第十一話 師匠と弟子たち
荒我との決戦が終わってから、変な噂もおさまり、
便利屋さんろくには日常が戻った。
冷にとっては関係ないクリスマスを平和に送れる
はずだった。
しかし、師匠の思いつきと菫の妙な潔さに嫌な予感を
させる。
季楽はクラスメイトにパーティに誘われるが、
師匠の思いつきでの用事ができる予定で断る…
荒我を倒したことにより、噂も嘘だと広がり、
便利屋の依頼も元通りの量が来るようになった。
裏路地の活動も収まっていた。
〜それぞれのクリスマス事情〜
もうすぐクリスマス…彼氏彼女という存在は
そわそわしていき、友達がいる人はパーティの
準備。
冷は、特になかった。もはや興味がない。
子供の頃はサンタクロースからのプレゼントと
家族とのクリスマスパーティを楽しみだったが、
最近は正月に帰るぐらいなため、関係ないので
ある。
季楽とは言うと…
「季楽くん、クリスマスに私のみんなでパーティ
するんだけど、来ない?予定なければ。」
「私も家でもやるんだけど、どうかな?」
「ちょっと、私が先にさそったんだけど!」
「関係ないでしょ!季楽くんの意思が大事なの!」
女子の誘いとケンカを目の前で見せられていた。
「……ごめん…だけど、俺、その日用事があんだ。
だから、誰のパーティにも行けねぇんだ。
気持ちは嬉しかったぜ!ありがとな。」
笑顔で言ってから、平のところに走る季楽。
「季楽くーん!」
残念がる女子たち。
「平、帰ろうぜ。」
気まずそうに言う季楽。
「あぁ、帰ろうか。季楽くんは大変だね。」
少し怒ってる平。
「怒るなよ、俺だって好きでこうなってるんじゃ
ねぇんだからよ。」
申し訳なく思う季楽。
「分かってるよ、僕を優先してくれるのはとても
素晴らしい。とはいえ本当に用事があるのかい?」
微笑んで、見透かしたように聞く季楽。
「うーん、ある予定だ。お養父さんが主催の
クリスマスパーティで色んな人を呼んでやる
からな。」
まだ決まってないが毎年やってるため、
言う季楽。
「確定ではないが、やるのか。まぁ、嘘は
つけないからね。季楽くん。」
納得する平。
「うん、そうだな。」
目線をそらし図星な季楽。
その頃、家では電話が鳴る…
「もしもし、便利屋さんろくの素優 冷です。
師匠はどのようなご用でしょうか?」
冷は用は分かっているがあえて聞く。
「おぅ、冷。今年もクリスマスパーティする
からな。予定空いてるよな!」
空いてる程な山六。
「はい、空いてますよ。
いつもなぜ直前なんですか?予定を気にするなら
もっと前にくださいよ。」
不満を言う冷。
「すまんすまん、いつも思いつきなんでな。
季楽にも伝えておけ。じゃあ切る。」
自由な山六。
「っ…ほんとに自由な人だ。毎年同じ時期の
思いつきってなんだろ?まぁいいか。」
呆れつつ、誘いは嬉しいので微笑む冷。
プルルとまた電話が鳴る。
「また…もしもし、便利屋さんろくです。
犯罪以外ならなんでも受けます。」
営業モードの冷。
「もしもし、私は遊園 菫よ。
ねぇ…今度の」
菫がそこまで言いかけて、
「クリスマスは師匠のところでパーティだから
行けないよ。」
被るように言う冷。
「なんでよ!?前聞いた時はなさそうな感じだった
じゃない!」
泣きそうになっている菫。
「うぅ、電話越しに叫ばないで、耳が死ぬ。
さっき、師匠から連絡がきたから。
ごめん。」
素直に言い、謝る冷。
「そう、仕方ないわね。
別の日に会いましょう。またね。」
潔く諦める菫。
「また。」
(絶対、なんか企んでるな。)
明るい声で言う冷。
内心は嫌な予感がしている。
「ただいま、冷姉。師匠からなんか連絡きたか?」
学校から帰ってきた季楽。
「来たよ、クリスマスパーティーやるから
季楽も連れてこいって言われた。
言われなくても連れていくけど…」
普通連れてくと思いながら話す冷。
「俺、一応高校生だぞ。自分の意思で反抗期とか
まぁ、師匠に誘われたら行くけどよ。」
(良かった、予定入った…。)
子供扱いするなと言いたい季楽。
内心はやることになって安心している。
「反抗期か、いつも反抗されてるから、慣れた。」
慣れてる冷。
「慣れって怖いな。じゃなくてどういう認識だよ。」
ツッコミを入れる季楽。
「ほ…?違った?」
とぼけている冷。
「間違ってはねぇかも。」
否定しきれなかった季楽。
〜師匠のクリスマスパーティ会場〜
場所は…なぜが菫の家だった。
「なぜ?菫の家なんだろうか?」
嫌な予感が的中してめんどくさくなっている冷。
「えっ!?この立派な家がか?!菫さんの家!?
本当に金持ちだな。」
すごすぎて開いた口が閉じない季楽。
「いらっしゃいませ、冷、季楽くん。
ローズ、冷を逃がさないようにして。」
冷が少しずつ帰ろうとするため、メイド長である
ローズに指示をする。
「はい、菫お嬢様。」
すさっと冷を捕まえるローズ。
「…ローズさん、お疲れ様です。」
がっしり腕を掴まれて、挨拶をする冷。
観念した表情をしている。
「えぇ、冷様もお疲れ様です。」
少し面白がっているが表には出していないローズ。
「私が潔く諦めると思うの?」
ふふんと自信ありげに笑う菫。
「私は山六さんに会場提供したまでよ。
それで同席させていただくことにしたのよ。」
作戦大成功な菫。
「そう…そんなに私とクリスマスパーティした
かったんだね。ごめん、いつも断ってたから。
一緒に行こう。」
嬉しそうに笑う冷。
まさかの反応に赤面する菫。
ローズは菫の表情にくすっと笑う。
季楽は冷の友達思いなところを嬉しそうに見守る。
「ローズ、何笑ってるのかしら?」
すぐさま反応して怒る菫。
「いえ、菫お嬢様がしてやられてる姿に少々
面白みが…ふふ。」
性格が悪いローズ。
「ちょっと!はぁ、相変わらずなんだから。
ローズは山六さんの準備を手伝ってきなさい。」
怒りながらも指示はしっかりする菫。
「かしこまりました、菫お嬢様。」
切り替えて坦々と返すローズ。
「その…ローズさんのこと知ってるのか?冷姉。」
素直に疑問を聞く季楽。
「うん、よく菫に誘われて遊びに行ってたから。
本家の時からローズさんがついてた。」
いつもいるぐらいのイメージな冷。
「そうか、あっ菫さんはTUNAGARUN知ってる
のか?メールで冷とやりとりしてると聞いたが。」
前のことを思い出して聞く季楽。
「知ってるわよ、仕事で使うもの。
どうしたの?冷…もしかして知らなかったの?」
意外そうな顔をする菫。
冷は驚いている。
「私だけ…知らなかった。」
拗ねる冷。
「冷、いえその知ってるものだと思ってたのよ。
ごめんなさい。もしかして、FUNSUTAとか、
Aも!?」
慌てつつ、他のSNSの名前を出す菫。
「知らない…というかなくても生きていける。」
拗ねたままでスマホを取り出し、アプリを見せる冷。
「ちょっと貸しなさい…スマホ古いわね。」
勝手に奪っておきながらスマホに文句を言う菫。
「うん?あー、9年前から変えてない。」
物持ちだけは良い冷。
「9年前から!?普通スマホって2.3年で変えるって
聞いたことあるぞ。バッテリーの関係とかでよ。」
驚いている季楽。
「そうなの?うーん?最近、すぐ充電がなくなる
けど、メールぐらいでしか使わないから、
気にしてなかった。」
興味がなさすぎる冷。
「それは替え時の証拠ね。私が買ってあげるわ。
それまではアプリ入れるのは待ちなさい。」
スマホを返して、嬉しそうに言う菫。
「ありがとう、気持ちだけで充分、自分で買う。」
坦々と言う冷。
「そんな〜」
がっかりする菫。
〜パーティ開始〜
大きな広間には山六の弟子がたくさんいた。
友人もたくさん集まっている。
「みんな集まったな、それじゃ乾杯!」
「乾杯!」
会場は豪華だが、やっていることは居酒屋と
変わらない。
「はぁ…騒がしい。」
ウーロン茶をシャンパングラスで飲みながら、
機嫌が悪い冷。
「冷姉は酒飲まないんだな。とりあえず俺は
動かないでおくぜ。」
意外な顔をし、人が多いため冷のそばにいることに
した季楽。
「あー、酒とたばこと危険薬物
三大健康に害するもの。」
はっきり言う冷。
「だいぶ嫌いだな。」
唖然とする季楽。
「おい、素優 冷、竹刀 季楽。久しぶりじゃな。」
見覚えのある顔が少し気まずそうに大声で
話しかける。
「荒我!なんできたんだ。」
季楽が警戒する。
「荒我?…私と季楽にやられた人。久しぶり。
季楽、普通にパーティに呼ばれたんだと思うよ。」
冷静な冷。
「ひどい言われようじゃな。もうせん。
今度は正々堂々挑むといったじゃろ。
今日は普通に挨拶しに来ただけじゃ。
勝手に楽しんでいろ、じゃーの。」
怒りながらも、ガッと笑って去る荒我。
「…はい、静かにしてます。」
楽しめない冷。
「分かってるぞ。」
警戒心むき出しな季楽。
「冷ー!来い!」
山六が大声で呼ぶ。
「えっ…はぁ…、はい。」
(なぜ呼ぶ?やめて、目立つの嫌い。
でも師匠に呼ばれたら行くしかない…。)
すごーく嫌そうな顔をしてから、諦めたように
向かう冷。
姿勢をピンとして、堂々と山六の隣に行く。
「冷姉、切り替え能力すごいな。」
尊敬する季楽。
「みんな聞いてくれ!素優 冷が便利屋の二代目!
冷、挨拶できるよな?」
注目を集めて、嬉しそうに豪快に紹介する山六。
「……。」
注目が一気に集まり、緊張する冷。
深呼吸をしてから、
「私は素優 冷と申します。このたび便利屋の
二代目に就任しました。よろしくお願いします。」
真剣に大声ではっきりと言う冷。
「みんな、拍手だ!」
山六が言うと全員で拍手が起こる。
「おめでとう!」「頑張れよー!」「応援するぜ!」
祝福の言葉も聞こえた。
「ありがとうございます!」
お礼を言ってから、すぐに下に降りた冷。
〜パーティ後〜
「はぁー、疲れた。」
発表の後、たくさんの人が話しかけにきたため、
愛想を全力のままで切り抜けて、疲れている冷。
「お疲れ様、冷。私が送るわ。季楽もよ。」
ノリノリで言っている菫だが、運転するのは
専属運転手である。
「ありがとう…うっ…飲みすぎた。」
感謝した後、顔色が悪くなる冷。
「菫さん、ありがとうございます。
冷姉、酒飲まされてたもんな。でも、強いんだな。
正気保ってるもんな。」
菫にしっかり感謝を言い、冷の酒の強さに驚く
季楽。
「まぁ、一応強い方…でも嫌い。」
車に乗り、不機嫌である冷。
その後、うとうとし始めて寝てしまった。
「あら、寝っちゃったわね。
話したかったけれど、あの状態じゃ無理ね。」
残念がってはいるものの、冷のことをみて微笑む
菫。
「初めて見た、こんな気が抜けた顔。
そりゃそうか。いつも仕事モードって感じだ。
俺といる時も真剣だし。」
不思議という顔をする菫。
「そうね、冷は責任感が強いのよ。
季楽くんは大切だからそうなるのね。
自分のことは後回しにしてしまうの。」
心配そうな顔で言う菫。
「それはそうだな、俺のことちゃんとここまで
育てたんだもんな。親になることを知らないはず
なのに…俺、助けになりてぇのに全然頼らねぇし。
自分で全部やっちまう。疲れたところ見せないで
ずっと…。」
泣きそうになる季楽。
「うふふ、季楽くんは本当に冷のことが大好き
なのね。やけちゃうわ。」
からかうように言う菫。
「あっ、いやその。うぅ。」
恥ずかしくて、顔を真っ赤にする季楽。
「冷のこと、よろしくお願い致します。」
丁寧に誠意のこもった声と態度で言う菫。
「冷のこと、裏切ったら許さないんだから!」
とびきりの笑顔で真剣に言う菫。
「おう、約束するぜ!」
にっと笑って言う季楽。
「着いたわ、季楽くん一人で運べる?運転手に
手伝わせましょうか?」
気を遣って言う菫。
「一人で運べるぞ。冷姉運べなくてどうする。」
自信を持って言う季楽。
「そうね、分かったわ。じゃあ、また。近いうち
に訪問させてもらうわ。」
かっこつけて去っていく菫。
運転するのはあくまで運転手である。
冷の部屋に入る季楽。
ふとんに寝かせる。
「綺麗にしてるな、ゲーム機がある…下にも
あったな。個人用で買ったのか?俺の部屋にも
優しいな。」
冷の部屋を眺めての感想がゲームだった季楽。
部屋をすばやく出て、シャワーで済まし、季楽も
寝た…
ローズ「こんにちは皆様、私は菫お嬢様の家の
メイド長のローズと申します。」
冷 「ローズさん、出てくるのが早い…。
今日は疲れたな、まさか発表することに
なるとは。」
菫 「良いじゃない、とても素敵だったわ。
堂々としていて。」
ローズ「はい、お嬢様が赤面しているのが一番私は
良かったと思いますよ。」
菫 「ちょっと、ローズ余計なことを言わないで。」
季楽 「ローズさんってけっこう悪い性格してる
よな。」
ローズ「そうですか?冷様を捕まえたのも
良かったです。」
冷 「ローズさん、そういうところ…。」
ローズ「もうちょっと手応えが欲しかったところ
ですが、次に期待ですね。」
季楽 「次も捕まえる気なのか?容赦ないな。
ローズさん。」
冷 「手応え、頑張る。」
菫 「違うわ、冷、なんでそこでその返答なのよ。
ローズも変に冷を頑張らせないで。」
ローズ「半分冗談ですよ。」
季楽 「半分本気なのかよ。
冷姉も俺をもうちょっと頼ってくれよな。
そうすればローズのことも止められるぞ。」
冷 「頼ったら苦労かけるから自分でやってる。」
菫 「もう、そういうところよ。心配だわ。
季楽くんは冷のこと思ってて良いわ。」
季楽 「照れるからやめてくれ。」
ローズ「そろそろ終わりようですよ、菫お嬢様、
冷様、季楽様行きますよ、せーの。」
全員 「読んでいただきありがとうございました。」




