第七話 コンビ解散の危機!?
夏休みの終盤
新学期や宿題に悩まされる時期…便利屋さんろくに
女子中学生から「いじめの解決」を持ち込まれていた。
過去を思い出し、気が進まない冷。
まっすぐ向き合おうとする季楽。
二人を茶化しながらも支える菫。
冷の様子に納得がいかない季楽は思いを吐き出し、
ケンカになってしまう。
菫は事務所から走ってきた季楽をリムジンで拾い、
話を聞き、季楽も考えを改めた。
季楽は単独で依頼人を守りながらいじめグループに
立ち向かうもうまく行かない。その時に冷が現れて…
夏休みも終盤に近づき、そろそろ新学期になるなと
実感し始め、宿題が終わらないと嘆き始める時期。
季楽は計画的に終わらせていたため、特に問題
なかった。
「なぁ、今日は依頼の手伝いするぜ。
特に予定ないからな。」
やる気満々な季楽。
「そう、じゃあ、この依頼人の家で話を聞いてきて
メモして私に見せて。」
(うーん、この依頼…本当はやりたくない…けど、
なくさなきゃいけない…。)
やけに素直な冷。
「お、おぅ。分かった。」
(なんか、様子変じゃね?素直すぎるだろ。)
意外な反応に戸惑うも、承諾する季楽。
〜依頼人の家〜
依頼人は中学生の女性である。
深刻な顔で話し始める。
「私、今、学校でいじめられてて。
夏休みもいじめっ子に付き纏われて…
怖くて、外行くのも…もうこれじゃ、
私がいなくなるしかないんじゃって…でも、親友
がいるからそうもいかなくて。解決して欲しい。」
すすり泣きながら必死に訴える。
「……あぁ、分かりました。辛かったな。
勇気を持って依頼してくれてありがとな。」
(うぅ、なかなか重い依頼だな。というか…冷姉は
経験あるのか?だから?でも過去の話なんて
聞いたことないな。)
内心プレッシャーを感じつつ、寄り添うように言う
季楽。
「ぁ…ありがとうございます。」
認められたのが嬉しいあまりに号泣する依頼人。
〜便利屋 さんろく〜
「冷姉、ただいま。メモとってきたぞ。」
(とりあえず依頼が優先だな、そのあとだ。)
聞きたいことはあるが、ぐっと堪え、
メモを渡す季楽。
「ありがとう。」
端的に言ってメモを読み込む冷。
少し顔が辛そうな時があったり、怒りを滲ませてる
感じの時が冷から見てとれた。
(珍しいな、感情が表に出るなんてな。
やっぱりなんかあるのか?)
気になる季楽。
「とりあえず、本人に隠しカメラと録音と…
家にも、一応かな。」
読み終えたあと、冷静に言う冷。
「えっ、そんなことして大丈夫なのか?
本人の周りに隠れてつくとかはダメなのか?」
なるべく近くにいることを提案する季楽。
「大丈夫、必要なことにしか使わないし、
ついていくなら季楽が行って。
私じゃ怪しいから。」
何が問題ぐらいな顔をしている冷。
「そうかよ。まぁ歳近い方が怪しまれないな。」
少し納得いってないが、季楽のみが行く案は
深く同意する季楽。
「じゃ、よろしく。」
全任せな冷。
「えっ…ちょっと待った!冷姉!それは違うだろ。」
止める季楽。
「うん?何が?」
疑問な冷。
「いつもなら冷姉もやるのに。俺が暴走しない
ようによ。なんか隠してるだろ、やりたくない
理由でもあるんじゃねえのか。」
(やべ、聞きたいことをそのまま言っちゃったぞ。)
思わず、本音がそのまま出る季楽。
内心焦る。
「その通りだけど…言わないよ理由は。
それに暴走する要素ないでしょ。その方が
解決しそうだしね。構わないよ。」
素直に認めて、特に気にしていない冷。
「う…納得いかねぇ。なんだよ、それ。」
少し歯を食いしばってから声を絞り出すように
怒りを滲ませて、
「俺のこと信用できないのか?なんで冷姉は
いつも隠し事すんだよ。」
今まで我慢していたものをぶちまける季楽。
「隠し事?してるつもりないんだけど。
というか、なんで言わなきゃいけないかな?」
怒った口調だが、まだ落ち着いている冷。
「はぁ、してるだろ。いつもなんか溜め込んで。
それは俺に言わないで。今回のことは特にだ。
表では俺に任せて良い感じだが、なんかあったから
俺に押し付けたいんだろ!嬉しくねぇよ。」
止まらない季楽。
「そうですか!勝手にすれば!私は言わないよ。
やりたくないなら私やるから。別にやりたくない
わけじゃない…メモ私に渡して。」
完全に堪忍袋の尾が切れた冷。
「やるよ!冷姉には頼らずにな。もう帰んねえ
から!」
勢いで押し切ってしまう季楽。
そのまま出ていく。
「そう…バイバイ!一人で平気だから!」
冷もそのまま突き放す。
そして、ソファーにドンと勢いよく座る。
(うーん、なんかとんでもないこと言った気が…
でも間違ってないし。嘘もついてない。
いや…どうだろ。)
冷静になって、考え始める冷。
〜季楽は外で歩きながら〜
「なんなんだよ、言う気ゼロとか意味わかんねぇ。
頼り甲斐ないのか、俺…家族じゃ、ないのかよ。」
ぶつくさ文句を言う季楽。
「しかも、最後、一人で平気って…嘘だろ。
七年間なんだったんだ。俺は冷姉しかそばに
いないのによぉ。必要ないのと、一緒じゃ
ねぇか。」
心底落ち込む季楽。
「それは嘘ね、寂しがり屋だもの。冷は。」
車から菫らしき声が聞こえる。
ゆっくり走っているリムジン。
「うん?菫さん?聞いてたのか…どっから?」
急に恥ずかしくなる季楽。
「なんなんだよからかしら?…止めて。」
面白そうに笑う菫。
指示を出して、リムジンが止まる。
「最初からかよ。で、なんか用事なのか?
冷なら事務所だぞ。」
呆れて言う季楽。怒っているため姉がつかない。
「そうね、最初は冷に会う目的だったけど…
なんか勢いよく出て行った季楽くんが気に
なるわ。話聞くから、乗って。」
素直に言い、優しい笑顔で誘う菫。
「菫さん…というかでかくないかこの車!?
初めて見たぞ!」
感動しながらも、車に驚く季楽。
「リムジンよ、お金持ちならみんな持ってるわ。
ほら、早く乗りなさい。」
自慢げに言う菫。
〜リムジンの車内〜
真ん中にはドリンクとお菓子が置かれており、
菫は優雅に足を組んでシャンパングラス片手に
飲んでいる。
「さて、冷と喧嘩でもしたのかしら?
冷も頑固なところあるのよ。」
首を少し傾けて目線を隣に座る季楽に向ける菫。
「ケンカ…でも、冷が悪いんだぞ。
隠し事ばっかするからな。信用ないとか、思う
だろ。」
主張して、強がる季楽。
「うふふ、ふふふふ。」
笑っている菫。
「おい、お嬢様らしく笑ってんじゃねぇよ。
俺は真面目に話してんだ。」
怒りながらも素直に気になるところをしっかり
ツッコミを入れる季楽。
「ごめんなさい、私も隠し事はたくさんあるわよ。」
笑いを堪えながら、意見を言う菫。
「はっ?菫さんもあるのか…それはその。」
動揺する季楽。
「信用の上でよ。嘘も方便と言うし、隠し事する
ことは必要よ、信用されるためにも。
証拠にもなるわ。
心配させたくないからもあるかもしれないわね。」
かっこつけて、小さい笑顔で言う菫。
「…信用してるから隠すか…考えたことなかった。」
なぜかすごく納得している自分がいる季楽。
「俺、全然冷姉のこと考えてなかったかもしれない。
隠し事するとか考えたことなかったからな。」
自分の悪いところを実感していく季楽。
「ほんと、まっすぐなのね。」
感心している菫。
「ありがとうございます、菫さん。
なんかスッキリしたな。あっ、その一つ
聞きたいこととお願いがあるんだ。
聞いてくれるか?」
純粋な瞳で菫を見つめる季楽。
「眩しいわよ。なんでも聞きなさい。」
眩しいの動作をしたあと、楽しそうに言う菫。
「冷姉はいじめとかあったことあるのか?」
早口気味に言う季楽。
「重いわね…知らないわ。高校の時からだけれど、
女子から悪口・陰口というものは耳にも入って
ない感じだったわ。むしろ私のことを守ったのよ。
頼もしい思い出しかないけれど。
それに冷は自分のことを言わないのよ。
私は聞こうとは思わないわね。」
話題の重さに驚きながらも、自慢げに語る菫。
「そうなのか、高校の時から人に無関心なんだな。
だから、菫さんは冷姉と今でも仲良いだろうな。
そのお願いは、実はいじめの調査してて、ここに
降ろしてもらいたいです。」
少し残念になるが、冷と菫が仲良い理由を知って、
納得し、丁寧にお願いを言う季楽。
「あぁ、そうだったのね。それが原因でケンカを。
もちろん、良いわよ。運転手に伝えるわ。」
だいたい状況を察し、願いを快く聞く菫。
「送ってもらってありがとうございます。」
丁寧に頭を下げる季楽。
「いいえ、お構いなく。応援しているわ。」
手を小さく振って笑顔で送る菫。
〜依頼人の家〜
「その、俺と行動しましょう。
それで俺が守ります。」
単純明快な季楽。
「本当ですか?その…ご迷惑じゃ。」
不安そうな声で言う依頼人。
「いいや!どんと来いです!俺、頑張りますから!」
自信を持って言う季楽。
「はぁ…それならお願いします。」
間の抜けた声を出した後、頭を下げてお願いする
依頼人。
「はい!」
元気に言う季楽。
〜便利屋 さんろく〜
「冷ー、いる?いるわね。冷ー!」
一度呼びかけ、反応しないため、もう一度呼ぶ菫。
「冷ー!」
耳元で叫ぶ菫。
「わぁ!す、菫!?なんでここに?」
ひどく驚いて、気づいた後はめんどくさそうに
聞く冷。
「ちょっと、面倒くさいって態度出さないでくれる
かしら。今日、季楽くんと会ったのよ。
ケンカしたのよね。」
態度に怒りながら、にんまり笑ってからかうように
言う菫。
「一番会って欲しくない人に…うぅ。
そうだけど…何?仲直りしろって言いたいの?」
観念する冷。
「ぅ…うーん。そういうわけじゃないわ。
でも、彼、一人でほんとに解決しようとしてる
わよ、依頼。良いの?ほんとに。」
仲直りして欲しい気持ちは抑えて問いかける菫。
「そう…仕方ない。行くか…なんかあったら私の
責任だし、必要な道具全部置いて行ってるし。」
理由は適当で、本当は決心がついてなかっただけ
の冷。
顔つきが変わり、季楽の元へ行こうとする。
「場所知ってるのかしら?」
痛いとこをつく菫。
「…知らない。」
図星な冷。
「陰陽中学校行くって言ってたわ。」
明るく言う菫。
「分かった、ありがとう。」
さりげなく感謝を言って向かっていく冷。
「ほんと、世話の焼けるコンビなんだから。」
楽しそうに言う菫だった。
〜陰陽中学校〜
「なんで、わざわざ学校に…その…季楽さん。」
怯えながら言う依頼人。
「ここに多分来るからな、あいつらが。」
予想している季楽。
「あれ〜?なんでいんの?男連れてるし。」
「うわー、彼氏できました的なうけるー。」
「弱虫は弱虫と付き合ってんだろうな。」
「てか、俺らと遊ぼうぜ、そんな弱虫よりも
楽しいぞ。」
二人を囲むほどの人数のいじめグループ。
「黙れ、お前らか、いじめてんの?集団で。
一人一人じゃ弱いからつるんでるんだろうな。
惨めで仕方ねぇな。」
煽る季楽。
「うんだとぉ!?舐めやがって!いくぞ!」
「うおー!」
集団で一気に襲ってくる。
(まじか、いや、やるんだ!一人で!)
一瞬気後れするが戦闘体制に入る季楽。
最初は反撃もしつつ、守ることができたが、
相手は中学生で体力もあり余っている。
「おりゃ!」
思い切り腹を殴るグループの一人。
「うぐっ!?くそ。」
受け身は取るもくらう季楽。
「あれ?疲れてきちゃった?まだまだ平気だな。
大したことなかったかなー。」
にやっと笑って言うリーダー格。
「もう…やめて…ください。」
震えながら言う依頼人。
「やめねぇよ、やっちまえ!」
リーダー格は楽しそうに言う。
その時、数人は吹っ飛ばされた。
「うがっ!?」
「ぐぅっ!?」
気絶している。
「あっ…ちょっと飛ばしすぎた?…ちょうど良い?
頭は怪我してないし、大丈夫だね。」
冷静に対処する冷。
「なんだお前、先生?保護者?とにかく警察に通報
するぞ!子供いじめてるって!」
声が震えているリーダー格。
「すれば良いじゃない?私は証拠ちゃーんと
納めてるから、大丈夫。私が逮捕されとて。
あなたたちもちゃんと少年院ってところに行くかも
しれないから。安心して。おあいこだね。」
笑顔で安心してまで行った後、するどい目つきで
言う冷。
恐怖で顔が引きつるリーダー格。
全員をその場に居させた上で通報して、
病院に数名、交番に数名行った。
「ふぅ、終わった。」
立ち尽くす冷。
「冷…姉…、いてて、なんでここに?」
ぽかんとしている季楽。
「あの、ありがとうございます。」
依頼人はお礼を言う。
「いえ、仕事ですから。途中まで季楽に任せて
いたもので、遅れて申し訳ありません。
怖い思いをさせてしまいました。」
季楽のことはとりあえず無視して、依頼人を安心
させるように言う冷。
「いえ、ありがとうございます。これで安心して
学校行けます!」
嬉しそうに笑顔が戻り、瞳に光が宿る依頼人。
「……。」
(無視か、当然か。)
視線が下を向く季楽。
「季楽、怪我大丈夫?ごめん…一人でやらせるべき
じゃ…なかった。ひどいこと言って、ごめん。」
季楽に丁寧に頭を下げて謝る冷。
「…いいや!俺も、ごめん!全然冷姉のこと
考えられてなかった。」
顔を上げるとそこには頭を下げた冷がいて、
思わず否定してから全力で謝る季楽。
「ふ…帰るか…送ります。季楽、よくやった。
怪我一つさせてないで守れたな。」
ふと笑い、季楽の頭を背伸びしてよしよしする冷。
「あぁ、頭よしよしはやめてくれ。恥ずい。」
自然に頭を下げて素直にされながら、
嬉しくも恥ずかしそうに言う季楽。
依頼人は無事に家に送り、警察に証拠を提出した。
〜帰り道〜
「冷、季楽くん。仲直りしたみたいね。
私のおかげね!」
ふふんと誇らしげに言う菫。
「菫、自分で言うのはどうかと思う。けど、
ありがと。」
呆れるも、素直にお礼を言う冷。
「それは同意だな、だが、ありがとう、菫さん。」
同意しつつもちゃんと感謝を言う季楽。
「何よ、まぁ良いけど。仲良しコンビだものね。」
からかうように言う菫。
「それはなんか違う!」
ムッとする冷。
「からかってるな、コンビって。」
突っ込む季楽。
「でも、ずっと一緒だからな、冷姉。」
にーと笑って嬉しそうに言う季楽。
(ずっと一緒だよ、冷ちゃん。)
そう言って、一週間後には学校にはいない。
「裏切られるなら、もう名前も覚えなくて良い。」
脳裏に昔の親友が映る。
自分はいないかのように振る舞い、陰口を言う女子
たち…時には物消え、班はないようなもの。
冷は心が疼いた。
人に無関心になった出来事…。
思わず不安になる…だけど、両隣にはいなくなる
とは到底思えない、名前もしっかり覚えた二人が
いる。
「どうした?冷姉?」
顔を覗く季楽。
「何ボッーとしてるのよ、冷!」
少し怒ったように言う菫。
「なんでも、行こう。」
心なしか明るい声で微笑んで言う冷。
季楽と菫はその笑顔に顔が少し赤くなりながら、
ついていく。
今回はなかなか重いテーマとなりました。
便利屋にとっても依頼においても「人間関係」は
難しいと感じさせるものでした。
次は師匠が出てきます。
〜登場人物のあとがき〜
季楽「あー、今回は色々あったけど、解決できて
良かったぜ。ケンカはしたが仲直りできた。」
冷 「相変わらず後先考えないところは危なかったが。
今回は感謝かな。」
菫 「まぁ、私が一番仲直りに活躍したんだけれど。」
季楽「お嬢様の活躍って感じだな。」
冷 「そうだね。」
菫 「それ、いじってるわねー。まぁその通り
だけれど。」(誇らしげ)
冷 「認めるところは菫らしいね。最後、みんなで。」
全員「読んでいただきありがとうございました。」




