第一話 便利屋さんろくー無関心な傘使いは孤独な少年に出会うー
人が住んでいるようには見えない三階建の建物がある…そこには、「便利屋 さんろく」の拠点がある。
依頼内容は「犯罪以外ならなんでも」で、
落とし物探し、猫・犬探し、裏社会に関わるようなこと
までーーー。
その中心にいるのが、
愛想は良いが人に無関心で名前も忘れてしまう
二代目(予定)素優 冷。
「今日も仕事やるかー。」
そんなゆるーい毎日を過ごす彼女の前に現れたのは
裏路地で危うく倒されそうになっていた一人の少年
だった。
便利屋は人の縁をつなぎながら、仲間と、家族と、時には敵との交わりになっていく。
これは町の表と裏を行き来しながら、少し不器用で、
でも確かに強い「便利屋」の物語。
三階建ての誰か本当に住んでいるのか少し不安に
なるほど古い建物がある。
その一階は事務所になっていて、大きなデスクに
本を積み、姿勢良く背もたれのある椅子に座る人物
がいる。
主人公は素優 冷。
便利屋 さんろくの実質の二代目である。
まだ認められていないが、将来継がせるつもり
で、一代目は自由気ままに過ごしている。
中性的な顔をしており、ショートで耳まで出た髪。
無関心をそのまま表したようなまっすぐな細眉に
少し吊り目かなぐらいな目である。
一代目がそのまま定期購読契約している町の新聞を
読みながら、ぼっーとしていた。
プルルルと電話がなる。すぐにとる。
「もしもし、こちらは便利屋さんろくです。
犯罪になること以外なんでも請け負います。」
淡々と話す冷。
「もしもし、猫がどっかいっちゃってね。
白くて、全体的にふわふわしてるの。」
いつものおばあさん。
「はい、猫探しですね。わかりました。」
特に声は変わらず話す冷。
「前もあったようなファイルみよう。」
うろ覚えな冷。
冷は人に無関心で名前は誰も覚えない。
そのため、ファイルに記録して努力はしている
つもりである。
「あった…えっとあー。いつものか。」
低い声で独り言を言いながら、
すぐに理解してファイルをしまう。
「傘は…あった。忘れてはいけない。」
紺色の60cmの傘を持つ。
まずコンビニで煮干しと猫用の餌を買い、大きめの
袋をあえて買う。
ファイルに書いてあった場所を回っていく。
その周辺も見ながら、歩いていく。
町は小さいほうながらも商店街やチェーン店
があり、人も多く住んでいる。
しかし、裏路地や怪しい場所も存在し、治安が良い
とは言い切れない。
「いた…よし。」
大きめの袋に煮干しと餌を入れる。
「おいでー、飼い主さんが心配してるよー。」
高めの声で誘う冷。名前は知らない。
姿勢を低くして、警戒されないようにする。
「にゃー。」
餌につられて普通に近づいてくる。
「よく食べるねー。」
餌にがっついているところをそっと抱き上げる。
餌も持って、そのまま依頼人の元へ。
「あー、ホワイトちゃん。良かったわ。
いつもありがとうね、冷さん。」
満面の笑みでお礼を言うおばあさん。
猫を、すりすりしている。
「いえ、無事で良かったですよ。
こちら依頼料です。」
名前は覚えてないので、作り笑顔で愛想良くふる
まって誤魔化す冷。
「そこはしっかりしてるねー。はい、500円。」
少し嫌味っぽく言うもちゃんと渡すおばあさん。
「ありがとうございます。またご依頼をお待ち
してます。」
丁寧に話して、家から出ていく冷。
依頼料は一代目から変わっておらず、安いとも
思えるが、冷は普通だと思ってるため特になんとも
思わない。
達成感はあるが、次の日には忘れている。
「冷ー!冷ー?冷!」
2回大声呼びながら小走りできて、気づかないため
肩を叩いて短く呼ぶ女性。
「…あっ、菫おはよう。」
少し衝撃で前に体勢がよるが冷静に戻して、
挨拶する冷。
「あっじゃないのよ。私は3回呼んだけれど。
しかも親友である遊園 菫が呼んでいるんだから一回で気づきなさいよ。」
親友を強調しつつ、怒る菫。
「うん、ごめん。知らない人かと思った。
なんか用?」
表情変えずに素直に謝り、質問する冷。
「知らない人じゃないでしょう。
はぁ、まぁ良いわ。さっき、あそこの裏路地に
小さい男の子を見かけたの。気になるから
見に行ってくれない?」
裏路地はなるべく入りたくないため、頼む菫。
「分かった、行ってくる。」
目つきを変えて裏路地に行く冷。
「ありがとう、気をつけるのよー。
危ないのよね、裏路地にまともなのいないもの。」
冷の向かっていく方に向かって大声で話す菫。
〜裏路地〜
放置されたゴミ箱、多くのらくがき。
目つきが怖い、柄が悪い人たちがうろついてる。
「…一人で生きてやる。親戚なんて信用できるか。」
少年は警戒心むき出して歩いている。
どんと人にぶつかった。正確にはぶつかられた。
「おい、どうしてくれんだ。ガキのお前のせいで
汚れたじゃねぇか。」
転んでいる少年に圧をかける。
「お前らがぶつかってきたんだろ。
俺には関係ねぇ。」
声が少し震えながら反論する少年。
「はぁ、弁償しろ言ってんだ。金出せ!」
さらに大声を出して言う。
「ねぇよ、金なんて。あっても出すものか。」
必死に抵抗する少年。
「なら、こうするしかねぇな。」
殴りかかる。
少年はとっさに身を守る体勢になる。
大人二人で容赦はない。
(誰か、助けて。死にたくない。)
心の中で素直に思った少年。
ドン!と鈍い音が聞こえた。
一人が飛ばされ、気絶している。
「はぁ…正当防衛だ。さてともう一人も。」
犯罪にはしたくないので言う冷。
「なんだお前!おりゃー。」
単純に殴りかかるもう一人。
「単純だな。」
低い声で冷たく言う冷。
傘で首元をトンと叩き、相手は気絶した。
二人をかかえて、紐で縛り、警察に電話する。
「もしもし、子供を襲ってる二人を私が傘で
気絶させたのできてください。お願いします。」
高めの声で言う冷。
(つ、強い…あっという間に。)
唖然とする少年。
「えっと…だいぶ怪我してるね。名前は?
私は冷。」
冷静に状況を把握する冷。
「季楽です。」
名前を名乗るので精一杯な季楽。
「親はいる?」
尋問スタイルな冷。
「いない…。」
目線を下に落として言う季楽。
「そう…じゃあ病院いって…師匠に連絡だな。」
素直に信じて行動を考える冷。
「うん?来た、隠れて。」
警察が来たのを察して指示する冷。
「えっ、うん。」
言う通りにする少年。
警察に状況を説明している。
警察は少年がいないことに気づく。
「その…冷さん。少年はどこに?」
地元の警察なので冷のことを知っている。
「うん?私が預かる。だから安心して、
病院連れてくし。問題ない。」
場所は言わない冷。
「そうっすか。分かりました。病院で詳しいこと
は聞きますから。ちゃんと、連れてって
くださいよ。」
呆れたように言う警察。
「はい、任せてください。」
自信満々な冷。
「あと俺の名前覚えてます?時々会ってるんです
けど。」
警察にはよく世話になってる冷である。
「うーんと蟻地獄さん?」
とんでもない名前をいう冷。
「有原 陽ですー。」
泣いてる有原。
そのまま気絶している二人を連れていく。
「お願いしまーす。あり…ありさん。」
蟻だと思っている冷。
「名前は覚えようぜ。」
思わず突っ込んで立ち上がる季楽。
「おっ、行こうか。」
振り返る冷。
「あ、あれ…?」
そのまま倒れる季楽。
「…!季楽!」
体を支える冷。
「気絶してるな、急いで行かないと。」
すばやく病院に連れていく冷。
手当てされ、夜になるまで眠っている季楽。
〜町の病院〜
「うっ…ううん?あれ病院?痛い。」
周りを見る季楽。
「あっ、やっと起きたー。起きあがんない方が
良いぞ。悪化する。」
からかうような口調で少し真剣に言う冷。
「怖いこと言うな、その助けてくれてありがとう。」
突っ込んだ後、照れながらお礼を言う季楽。
「いいえ、便利屋として当たり前なことしただけ。」
少し微笑んで言う冷。
「色々個人情報聞いていい?」
淡々とした口調に戻る冷。
「直球だな。冷にだったら良いよ。」
承諾する季楽。
季楽は黒奧 季楽と言い、
年齢は10歳、男性、近くの小学校に通っている。
両親は突然の事故で他界し、葬式の後に裏路地に
逃げてきた。親戚とはほとんど会ったことがなく、
信用できない。
病院に冷が報告し、病院が警察に報告した。
次の日、季楽は退院して冷について行った…
〜師匠登場〜
「ただいま、ちゃんといるね、師匠。」
師匠がいることを確認して安堵する冷。
「おかえり、冷。ご苦労さんだったな。
普段電話しない冷から来たんだ。戻るぞ。」
大柄な白髪のおじいさんだった。
冷よりも強いことをひしひしと感じる季楽。
「おぅ、少年!名前はなんだ?」
元気な声で言う師匠。
「はい、俺は黒奧 季楽です。」
背筋がピンとする季楽。
「季楽か、俺はな、竹刀 山六だ。あの便利屋の名前のな。よろしく!」
歯を出して笑いながら大声で言う山六。
「その、季楽?は両親がいないみたいで親戚も信用
できないと、どうします?」
相談する冷。
(なんで、確信ないんだ、さっき俺自己紹介したはず
だよな。)
関心なさすぎて戸惑う季楽。
「お前が養子にすれば良いじゃないか。
家族にすれば、問題ない!」
すぐに答える山六。
「はぁ、年齢差考えて無理ですよ。10歳差じゃ、
さすがに姉弟レベルです。」
現実的に言う冷。
「じゃあ、俺の養子にするか。で世話を冷がやる。
それなら良いだろう。そうすればここにいても
問題ないし、学校にもちゃんと通える。
金は俺が出す。修行もさせて強くする。
冷の弟弟子だな。良いことづくめだ。」
満足そうな山六。
「うん、それなら良いですよ、えっときぃ。」
承諾し、季楽の名前のきの部分で少し止まる。
「季楽だ!俺もそれが良い。俺も強くなりたい。
師匠って呼んでも良いですか?山六さん。」
冷にツッコミを入れて、山六の方に向き直り丁寧に
お願いする季楽。
「おぅよ、師匠と呼んでくれ!」
嬉しそうに言う山六。
こうして、季楽は便利屋の一員になったの
だった…。
読んでいただきありがとうございます。
今回は素優 冷がゆったりと一人気ままにしていたところに黒奧 季楽という少年が現れてこれからの便利屋が
変わりそうというところまでを書きました。
冷は季楽と出会うことで人との関わり方が変わっていく
大きな転機といえますね。
冷も季楽も成長していく姿を描けていければ良いと
思います。
あとがきまで読んでいただきありがとうございました。




