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フィジカル世界

挿絵(By みてみん)

私と寧々の部屋、このエリアは24時間青空だ。部屋も真っ白で明るい。そう設定している。

でも本来の時間的には夜だ。睡眠をとるため布団を頭まですっぽりかぶって寝るようにしている。

隣に寧々の温かみを感じながらうとうとする。


そのとき警告音がした。フィジカルボディのメンテが必要という警告音だった。詳しい状況がわからないので一度フィジカル世界に行かないと。

気がついた寧々もこっちを見ている。

「お姉ちゃん、あっちに行く?」

「朝までには戻れると思うけど…寧々も一緒にいく?寧々のフィジカルボディも一緒にメンテしよか?」

「うん」

「じゃああっちに行きましょ」

頭の中でメニューウインドウを表示する。そしてログアウトボタンを押した。すると眼の前が暗くなった。


感覚がアナログになったと感じた。フィジカル世界に戻ってきたのだ。

私はフィジカル世界があまり好きでない。なぜなら暗くて無機質だからだ。


目を開けてみた。私はベッドに寝ていた。ベッドの照明が周囲を照らすので部屋の様子がわかる。相変わらず私には恐ろしく感じる世界だ。

ベッドの明かりで周りを薄暗く照らしている。

右腕を持ち上げてみた。問題ない。ちょっと筋肉が落ちたかな。

左腕を持ち上げてみる。持ち上がらない。ギョッとした。左腕が機能しないのかと思い、目をやると、そこには寧々がいて左腕にしがみついていた。それを見て安心して笑ってしまった。

寧々も目をこすっている。大丈夫そう。


いや大丈夫じゃない。お腹に違和感を感じたのだった。

あ、あれだ…と気がつく。メンテに来てよかった。


寧々を起こして、先におトイレに行くよう促した。

私達はおトイレや食事のためフィジカル世界で1日ごとやってくる。これをメンテナンスと言っている。

このメンテがめんどくさい場合、血管に直接栄養を入れる方法もある。これだとおトイレもあまりいかなくていいのだが…あまりにもフィジカルボディが可愛そうで私達はこうやってメンテしにくる。


自分もベッドから身を起こした。身体が重い。重力を感じる。はだしの両足を床におろした。ネットワーク世界なら軽いのにな。

寧々がよたよたと歩いておトイレに向かった。


そう、普段の私達はコンピュータが張り巡らせたネットワークの世界に住んでいる。ネットランナーという存在だ。でもフィジカルボディはネットワークに持ち込めないという制約があり、このフィジカル世界と呼ばれるココに置いてくることになっている。


私のベッドの周りにはサヨ、凛、リッカ、ルカのベットが頭を中心に円を描くよう配置していた。

皆同じ格好、薄いワンピースの肌着のようなものを付けている。常時センサーで生命活動を読み取らせるための格好だった。ネットスーツとかネットワーク着とか呼んでいる。ほぼ下着でかなりセクシー!


フィジカルボディは制約が多くて、動かすのが大変。右足を意識して前へ出し、左足を前へ出す。そうやって歩きながら皆の顔を見て回った。顔色はどうだろうか、熱はないかなとか額にてを当てた。

みな仰向けで目を閉じているが、実際にはネットワークにつながっていて活発に生活しているのだ。

私達はリアルと言えばネットワーク世界を指す。フィジカル世界はなんていうんだろう。大事なのは頭で理解している。たとえばこのボディになにかあって死んでしまったらネットワーク世界の私達も死んでしまうので、フィジカル世界が本体なんだろうな~というのはなんとなく理解している…という程度だ。フィジカル世界は子供を作る場合でも必要で、この世界がないと私たちは滅んでしまう。


でも、いつも生活しているネットワーク世界はお互い笑い合って、励まし合って、切磋琢磨して生きている。

それを10うん年繰り返している。そういう意味で私達のリアルなのだ。


おトイレを流す音が聞こえた。

私もそちらに向かった。

「あ、お姉ちゃん、血がたれてるよ…、早くおトイレ使って」

「え、あ、ヤバ」内腿を一筋流れていた。お腹の違和感の原因だ。おトイレへ急いで駆け込んだ。

用を足した。その扉の向こうから寧々が言う。


「床拭いたからもう大丈夫。お風呂入ろうよ。温まりたい!」

「あ、うん。わかったー」といっておトイレを流し扉を開けた。タオルを持った寧々がいた。もう裸になっていた。めっちゃ楽しみみたい。

「お姉ちゃん、ちょっと後ろ向いて」

「ほぃ。もぉ~」


後ろに向かされたらそのまま背中のファスナーを下げられた。

「お姉ちゃん背中キレイ」といいながら背骨の上をなぞられた。指先が冷たくてきもちいい。

両肩に手を添えられた。そして寧々の胸の膨らみが背中を通して感じた。温かい頬が首筋に当てたれた。このままちょっと時間が止まった。


「ほうら、みんながみてるよ!」と言って他4名のベッドを指さした。横たわっているのでほんとに見えるわけではないが。

「お風呂はいろう!」といいながら離れると同時に服を脱がされた。

汚れたパンツと着ていた服を洗濯かごへ放り込み私と妹は一緒に浴槽へ向かった。


この部屋は空調がしっかり効いているのだが、お風呂に入ると身体が暖まるのでお風呂は好き。お風呂は24時間つけっぱなしなのでいつ来てもすぐに入れる。

6人もいる部屋なので数時間ごと誰かがやってくるのだ。

お風呂はガラス張りで観賞魚の水槽が置いてある。水色のお腹がも持ったのや赤い尻尾を持ったお魚が泳いでいる。浴槽内に薄明かりのライトが埋め込んでいてほんのり周りを照らしていた。

なんでこんなに照明が乏しいかというと、あまり人が来ないからというのと、単に省エネのためだ。お風呂はつけっぱなしの方が効率がいいみたい。

このお魚も洗濯物も誰かが世話してくれている。もしくはそんなこともシステムが自動でお世話して?いやそんなことはなか。たぶん誰かがお世話しているのだ。


シャワーで二人の足を洗い合ってから浴槽に浸かった!

「あったか~い!」二人の声が響いて反響した。皮膚が暖かさでシビレた。鳥肌のようにぷつぷつになっていた。生き返るぅ~!

と言いながら妹に覆いかぶさって両腕をせなかに回した。

「お姉ちゃん、めっちゃ軽ーい!」軽いのは水のせい。確かに軽いし温かいしでお風呂の中は天国のようだった。

覆いかぶさったついでに寧々の顔を指でなぞった。目の下に親指を這わせてみた。這わせる指についてくるように下のまぶたが潤んでキラキラした。何度か同じ動作を繰り返すたび寧々の筋肉が緩むのが分かった。

今度はその指をこめかみまで持っていきちょっとだけ力をいれてみた。寧々の口がちょっと開いて吐息が漏れた。これもやられてみると気持ちいい。

そのまま耳の後ろまで指を下ろした。耳の後ろも指圧してみる。寧々の目を見てみた。口元が緩んで、意地悪と言ってきたが聞こえないふりをした。私も多分ニヤニヤして我ながらいやらしい顔つきだったんじゃないかな。

寧々はもう力が入っていない、これをやると気持ち良すぎて力が抜けてしまう。

さらに下がって今度は左右の顎の付け根ところを指圧してみる。位置を間違えるとおぇーっとなるが微妙な位置取りを間違わなければ気持ちいいのだ。

そしてさっきのお返しということでイタズラのつもりで首筋の斜めに走っている筋肉に舌を這わせてみた。同時に温かいお湯をすくって肩に掛けてみる。

やめてっと言われると思ったが、意外に妹はふうぅぅ~と前後不覚になっていた。吐息を漏らすプルプル揺れる唇が可愛らしかった。

もし妹をたぶらかせる罪があるとしたら、私はもう捕まっているかもしれない。


突如ガタガタッ!と奥から音が聞こえた。そういえば奥には物置がある。そこからの音だ。

妹も私もびくっとした。

「ここにいて」指を口に立てしぃ~とジェスチャーした。タオルで髪を包み、大きいタオルで身体をくるんで音の方へ向かった。

ちょっと怖かった。妹の方を見たら、こちらのほうへちょこっと顔を出しているのが見えた。

人がいたらどうなっちゃうんだろう。こんな経験したこと無い。

そーっと歩いて行く。妹がいなかったら多分前に足は出なかったと思う。妹を守ろうとしているんだと思う。


またゴトゴトと聞こえた。間違いない奥の物置だ。

物置の扉が開いている。怖すぎる!神経が前方へ集中する。人だったらもうパンチするしか無い!

えいっと暗い倉庫に顔を入れてみた。ゴツンといって額に衝撃があった!

「あいたた!」

女の子の声だった。

「え?」私はぜんぜん全く理解できなかった。見たことがない女の子がそこに居た。尻もちをついていた。

「ああ、お目覚めですか!煩くしてすみませんです!ちょっと掃除をしていまして!」彼女はそういった。

「自分、このおエリアのルームキーパー担当でして!」女の子は白い割烹着を着ていた。

「このお部屋も担当なんですよ。最近担当者が交代しましてね!」

「初めてお目にかかります!今後もよろしくデス!」

え?え?この子が私のお部屋担当ということは…先程の汚れたパンツもこの子が洗うの!?いや、それはさせられない!

私は寧々にこっちに来るよう促した。

「私は由紀。この子は妹の寧々。私達のフィジカルボディがお世話になってます…」と挨拶した。

「そんなことおっしゃらないでください。自分は仕事でやってるだけなので。自分は芽依メイです!」年の頃は私達と同じだ。

そのことに不思議さを抱いた。私たちはネットワークの住人なわけだし、こちらの世界をほとんど知らない。

一方変わって芽依さんの世界はネットワークを知らないわけでは無いと思うけれど、フィジカル世界の住人だった。

フィジカル世界の同じ頃の女の子という所がときめいてしまい。手を握って瞳を覗きこんでしまった。私達と変わらないなんて。

そしてそんな人物にお世話させてるなんて。

自分はもしかしてこの芽依さんの上に胡座をかいて生きているの…?

知識としてお世話係が居ることは知っていたが、いままで担当の方には会ったこと無いし。住む世界が違いすぎてピンと来なかったのだ。


「お茶も出しませんですみません」と言いながらお茶を出した。と言ってもお茶はこの部屋にはなかったでネットランナー用の補給水をコップに注いだ。

本物のお茶はおトイレが近くなるので飲まないという理由でお茶は常備していなかった。


服も洗濯したきれいなものを用意してもらい、それを着た。

気になるパンツとともに脱いだ洗濯物は持っていかれた。自分で洗いたかったが。自分も同じ現象ありますよ、気にしないで任せてくださいと言われたときには恥ずかしさのあまり妹の後ろに隠れてしまった…


「お気を使っていただく必要はございません。お茶もこのお部屋にはございませんし。ああ、この部屋のことは私もよく知っています。お手入れしているの自分ですし」と言って話し始めた。私の知らないこの世界のことを。


「自分も遠いむかーしにネットワークチップのインプラント手術を受けたんですよ。ですが自分はチップを拒否する体質でして、手術に失敗したのです。なのでお嬢様たちの言うフィジカル世界の住人なのです」

そうだ、私達は幼少の頃チップを埋め込んだ。記憶にもないくらい昔のことだった。このチップは脳の隅々に端子を伸ばすことで、人間をネットワークにつなげた。

芽依さんの言う事ではそれを拒絶する体質の人がいるということだ。そんな人はネットワークの世界には存在しないし考えたこともなかった。


「失敗したあと、死にかけたんです。生死の境目を彷徨ったらしいんですけどね!らしいと言うのは記憶にないくらい昔の出来事でして、おぼえてないんですよ」

私は心が締め付けられた。何この感覚!身体が震える。私と芽依さんに違いは無く同じような人間のはずだ。生死の境目だなんて…!


あっけらかんとした芽依さんから、私には持ち合わせない、どんな災難でも跳ね除ける強さを感じた。

また泣いてしまった。私にはどうにもできない壮大な話だ。涙が止まらない。芽依さんにボディを預けて、ネットワークの世界に住んでいるようなものだ。芽依さんがいないと生きていけないようなものだ。

「ごめんなさい…」と言葉がこぼれた。

「いや、お嬢さんのお世話するからお給料もらえてるので、ごめんなさいというのとは違うんです」

だめだ、涙が止まらない。「そういう理屈じゃないの」もう自分の感情を言葉にできなかった。


「お給料もらうことで食べてもいけますし、夢もあるんです。聞いても良いですか?」と彼女。「学校へ行きたいんです。そのためにこうやってアルバイトをしてるんですよ」

「一つきかせて」

「なんでしょうか」

「私達の世界に興味ありますか?」

もちろん、と満面の笑みで答えた。嬉しかった。




翌朝、授業の前の優佳ちゃん先生の例のだいしゅき挨拶の洗礼のあと、相談を持ちかけてみた。

「フィジカル世界に知り合いが出来たんですが、一つ聞いてもらっていいですか!?先生もそうなんですけど、みんなにも聞いてもらいたくて」

みんなの注目を集めた。

私はドキドキしながら芽依さんのことを話した。私の言うことはどこまで通じるんだろうか。


「私達の身近にそんな子がいるなんて」と皆口々に言った。良かった。みんな好意的に受け止めてくれる。

「会ってみるのも悪くない。お互い知ることができれば、こっちの世界とあっちの世界がうまく行きそうだ」私は首を縦に振った。


そこで思い切って聞いてみた。「この学校に呼べないかな?」

「私達のお世話してくれてるんですよ。しかも私達と何も変わらない女の子」私は頑張って皆に聞かせた。

「悪い提案じゃないわ。私も会ってみたいし」サヨが言う。

「クラスに一人増え6人が7人になろうが先生は大丈夫よ」と優佳ちゃん先生。

「問題はここにどうやって呼ぶかだと思うんです」と私は言った。

「ゴーグル使えば?VRゴーグル」とリッカ。

「緊急用に使えるのがお部屋にあったはず。フィジカル世界からいつでもこちらに介入できるように常備しているわ」サヨが続いた。

みんなに聞いて良かった。どうしたらいいか困っていたことがなんとかなりそう、に感じるようになっていた。

「でもVRゴーグルでは私達と時間がうまく合わないという問題があるわよ」

優佳ちゃん先生が言った。

「ネットワーク世界ではフィジカル的な動きを伴う必要がないし、電気の速度で動けるからフィジカル世界より10倍ほど時間の流れが速いの。それが問題」

瑠夏が補足してくれた。


「フィジカルボディをメンテしにいくとき、1時間居たつもりでも戻ると半日経ってるでしょ。あれはこの時間の流れの違いからくるものだわ」

ああ、なるほど。瑠夏は頭がいいなあ。

「こちらの世界でみんなで笑い合って一週間みっちり生活生活していても、フィジカル世界では1日も経っていないということ?」

なんだかムヅカシイ話になりかけたので私が整理してみた。

「そう。VRゴーグル装着する人ってフィジカル世界の住民でしょう?そうすると、きっと私達が目一杯素早く動いてるように見えるはず。VRはこちらの世界を見ることは出来ても、思考速度をこちらには合わせてくれないから…」

リッカが答えてくれた。

「じゃあ、寧々達の会話は彼女にとっては早口すぎて何言ってるか伝わらないのかな?」

「その子の言葉はボク達にはおそすぎるって感じになるのよ」


「彼女を一回ここに呼んでみてくれないか?VRゴーグルで」試したいことがあるんだと、瑠夏が言う。

「え…!マジック!」

「まぁそう言われると辛いんだけれど、試すことぐらいできるでしょう?一回試させてくれ」

そこまで自信たっぷり言うものだから、皆否定はしなかった。


「彼女、芽依さんだったけ。彼女をサポートしに、由紀あちらにいってもらえるか」

私はハイと言った。

「あ、寧々もいく!」

「凛も行こうかな!」

「3人も行ってどうするんだ!お凛は私のサポートをお願い。コンピュータ得意だろ?その力が必要なんだ」




部屋の言われた箇所に4セットのVRゴーグルがあった。

私と寧々、芽依さんはVRゴーグルを物珍しそうに色んな角度から見ていた。初めて見たし初めて触った。


芽依さんが被ってみる。最初の電源ONなのでユーザー登録、アバター作成など行った。

アバターは細かい設定ができ、リアルにもアニメ調にでもできるのだがイジっていると1週間とかかかりそうなので、出来合いの中から可愛らしいアニメ調の金魚のアバターにしてみた。

「なんか、ドキドキしますね!自分、初初、初体験!であります!コーフンしてきました!優しく導いてくださいね…イタイのはイヤですから!」

「ぷ!私も初体験なんだよ!アバターどれにしようかなあ!」私はアニメ調のコウモリにしてみた。

「じゃ寧々は、モンブランにする!」すでに生き物ではない!

「お姉ちゃんが食べちゃうゾ!ハグハグハグッ」寧々の頭にパクパクしてみせた。

「おしりの方から優しく舐めてくれるんだったらイイヨ…!」

妹も言うようになったものだ…ちょっと感激。

「おふたりとも楽しそうですね!自分もケーキには目がないので混ぜてください!」

フッフッフーと私は脅かすように笑った。

「自分から食べられに来るとは…!見上げた金魚じゃのう!」オオカミのように爪を立ててみせた。

「え!自分も食べられる側ですか!由紀ちゃんさんは食べまくりのオオカミさんですね!」

3人で笑った。

「じゃあ、私と寧々ちゃんは芽依ちゃんのホームへ移動してみよう」

3人のアバターが芽依ちゃんのホームに集まることに成功!

右手でウインドウを表示して学校のワールドを探した。あったあった。生体認証で認証は一瞬で終わった。

「では手をつないで~直接学校へとびますよ~!」

「ひゃああ!」

「わくわく!」


一瞬暗くなってから、目を開けると学校だった。おお、やった。成功だ!みんないる!私たち入れて合計8名!

そして早速ながら、先程まで話題に上がっている時間の流れを体感したのだった。


みんな動作がめっちゃ速い。

喋ってる内容も聞こえるけど、速すぎて何を言っているかもよくわからない!


こういうときのため、文字通信しようと予め決めていたので、さっそく文字でアクセスしてみた。みんなタブレット端末を取り出した。


由紀【金魚が芽依さん!コウモリが由紀!モンブランが寧々!アクセス成功!】

優佳【あら人間じゃないのね?】

小夜子【あれただのアバターでしょ】

瑠夏【任せて、アバターは本人に似せられる。まずはそれからいじることにしよう】

え!どうやって!?本人に会ったこともないのに?またルカマジック見れるのかと思うとわくわくしてくる。

凛も脇で手伝ってるのが見えた。シャカシャカ動いてる。


瑠夏が両手をアバターに添えて、一瞬後、リアル芽依ちゃんになった!

おおー!すげー!、向こうも沸いている。ガッツポーズだ!


小夜子【ひぇ~】

六花【うは!】

優佳【それはダメ!】

凛【!!】

瑠夏【そこまで考えが回らなかった。すまない】


そこには確かに芽依ちゃんがいたのだけれど、生まれたままの姿の芽依ちゃんだったのだ!向こうも慌てている!

凛が手元を操作して制服を取り出した。ナイス凛!


瑠夏【ここからが本番。芽依さんの脳波に合わせるまでちょっと時間をくれ】

と言って一時。瑠夏は右の手のひらを芽依ちゃんの額に強く押し込んだ。それも数回。

瑠夏【うまく行ったと思う。ここからは芽依と音声会話させてほしい。由紀と寧々は戻ってきて】


私たちはVR端末の電源を切り元の位置へ戻した。私は自分のベッドに潜った。

寧々も自分のベッドに入った。でも、次戻ってきた時には不思議と私のベッドに潜り込んでいるんだろうなと思った。

どうせ後でこっちに来るのなら…

私は一旦自分のベッドから降りて寧々のベッドまで歩いた。

「お姉ちゃんも入れて」

私は寧々の横に入り、頬を撫で頭を抱いた。



ネットワーク世界の学校へ急いで戻った。時すでに夕方、日が傾いてオレンジ色だった。みんな教室に集まっていた。授業もせずここで丸一日がかりの作業だったのだ。

「芽依ちゃんどう?話せる?」

「あーこれはこれは由紀ちゃんさんに寧々ちゃんさん。おかえりなさい!みな様とお話していたところでした!先程までありがとうございます!」

「チップ埋め込み手術に失敗したことは聞かせてもらったわ。あと、学校があこがれだってことも」優佳ちゃん先生が目に涙を浮かべている。鼻声だ。

「芽依ちゃん、制服姿似合ってるよ!」白いブラウスが彼女を引き立たせ光っているように見えた。

「生体認証の登録も完了しています。もうすでにこの学校と街は自由に出入りできるようになりました」

「お凛助かったよ」


「とっても嬉しいです!こんなに素敵な世界がネットワークにあるなんて思いもよりませんでした!知らない世界を教えてくれてありがとうございます。早速明日から学校お邪魔させてもらいますね!なんてお礼してよいかわかりません。みなさんとお近づきになれて光栄であります!おおっとちょっと長居してしまいました。このエリアの他のお部屋もお掃除しないといけないんですよ。また明日きます!」

と言いのこして芽依ちゃんは去っていった。


「芽依ちゃん可愛い子じゃないの!」サヨが言う。「もうすっかり仲良しだ」

みんなウンウンうなずいた。

「6人姉妹が7姉妹になったかな」ぼそっとリッカが言う。

「え!先生も姉妹に入れて!」

「さぁ~て、ゆかちんは姉妹かなー?」サヨが意地悪を言った。

「優佳先生はお母さん!」といって寧々は先生の手をとった。

まだ、カレシ募集中でお母さんにはまだ早いわよ~と言いながら寧々の手を握り返している。まんざらじゃなさそうなのは見て分かった。

大所帯な家族だ!


でも、どうやって時間の流れを直したんだろう。芽依ちゃんは目と耳で普通にVRゴーグル装着しているだけなのに。


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