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第21話 脱いだら凄い系主人公

乙女ゲーの、或いは少女漫画の主人公といえば

不良やナンパ男に絡まれるものと相場が決まっている。

が、令和にもなって町中で女子中高生をナンパしようものなら

即座に通報されるかSNSで拡散されるかして笑い者である。


「おはよう獅子吼くん!」


「おはよう灰座さん」


朝。学校に向かう途中で瞳は灰座杏に声をかけられた。

高校へは駅から徒歩数分圏内であるため、

スクールバスなどの類いは運行されていないし

そもそも次のバス停よりも学校の方が近い。


「昨日は楽しめた?」


「うん! みんなとも仲良くなれたし!」


特に中身も他愛もない世間話に興じていると、

後ろからおーい! と声をかけられた。

巨漢デブと高身長細身のイケメンコンビ、旭川と軽井沢だ。


「おはよーさん! 灰座さんもおはよー!」


「おはよう! えーと……」


「同じクラスの旭川です! こっちのイケメンが軽井沢!

どっちも彼女募集中だからよかったらよろしく!」


「俺まで巻き込むな」


「えーでもこないだ振られたって言ってたじゃん!」


「だからだよ。しばらく新しい彼女は要らない」


「あはは! 最初はお友達から始めよっか!」


バカ男子3人の中に女子が1名。

とはいえ周囲の人間からすればどうでもいいことである。


「無自覚に勇士候補を集めるとは。

やはり世界は違えども彼女は聖女の器なのであろうか」


(いやあそれは……どうなんだろうね?

さすがにそんなことはないと思うけど)


あちらの世界から帰還する際に勇者としての権能、

即ち常人離れした運動能力や光を操る魔法などは

全てあちらの世界に返却することとなったため、

今の彼に勇者としての権能は一切残っていない。


尤も魔王バドワイズの666時間にも及ぶ

地獄の短期集中猛特訓の果てに鍛え上げられた肉体や

その後の実際に人を殺してしまった経験などはしっかりと

記憶されているため、一概に常人とも言い難いが。


「なんか、不思議。

こうやって話してると、旭川くんや軽井沢くんとは

なんだかずっと昔からの友達だったみたいな気がするの」


「俺は??」


「はっはっは! 悪いな瞳ちゃん!

どうやら俺の方がタイプらしいぜ!」


「なーに言ってんだお友達止まり宣言」


ガシっと旭川に肩に腕を回され、マジかよと頬を膨らませる瞳。

無論、双方本気で言っているわけではないが、

慌てた灰座がブンブンと顔の前で両手を振る。


「え!? 違うよ! そういうんじゃなくって!」


「バカどもの言うことをイチイチ真に受けなくていいぞ、転校生

……おい旭川。どうかしたのか?」


「んー? いや、なーんか瞳ちゃんの体に違和感が」


「勝手に触るんじゃないこのセクハラ野郎!」


「うお!?」


てい! と旭川の脳天に勇者チョップが炸裂し、

彼はごめんごめんと諸手を上げて離れる。


「なーに瞳ちゃん、こっそり筋トレでもしてるわけ?」


「あー、まあ、夏休みに向けて?」


「マジかよ! 俺らも負けてらんねーな!」


「だから、俺を巻き込むなっての」


冷製に考えてみると、ついこの間まで中肉中背だった同級生が

いきなり戦場帰りの引き締まった肉体になっていたら

違和感を覚えられても無理もないかもしれない、と

瞳はアメコミヒーローも真っ青の細マッチョボディに想いを馳せる。

体育の授業で着替える際には注意せねば、とも思うが

注意したところでどうにもならないのなら開き直るしかあるまい。


「おはようございま……あ」


「おはよーございまーす」


「おはよー生徒会長さん!」


「おはようございまーす!」


「おはよう」


そんな風に朝から賑やかに登校していると、

正門前で生徒会のメンバーが挨拶運動のタスキをかけて

一部の教師たちと共に業務に励んでいるところに遭遇した。


「……」


「……あの、俺に何か言いたいことでも?」


「いえ、何も。ごめんなさい、不躾でしたね」


「別に構いませんけど」


やっぱりなんかあんのかあいつ、と瞳は

百日紅生徒会長の視線を受けながら校舎内に入っていく。


「問い詰めてみるか?」


(うーん、それもアリかもだけど一旦保留で。

まさかセルベセリア・コロナか? なんてダイレクトに訊けないし)


あちらの世界からこちらの世界に持ち帰ることができたのは、

魔王の役目を終えた魔王バドワイズと瞳の経験、

そしてあちらの世界で鍛えた体だけの筈だが。


(もしかしてまだ終わってない何かがあるのか?

いや、さすがにそれは考え過ぎか?)


どれだけ考えても、答えは出ないまま。

百日紅生徒会長について考える瞳の横顔を、

灰座杏が見ていることにも、彼は気付かないまま。

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