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第27話 正当防衛でも殺人は殺人

「きゃああああ!?」


「この! 勇者投げ!」


「魔王投げ、である」


「ッ!?」


すぐに襲いかかってくるかと思いきや、後ろ手に鍵を閉め、

それから改めて刃物を握り直し襲いかかってくるなど

意外にもクレバーな不審者に対し、

瞳はすぐ近くにあった机を掴んで軽々とぶん投げる。


魔王との666時間に及ぶ地獄の特訓の成果により、

ただの男子高校生にあるまじき腕力と筋力を得た瞳が

本気でブン投げた机はひとつだけだった筈だが、

すぐに三つ、四つと別の机が顔面目がけて飛んできたため

不審者は一瞬たじろぎ、しかしすぐに屈んでそれらを避け、

狂信的にギラつく瞳で瞳を睨み付けた。


「生徒会長! 逃げて!」


「でも!」


「いいから逃げて!」


「あ、脚が!」


「クソが!」


どうやら腰を抜かしてしまったらしく、その場に蹲ってしまった百日紅世良。

瞳は悪態混じりに机のなくなった椅子を1脚握り締めると、

それを不審者ではなく窓ガラスに向かってぶん投げた。

ガシャーン! と凄まじい音を立ててガラスが割れ、

割れたガラスの破片と椅子が3階から落下する。


「勇者よ。敵はさっさと殺すべきではないか?

少なくともあちらはそなたを殺すつもりだぞ」


「ちょっと待って!

おいお前! すぐに人が来るぞ!」


男は鍵のかかっていない方の扉までダッシュし、そちらの鍵も閉めた。

瞳独りであればその隙にもう片方の扉から鍵を開けて逃げ出すことも

できたかもしれないが、腰を抜かしてしまって

立ち上がることもできない世良を抱えながらではそれも難しい。


瞳を庇うように瞳と不審者の間に立ちはだかる、

不審者の目にはその存在を認識できない魔王バドワイズが

最も効果的で手っ取り早い解決手段を提示してくるものの、

もし今殺してしまえばたとえ正当防衛であったとしても

瞳には『理由はなんであれ人を殺したのは確かな奴』という

一生モノのレッテルが貼られてしまう。


であれば世間は面白おかしく獅子吼瞳という人間や

事件の発端となった百日紅世良を玩具にするだろう。

百日紅家の権力で揉み消せるかもしれないが、

そうだとしてもさすがにそれは避けたかった。


「あなたたち! 何やってるの!?」


「先生! 警察に通報してください! こいつ刃物持ってます!」


「え!? え!?」


「早く! さっさと通報しないと生徒が死にますよ!

非常ベル鳴らして非常ベル!」


「なんなのよお!?」


何事かと駆け付けてきた若い女教師に向かって叫ぶも、

事態が呑み込めないようで鍵のかかった扉の前でオロオロするばかりだ。

緊急事態に慣れている人間などいないため致し方ないとも言えるが、

それでも瞳は苛立ち紛れに彼女を怒鳴り付けた。


「おいお前ら! 何やってるんだ!」


「鍵を開けろ!」


「だーもう! 誰でもいいから早く警察に通報して非常ベルを鳴らせえ!!」


別の教師たちも駆け付けてきて、状況が混沌とし始めたその時である。

突如として校内に非常ベルのけたたましい音が鳴り響いた。


「お嬢様!」


「うわ!? 誰だ君は!?」


「うるさい! 退け!」


「丹波さん! ナイス!」


非常ベルを鳴らしたのは丹波だった。受付で入館手続きをしていた彼は、

突如3階の窓からガラスを割って飛び出してきた椅子が落ちてきて

校庭で体育の授業をやっていたクラスが騒然となったことで

何か緊急事情が起きていることを察し、駆け上がって来たのだ。


「お嬢様!」


「丹波!」


彼は鍵のかかった教室のドアを強引に蹴破って、室内に飛び込んできた。

拳銃、は日本では携行できないため、

特殊警棒を引き抜き世良と瞳を庇うように不審者の前に立ちふさがる。


「勇者よ。もうそろそろ手を下してよいだろうか。

これだけ目撃者がおればそなたが殺したことにはなるまい」


(それはそうかもだけど、こんだけ人がいる中でどうやって!?)


「こう、我が魔剣で首を撥ねるなり、この手で首を掴んで圧し折るなり。

或いは地獄の炎で遺灰も遺らぬほど跡形もなく焼き尽くすという手もあるが。

そうだ、最初からそうすればよかったのだ」


(バドさんなんか怒ってるー!?

突然の首チョンパとか人体発火とか怪奇現象になっちゃうから!

もうちょっと自然な方法で、

誰も悪くない事故死に見せかけたりできない!?)


「当然であろう。我が勇者を害する者即ち我が敵である。

敵は容赦なく、その一切を苛烈に滅ぼし尽くすが魔王の流儀。

とはいえそなたがそれを望むのであれば、善処するとしよう」


「……邪魔、するなよ」


3階からガラスが割れて椅子が落ちてくるわ、非常ベルは鳴り響くわで

校舎内が大騒ぎになりつつあった矢先、ようやく不審者が口を開いた。

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