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サンタが街にやって来る

サンタさんなんてウソだもん

作者: 上条ソフィ

 サンタさんへ


 猫のモンスターのぬいぐるみがほしいです。


 大きいやつがいいです。


 五十センチのやつがいい。


 ぼくより


 ◆◇◆◇


 今日はクリスマスイブ。


 ぼくはベッドの上で腕を組んで座っている。

 これから偽サンタを捕まえるんだ。


 サンタさんなんて本当はいない。

 サンタさんなんて本当は嘘なんだ。


 どうして知ってるかって?


 ぼくは、パパとママが話しているのを聞いちゃったんだ。


 何日か前、ぼくは夜トイレに起きた。リビングの前を通ったら、パパの声がしたんだ。パパはお仕事で忙しいから、朝も夜もしゃべってない。てか、見てない。


 ぼくは嬉しくなって、ドアの方に近づいていった。


 ママの声がする。

「それでね、今日あの子が欲しいっていう猫のモンスターのぬいぐるみを見に行ったんだけど、公式のお店だともう全部売り切れで。すごいのよ。レジに並ぶ列が三十分待ちって、テーマパークじゃないんだから、みたいな感じで」


「まあ、今はクリスマスシーズンだからな。で、あいつが欲しいやつは買えたのか?」


「ぬいぐるみの棚なんてすっからかんよ。仕方ないからネットでも探してみたんだけど、ほとんど中古品ばっかり。それでも新品のやつより二、三割高く売ってるのよ。信じられる?」


「もうちょっと早く買っておけばよかったのに」


「私もそう思って、あの子を何回かせっついたのよ。『サンタさんだって忙しいんだから、早めにお手紙を書かないと、欲しいものがもらえなくなるわよ』って。で、書いたのはいいんだけど、あの子、それから何回か修正出してるのよ。見てこれ」


 カサカサと音がして、パパが笑い出した。


「ははは! 本当だ。『猫のモンスターのぬいぐるみがほしいです。』の下の、『大きいやつがいい』っていうやつ、後から足したんだな。ペンの色が違うもんな。で、それを線で消して、『五十センチのやつ』を指定したわけか。ちゃっかりしてんな、あいつも」


「そうなのよ。五十センチのぬいぐるみって、バカみたいに高いんだから。小さいやつだったらあったんだけど」


「猫のモンスターのぬいぐるみって、あいつ持ってなかったか?」


「なんかね、それは進化する前のやつなんだって。私には全く見分けがつかないけど。猫じゃなくて、犬のぬいぐるみだったら五十センチのやつあるんだけど。これどう思う?」


「うーん。でかいやつがいいんだったら、これでいいんじゃないか? これは買えそうなの?」


「近所のぬいぐるみ屋さんでね。公式ショップで売っているお値段のプラス二千円で買えるのよね。いい商売でしょう?」


「うわぁ、商売っ気出すなぁ」


 ママとパパは笑い合っている。


 ぼくはショックで、足音を立てないようにそっと自分の部屋に戻った。


 サンタさんに書いた手紙はサンタさんのものなのに、なんでママとパパが見てるの?


 なんでパパとママが猫のモンスターのぬいぐるみを買う話をしてるの?


 ぼくはサンタさんからもらいたかったのに。


 やっぱりサンタさんなんて嘘なんだ!


 友達のお兄ちゃんが前に言ってた。「サンタさんなんて嘘なんだぜ」って。


 ぼくも友達も、そんなことない、サンタはいるんだって言ったけど、やっぱり嘘だったんだ!


 だから、ぼくはママかパパのにせサンタが部屋に入ってきたら、ぜったいに捕まえてやるんだ!


 ぼくはベッドの上で手をぎゅっと握った。眠くなんか、ない!!


 ガタンと音がしたから、ぼくはビクッとして窓のほうを見た。ぶ厚いカーテンがひらひら揺れて、寒い空気がすうっと入ってきた。


 カラカラカラ


 窓が開く音がする。


 カーテンの後ろから、人の影が見えた。

 足がにょきっと入ってきて、それから、どう体と腕が見えた。

 最後に頭が見えた。


 真っ赤な服を着た人が、窓から入ってきたのだ!


 ふうっと息をついたその人と、ぼくは目が合った。


 その人は止まった。ぼくも止まった。


 その人は、困ったように赤い帽子をかぶった頭をかいた。


「あー、見られちゃったな」

「だれだおまえ!」

「しー! 僕はサンタだよ」

「うそだ! サンタなんていないもん!」

「いるよー。僕だよ」

「サンタはママとパパなんだって! ぼく、聞いちゃったんだから!」

「そのサンタさんとは別のサンタだよ、僕は」


 どういうこと?

 ぼくは首を横にした。それから、ブンブンと頭を振った。


 ぼくはだまされないぞ。


「絵本のサンタさんはおじいちゃんだもん! おじさんじゃないもん! お前は偽サンタだ!」


 この人は、背が高いおじさんだ。絵本のサンタさんみたいに大きなお腹をしてないし、白いヒゲも生えてない。赤い服は着てるけど、ズボンが短くて白いくつ下が見えてる。


 それに、サンタさんの『かんろく』がない。

『かんろく』の意味はよくわかんないけど、偽者には『かんろく』がないって怪盗のアニメで言ってた。


「僕はおじさんじゃないよ! あー、その、なんていうか……僕はサンタさんの代理人です。代理って意味わかる?」


 ぼくは首を横に振った。


「えっとね、サンタさんはギックリ腰……えーっと、腰が痛くなっちゃってね、ソリに乗れなくなっちゃったんだ。だから僕が代わりにプレゼントをくばってるんだよ」


「じゃあおまえは、偽者だな!」


「偽者じゃないよ。ちゃんとサンタさんから引き継いで……えーっと、お願いされてきたんです」


「うそつき!」


「うそじゃないったら。しかたないなぁ。じゃあ、一緒に行く?」


「ぼくのことを誘拐ゆうかいするつもり? うちはフツーのちゅーりゅーかていだから、身のしろ金なんて払えないよ」


「誘拐なんてしないよ。ひどいな。ちゃんとお家に帰してあげる。サンタが偽物だって言い回られたら僕も困っちゃうんだよ。僕がサンタさんに怒られちゃう。だからサンタさんの職業体験、ああ、なんだ、サンタさんのお仕事をちょっと手伝ってもらおうかなと思って」


「サンタさんのお仕事を手伝うの? ぼく、なんかもらえる?」


「ちゃっかりしてるな、君は。もちろん君にもプレゼントを持ってきたよ。それは後であげるから。さあ、早くソリに乗って」


「えー、でも、外寒いからヤダ」


「子供は風の子じゃないか!」


「ぼくは風の子じゃないよ。ママとパパの子だよ」


「そーゆーことじゃなくて……ええと、アレだ、冒険だよ!」


「冒険? ドラゴン出てくる?」


「出てこないよ」


「じゃあ、魔王倒す?」


「倒さないよ」


「おじさん、魔法使い?」


「だから僕はサンタさんだってば!」


 ぼくはおじさんをじーっと見た。

 おじさんは目を逸らした。


「ええと、正確にはサンタさんの代理だけど。でも委任されてきてるし……大まかな括りで言えば、サンタだよ」


 やっぱりあやしい。


 ぼくはママを呼ぼうと、思いっきり息を吸った。


「マ――」



「さ、良い子はサンタさんと冒険に行こうねー」


 サンタさんはぼくの口をふさぎながらぼくを抱っこして、窓の外にあったソリに乗せた。


 ソリは木でできていて、座ると固かった。

 ソリの後ろには白くて大きな袋が何個も置いてあった。きっとプレゼントが入っているんだ。


 あの袋に入ってるプレゼントが、ぜんぶぼくのものだったらなぁ。


 ソリの前にはトナカイが……一、二、三、四、五匹いる。

 一番近くにいたトナカイと目が合うと、トナカイは意地悪そうな顔をして笑った。


 むっとしたぼくは、やっつけてやろうかと立ち上がった。


 手をグーパンチにしたところで、ぼくの後ろにサンタさんが座り込んだ。


「さ、早く座って。危ないから。運転中は立っちゃダメだよ。ここの前にある木のハンドルを持ってね。懐かしいなぁ。僕も小さい頃一度、サンタさんのソリに乗せてもらったことがあったんだよ。ふふ。楽しかったなあ」


 ハンドルは、絵本に出てくる海賊船についているような大きな丸いハンドルだった。


「ね、これで方向転換ができるの?」


 サンタさんは声を立てて笑った。


 むっとしたぼくは、サンタさんの腕をグーパンチした。


「ごめん、ごめん。君を笑ったんじゃないよ。僕も同じことを聞いたなって思い出して。残念だけどできないよ。これは固定されてるからね。子供ってこういうの好きでしょ? ちょっとした職人さんの遊び心だよ。さ、外は寒いから毛皮のコートを着て」


 なーんだ、つまんない。


 ぼくは渡された毛皮のコートを着た。

 コートはずっしりと重くて、ぶかぶかだ。


 サンタさんが「ほう!」と掛け声を上げて、紐をびしりと叩いた。そうするとトナカイたちは一気に走り出した。


 ソリはぐんぐんと空の上まで登っていく。


 ぼくはどんどん小さくなっていく街を見て、「すごい!」と声を上げた。



 最初に行ったのは友達の家だった。


 ぷぷ。

 友達は、な、なんと! ママと一緒に寝ていたのだ!


『赤ちゃんじゃないんだから、一人で眠るに決まってんじゃねえか』って言っていたのに。


 今度からかってやろう。


 サンタさんは友達の本棚に、そっと何かを置いた。

 それからぼくのことを手招きしたけど、ぼくは無視した。

 何かいたずらしてやろうかと部屋の中を見ていたんだ。


 顔の上にスパイダーのおもちゃを置いてやろうか。


 そう思っていたのに、無理やりソリに乗せられてしまった。


「何すんだよ!」


「急いでるの! こんなところで時間食ってられないの! 本当はこの地域だって、もっと早くに終えるはずだったのに、トナカイたちが全く言うこと聞いてくれないから! って、わあ!」


 トナカイたちは耳をピンと立てて、すごいスピードで走り出した。


「わわわ! ごめん! ごめんって! 悪口じゃないんだってば! 機嫌直してよ。サンタさんが来れないのは仕方ないじゃないか。ぎっくり腰なんだから」


 ソリはジェットコースターみたいに、上に上がったり、下に下がったり、ぐるりと一回転したりする。


 そのたびに体がふわっと浮いて、ぼくは楽しくて笑い転げてしまった。


「これを楽しめるなんて、君、サンタの素質あるかもしれないよ。将来、なる?」

 サンタさんがげっそりした顔で言うから、ぼくはまた笑った。


 ◆◇◆◇


 ソリはぐんぐん走っていく。


 いろんな子どものところにプレゼントを置いていく。

 こっそりかくすように置いてくのが、変だなと思った。


 ドロボーの逆みたいだ。

 そういえば、包み紙にも包まれてないし。

 ふつー、プレゼントって紙に包んであるんじゃないの?


 サンタさんって変なの。


 ぼくも手伝った。

 子どもが気づかないところに置くのが、ぼくのミッションだ。


「なんで?」って聞いたら、「うーん、昔はもっと堂々と置いていったんだけどね。今のご時世、朝起きて知らない物が置いてあったら大事件でしょ?」とサンタさんは困った顔をした。


「みんな気づかないかもよ。いいの?」


「いいんだよ。気がつかなかったら、その子は物に困ってないってことだから」


 気づかなかったら、ありがとうも言ってもらえないのに。


 サンタさんって変なの。


 最初はスリルがあって楽しかったけど、ぼくはだんだん飽きてきた。




 暑いところに着いた。

 僕は毛皮のコートを脱いだ。

 トナカイも汗をかいてウンザリした顔をしている。


「ね、冬なのになんでここは暑いの?」


「ここは南半球だからね。うーんとね、ここは、君が住んでいるところと季節が逆なんだ。だから暑いんだよ」


「ふーん」


「地球には、ずっと暑かったり、寒かったりするところもあるんだよ。ずっと暑いところは赤道って言って、ずっと寒いところは北極と南極だよ」


「へー」


「ああ。子供に説明するって難しいな。子供相手の仕事をしてるのに、実際に子供と話す機会なんてないからな……サンタさんだったらどうやって説明するんだろう? こういうところが修行が足りないのかな、僕」


 ぶつぶつ言っているサンタさんを見て、トナカイたちは笑っている。

 きっとこのサンタさんは新人なんだ。


 しかたがないから、おおめにみてやろう、とぼくは思った。



 次に着いたのは寒いところだった。


 耳がちぎれそうに痛い。

 耳がキーンとする。


 雪がしんしんと降って、あたり一面真っ白だ。


 ぼくは走り出した。


 足跡をいっぱいつけて、ふわふわの雪の上にダイブした。

 口の中に入った雪は冷たくて美味しい。


「おおーい! 早く行くよ!」

 サンタさんがぼくを呼んだから、「ええー」って言いながら、ついていくことにした。


 とーっても大きい家に着いた。

 さっきぼくが走っていたのは、この家の庭だったみたい。


 中にこっそり入って(やっぱりドロボーみたいじゃない?)、ながーい廊下を歩いて、ぼくたちは子供部屋に着いた。


 ぼくの部屋が百個入りそうなくらい大きな部屋だった。

 ぼくが欲しいゲームも、ぬいぐるみも、カードも、ぜーんぶある。


 サンタさんは白い袋の中から大きな物を取り出して、部屋の端っこのおもちゃがいっぱい置いてある山の中に埋めた。


「ねえ、サンタさん。この子、プレゼントなんているのかな?」


「もちろんいるよ。サンタは世界中の子供のところに行くんだよ」


「ふーん」


 次に行ったのは、ぼろぼろの家だった。

 吹雪で吹き飛ばされちゃいそうだ。


 中に入ると、すきま風がヒューヒューと入ってきた。

 ペラペラのふとんをぎゅっとにぎっている子どもは、すごく寒そうだ。


 サンタさんは白い袋から小さなリボンを取り出すと、その子のぼろぼろの靴下の隣に置いた。


 そういえば、さっきの子のベッドには大きな靴下が飾ってあったけど、ここにはそれもない。


「ねえ、なんでおっきな家に住んでる子と、ぼろぼろの家に住んでる子がいるの?」


「うーん、そうだね。簡単に言っちゃうと、お金があるか、ないか、なんだけど」

 サンタさんは困った顔をしている。


「びんぼーってこと?」


「まあそうなんだけど……その言葉は、人に向けて言っちゃダメだよ。あまりいい言葉ではないからね」


「えー、なんで? びんぼーなら働けばいいじゃん。パパもママも働いてるよ。ぼくだってお金持ってるし。去年のお年玉があるから、ぼく、ガチャ十回できるよ」


 ガチャの話をしたかったのに、サンタさんは黙ってぼくを手招きした。

 ぼくたちはオンボロの家を出て、ソリに乗り込んだ。


「……君には少し難しいかもしれないけど、いい? よく聞いて。働けばみんながみんな、お金持ちになれるわけじゃないし、働きたくても働けない人もいるんだ。お金持ちが偉いわけじゃないし、お金持ちが悪い人なわけでもないよ。でも世界にはね、きれいなお水が飲めなくていつもお腹をこわしてる子どももいるし、食べるものがなくて生の小麦粉を舐めてる子どももいる。わかるかな?」


 ぼくは目をぱちくりさせた。


「だから僕たちサンタは、子どもがみんな健やかに、えーっと、すくすく育つように、こうしてプレゼントを配っているんだよ」


「でもあのお金持ちの子は、何でも持ってるから、サンタさんがあげたプレゼントなんてすぐに忘れちゃうと思うよ。なのにあの子にはあんな大きなプレゼントあげて、貧乏な子にはあんな小さなプレゼントあげるなんて、サンタさんひどくない?」


「うーん、これも本当は社外秘……えーっと、人に言っちゃいけないことなんだけど、特別に教えてあげる。サンタさんは子供たちみんなにプレゼントを配ってる。基本的には、えーっと、だいたいは、子供が望んだものを配っているんだ。君もサンタさんに手紙を書いたでしょう? だから、子供が欲しいと思っているものを、僕たちは用意する。


 あのお金持ちの子は、いろいろなものを知っているから、良いものをプレゼントにくださいってお願いができる。でも、あの恵まれない子供は、世の中にどういうものかあるか知らないから、あまり良いものをお願いできないんだよ」


「そんなのずるくない? だったらあの貧乏な子も、一億円くださいってお願いすれば、一億円もらえるの?」


「それがね、サンタの世界にも制約……じゃあわかんないか。えーっと、制限? リミット? があってね、何でもかんでもあげられるわけじゃないんだ。これも内緒なんだけど特別に教えてあげる。あのお金持ちの子の本当のお願いは『ママとパパと一緒にクリスマスケーキを食べたい』だったんだ。でもそれは無理だってあの子はわかってるから、代わりに『最新のゲーム機をください』って願ったんだよ」


「じゃあ、あの貧乏な子は?」


「あの恵まれない子は、明日教会でやるクリスマスミサに着けていく、きれいなリボンが欲しかった。だから僕たちは、一番きれいなリボンを用意した」


「リボンじゃなくて、洋服をあげたほうがよかったんじゃないの?」


「僕たちサンタは、子供たちが望んだ以上のものは、あげることができないんだよ。だからあのお金持ちの子のところに、ママとパパを連れてきてあげることはできないし、あの恵まれない子に、洋服をあげることもできない」


 サンタさんはさみしそうに言った。


「ふーん」


 そういえば、『プレゼント』と聞いて、ぼくは思い出した。


「サンタさん、ぼくのプレゼントは? 猫のモンスターのぬいぐるみ、持ってきてくれた?」


「人の話聞いてないね、君。ぬいぐるみは、君のママとパパが用意してるよ」


「やっぱりサンタさんなんてウソだったんだ!」


「ちょっと! 目の前にいるでしょ! 僕たちサンタと、君のママパパサンタは別なの」


「じゃあぼく、猫のモンスターのぬいぐるみニつもらえるの?」


「二つ……ちゃっかりしてるな、今の子は。ごほん。ぼくは、猫のモンスターのぬいぐるみは持ってきてないし、君のママとパパが、どんなぬいぐるみを用意してるかは、後でのお楽しみだよ」


「どーゆーこと?」


「誰かが――そうだな、君の周りにいる大人たちが、サンタの手紙に書いたプレゼントを用意しようと考え始めたら、その時点で僕たちはそのプレゼントをあげる権利はその人に譲って、他のものをあげる決まりになってるんだ」


 ぼくは頭の中がはてなマークでいっぱいになった。


「だから、どーゆーこと?」 

 ぼくは、ちょっとむっとして聞いた。


「君のママとパパが、君にぬいぐるみをあげようかなって考えたから、僕たちサンタは、君にぬいぐるみはあげられないの」


「じゃあママとパパがぼくの手紙を読んだから、ぼくは、猫のモンスターのぬいぐるみをもらえないかもしれないってこと? ママとパパ、猫のモンスターのぬいぐるみは高いから、犬のにするとか、小さいのにするとか話してたんだよ。ママとパパのせいでもらえないって、ひどくない?」


「ひどくないよ。子どものことを想って、プレゼントを用意してあげようとする大人ばかりじゃないんだよ、この世は。君のママとパパはいいご両親だってことだよ」


「ふーん。ふつーだと思うけど」


「大人になれば君もわかるよ。さて、君のプレゼントのことだけど。君はサンタの正体を知ってしまったからね。その時がきた子供に僕たちがあげるのは、物じゃなくて加護……ええっと、お守りだよ」


「えー、物がいい」


「サンタのお守りは強力だよ? これから、君の人生でどんな困難があっても、君はぜったいに乗り越えられる」


「ふーん」

 僕は足をぶらぶらさせた。


 サンタさんの言うことはむずかしくて、ぼくにはよくわからない。


 でも、なんかもらえるならいいや、とぼくは思った。


「そろそろ帰ろうか。君のママとパパが、君の部屋に来る前に戻らないとね。サンタが君のもとに来るのは、今年で最後だよ」


 なにそれ、そんなの聞いてない、そう思いながら、ぼくはいつの間にか眠ってしまった。




 ぼくは眩しくて目が覚めた。

 いつも閉じてるカーテンが開きっぱなしで、そこからぼくの顔面に太陽の光が当たってるんだ。


 朝だ。


 まくらのとなりにプレゼントが置いてあった。

 ぼくは飛び起きて、ビリビリに包み紙をやぶった。


 中に入っていたのは――


 ◆◇◆◇


 さて、『ぼく』がもらったのは、猫のモンスターのぬいぐるみだったでしょうか。それとも犬のモンスターのぬいぐるみだったでしょうか。


『ぼく』は、ママとパパになんと言ったでしょうか。


 おうちの人と、考えてみてくださいね。



 メリークリスマス!

裏設定


 サンタの代理人は、普段はリサーチ部門に所属しています。主な業務内容は、子供たちの手紙を読んで、クリスマスプレゼントに欲しがっているものを調査すること、また子供の周辺調査です。

 子供の生活環境を調べる中でやるせない気持ちを抱くことも多く、それでも一人でも多くの子供が幸せになれるように、と心を砕いてプレゼントを選んでいます。


 今年のクリスマスは、「やー、やれやれ、僕のミッションは無事終わったな。家に帰ってホリデーのはっじまりだぁ!」とワクワクしていたところで、『サンタギックリ腰』の報告が。「お前若いんだからサンタやってこい」と先輩たちに蹴り出されて、サンタの代理をすることに。


 ベテランのトナカイたちに揶揄われて、プレゼント配布は大いに遅延。(新人サンタあるある光景です。)

『ぼく』の家に着いた時は、遅れを取り戻そうと焦っていたため、子供が寝ているかの確認を怠るという失態を犯します。『ぼく』には落ち着いたおじさんに見えていますが、内心ドキドキです。


 さて、子供にうっかり見つかる、というハプニングは、ときどき起こります。ゆえに、サンタマニュアルには『子供に見つかったら、可及的速やかにソリに乗せろ』とQ&Aコーナーに記載されています。子供に騒がれて大人に見つかるのが一番ヤバい、だからさっさと子供を連れ出せ。子供は、はしゃいだらカクンと寝てしまうので、こっそり家に戻して夢オチにしろ、ということです。


 マニュアルを真面目に読み込んだサンタの代理人も、このマニュアル通りの行動を起こすべく、半ば無理矢理『ぼく』をソリに乗せます。でもせっかくなら子供に楽しんでもらいたいと思うのが人情。

「サンタさん、すごぉい!」という反応を期待していたのですが、あまり『ぼく』のテンションは上がりません。ゆえに、サンタの意地をかけて、彼は自分の担当地区でない、うんと暑いところや、寒いところまで行きます。トナカイが暑さにバテていたのはそのためです。


 ちなみに、彼はこの後、「なに勝手に走らせとんじゃ、ワレェ!!」とトナカイたちにシバかれます。(トナカイは一応、『ぼく』の前では自重しました)


 代理人は、『ぼく』のストレートかつ残酷な言葉にたじろぎます。普段子供と話すことがないため、どの程度の言葉でどの程度難しいことが理解できるのか、いまいちよくわかっていません。生真面目な彼は、なんとか世界の子供たちの現状を分かって欲しいと、つい企業秘についても話してしまいます。


 この件についても、あとで上司に大目玉を喰らいます(密告者はトナカイ)。


 お人よしで情に脆く、女友達からは「いい人ではあるんだけど……」と言葉を濁されてしまうサンタ代理人、絶賛彼女募集中です。

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― 新着の感想 ―
サンタさんも大変ですね(*´꒳`*) 後書きでいろいろ分かってしまって……。にゃははー。
2025/02/05 19:55 退会済み
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