第六話 依頼に国籍は関係ない
今回は冷と菫の協力回。
菫が外国人の依頼を持ってきた。
商店街での食べ歩きでパスポートをなくしてしまった
らしい。
交番にも届いておらず、便利屋に依頼しにきた外国人。
菫と商店街で聞き込むが見つからず公園に行くと
砂場で遊んでいる女の子が見つけたようで…
町は観光地としても有名で外国人観光客も
多く来る。
朝、特に依頼がなくボッーとしている冷。
季楽は友達と遊びに行っている。
「失礼します。今日は依頼しに来たのだけど。」
菫が誰かを連れて、丁寧な口調で話す。
「はい、こちらにどうぞ。」
こういう時はすぐに気づく冷。
「Hello,〜¥$€%°#〜.」
外国の方である。
冷はHello以外あんまり聞き取れなかった。
日本語以外できない人間である。
「こんにちは、私の名前はジョンです。
初めまして、よろしく。って言ってるわ。」
通訳する菫。
菫は7ヶ国語話せるため、時々こうして通訳して
便利屋を紹介する。
「ハロー、便利屋さんろく二代目の素優 冷です。
よろしくお願いします。」
(全く分からない。依頼にきてくれるのは嬉しい
けども。)
冷や汗をかきながら、笑顔で
カタコト英語で挨拶を返し、日本語で自己紹介
する冷。
ほぼ同時に菫が英語にしている。
ここからは依頼人も日本語訳でお届けする。
「私は商店街で食べ歩きを楽しんでいました。
しかし、どこかにパスポートを落としてしまい、
このままでは母国に帰れません。
どうか探してくれませんか?
交番なるものに行きましたが届いていないようで
どうすれば…。」
困り果てているジョン。
「わかりました、依頼お受けいたします。
見つけますから安心してください。」
明るい声にして安心させる様に話す冷。
「おお〜メシア!」
両手を顔の下に組んだ涙を流して
感動しているジョン。
菫が書類の書き方や依頼料の説明をする。
見つけたら電話することにして、とりあえず
観光を続けてもらうことにした。
「菫、ありがとう。ほんとに外国語は分からない。
依頼は必要だけど、勉強した方が良いかな。」
テーブルに突っ伏して、息を吐いたあと、
お礼を言い、気難しい顔をして話す冷。
「英語ぐらいはできた方が良いんじゃないかしら。
学校でも習うぐらい重要な言語よ。
インバウンド需要も高まっている現代だもの。」
うんうんと首を大きく縦に振って共感する菫。
「うん…頑張るしかないか。」
微妙な顔だが、覚悟は決めた冷。
〜商店街〜
連絡係として菫も同行して、聞き込みを行った。
商店街は人は多く、賑わっているため探すにも苦労
する。
一つ一つ店に入って聞くも首を横に振るばかり。
手がかり一つもない。
「パスポート落ちていませんでしたか?」
最後の店で聞く冷。
「すまんねぇ、見てないのよ。財布なら届けたけど。
パスポートは今日ないねぇ。」
申し訳なさそうに言う店主のおばあさん。
「いえ、ありがとうございます。」
内心落ち込みつつ、笑顔でお礼を言う冷。
「終わったかしら、どうだったの?
夏にぴったりな水羊羹美味しいです。」
水羊羹を優雅に食べながら、聞く菫。
「ありがとねぇ、うれしいよぉ。」
くしゃっと笑う店主。
「ないって…水羊羹…。」
淡々と言い、水羊羹を見て美味しそうという顔が
少し出ている冷。
「私が買ってあげるから食べなさい。
おばあさん、もう一ついただきたいわ。」
わずかな冷の表情の変化を見て、買いに行く菫。
「あっ…うん。」
戸惑いながら、椅子に座る冷。
「はい、冷ーこれが水羊羹よ。
ぷるんとしてて、中のあんも甘さがちょうど良い
んだから。」
嬉しそうに差しだす菫。
「いただきます、美味しいー。」
表情が緩くなり、ほんわか笑顔になる冷。
「やっと、笑顔になったわね。」
安心した様に言う菫。
「えっ…そう?別に普段からあまり笑わないと思う
けど…愛想笑い以外で。」
普通ではと思っている冷。
「べっ、別に、本当の笑顔が見たかっただけよ。
悪い?」
拗ねる菫。
「おぉ、ふーん。良いよ。」
少し嬉しそうな冷。
〜公園〜
「あとは休憩した公園か…」
ホテルではあったことを確認しているため、
休憩場所の公園が可能性があった。
ベンチの下やゴミ箱、滑り台、ブランコなどを見て
行くがやはりない。
砂場は子供が遊んでいるため行けない。
眺めていると…
「これなんだろねー。キラキラしてるー。
本みたいー。」
砂を掘って宝物見つけたぐらいに空にかざす少女。
「ねぇ、それ私に見せてくれるかな?」
子供に微笑む冷。
「やだ、あたちのだもん。あたちが見つけたん
だもん。むぅー。」
頬を膨らませて怒る女の子
「そっかぁ、じゃあ、この絵本と交換しよう。」
どこからか、小さい豆本を取り出す冷。
「…わぁー、小さい、かわいい。うん、良いよ!」
のりのりで承諾する女の子。
「ありがとう。」
自分の妹と照らし合わせながら微笑んで笑う冷。
「菫、確認してください。英語分からない。」
最初から中身確認を諦めている冷。
「はい、ジョンさんの名前書いてあるわ。
依頼人のものね。連絡するわ。」
呆れて返事をし、確認する菫。
〜便利屋 さんろく〜
「Oh〜アリガトウゴザイマス!」
感謝感激なジョン。
「良かったです。喜んでもらえて。」
戸惑いながら愛想笑いで返す冷。
菫が依頼料を受け取り、冷に渡す。
ジョンは何度も頭を下げながら去っていく。
「テンション高かった…ついていけない。」
だいぶお疲れな冷。
「温度差は私からでも感じたわ…」
深く共感する菫。
「冷、聞きたいのだけど。なんで言葉も分からない
のに私に通訳頼んでまで外国の方の依頼も受ける
の?言うのは違うとは思うけれど、言葉が
分かる人だけでも充分に稼げるとは思うわ。」
直球に聞く菫。
「…助けて欲しい人に、依頼に、国籍は関係ない。
それだけ、別に大した理由はない。」
淡々とでもしっかりと言う冷。
「そうなのね、冷らしいわ。
また、連れてくるわね。じゃあ、バイバイ。」
納得して帰っていく菫。
「うん、バイバイ。」
軽く手を振る冷。
太陽が沈んでいく景色は菫を明るく照らし、影を
大きくしていた…
冷 「今回は疲れたなぁ。気を遣いすぎて。
水羊羹は美味しかった。満足。」
菫 「思い出はそれだけなのね。無事に見つかった
ことは嬉しかったわ。久しぶりに二人で
出かけたわね。」
冷 「そうだね、季楽がきてから7年ぶりぐらい?
高校の時はなんだかんだ連れ回された。」
菫 「仕方ないでしょ、あなたが誘ってこないから
誘ってただけよ。それに名前を覚えないからよ。
それはそれとして、依頼に国籍は関係ないは
かっこよかったわね。」
冷 「面白がってるな、その通りだから。
それしか言いようなかったし。
パスポートがなんで砂場に落ちていたかは謎
のままだけど。解決はしたから良いか。」
菫 「そうね、不思議に思うわ。
そろそろ行かなくちゃいけないわ。
言いましょう、あれを。せーの。」
全員「読んでいただきありがとうございました。」




