉「よし、もっと早くしよう」
季楽「えっ、さっきよりもか。そんなことでき…」
紅葉「アルプス一万尺、こやりの上で♪…」(早口)
季楽「容赦ないな…負けないぞ」
紅葉「むぅー、もっと早くしてやるー。」
季楽「負けず嫌いかよ、良いけどよ。」
それで冷と春花が話している間を過ごした。
季楽によるあとがき
「今日は俺だけであとがきをやることになったぞ。」
考え中…数分後
「冷姉にあんな過去があったとはな、春花さんも
複雑そうだ。
人に無関心になる理由がよく分かったけどな。
やっぱり二人は仲直りしてほしいぜ。
お互いにまた話す覚悟を決めたみたいだ。
次回は仲直りか…俺は冷姉にとってどういう存在
なんだろうな。」
呼吸を整えて、
「読んでいただきありがとうございました。」




